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それは違うよ。伊沢千夏は、伊沢千夏タイプの踊り子だよ。
私は心の中で、ひとりツッコミを入れる。
それは、浅草の中休憩映像でのこと。
いなつさんのインタビュー映像。彼女はマスクをしていても、その溢れ出る美しさを隠すことができていない。
改めて「なんて綺麗な人なんだろう」と感じる。
インタビュー中に、こんな話があった。
憧れの踊り子さんは?という話になり、彼女は3人の踊り子の名前を出す。
(3人目の踊り子の写真チョイスにちょっと笑う)
その話を受けて「あなたは〇〇さんタイプの踊り子ですね」的なことをインタビュアーが言う。
そしてそれにいなつさんは喜ぶ。
その時に思ったのが、最初に記した言葉だ。
様々な基準で、踊り子をタイプ別に分けることは可能だろう。
だけど、私は、伊沢千夏は「タイプ」などという枠組みには収まらない踊り子だと思っている。
その圧倒的美しさと、元から備えていると思われる、華やかさ。
それだけでも十分なのに、彼女はしっかりと、踊り子を全うする。
私は彼女の姿のほとんどを、浅草のトリとして観てきた。
私が観劇初期の頃、多かったのは、前半、もしくは後半に小澤マリアがいる香盤だ。
マリアさんもまた、際立った美貌、そして個性のある踊り子なので、彼女が前半に演じた香盤を観ると
「これをいなつさんがやるのは、合わないんじゃないかなー」などと思うことが多々あった。
だけど伊沢千夏は、何の問題もなく、その香盤をこなすのだった。
きりっと力強く、ぎゅっと心を掴むようなマリアさんに対して、いなつさんはふわっとやわらかく、
でも確実に心を掴む。
そこには「無理しているな」とか「頑張っているな」とか、そういうものは感じられない。
魚が水の中で、優美に泳ぎ続けるかのように、ごく自然に彼女は踊る。
踊りながら、優しく口角を上げ、皆に微笑みかける。
客席全体をゆっくりと見渡すような、慈悲溢れるようにも感じる、流し目。
じわじわと、小さい波が押し寄せるかのように決めてゆくポーズ。
浅草というレビュー形式ではありながら、しっかりと「いなつワールド」へ引き込んでゆく。
それはきっと、元から持っている美貌と華があるからこそ、できるのだろう。
だけどそれだけではない。
きっと彼女は、見えないところで、たくさんの努力をしている。
そんな思いを強く感じたのは、ある公演を観た時だ。
「愛あればこそ 2nd」
1stは、灘ジュン引退公演だった。
ジュンさんも大好きな踊り子だったので、私は正直、この公演は振りうつしをしないで欲しかった。
永遠に、灘ジュンだけのものであって欲しかったのだ。
だけど、演目は変わることなく、公演は行われた。
―引退公演の演目を、そのまま受けるのは、どんな気持ちなのだろう?
私なんかには想像もつかない。
いなつさんは、2ndの公演を引き継ぎ、美しく、本当に美しく舞った。
「愛あればこそ」は、ジュンさんのための公演、その思いは消えないが、いなつさんは、めちゃめちゃに
プレッシャーのかかるであろう公演を、何の問題もないかのごとく、演じた。
景によっては、いなつスマイルを封印し、力強い視線を場内へ向けた。
伊沢千夏という踊り子の存在を、しっかりと印象づけた。
―偶然なのかは分からないが「愛あればこそ」も今公演「LAST SCENE」も、バラが印象的だった。
美しいバラにはトゲがあるという。
だけど、伊沢千夏というバラには、トゲがないような気がする。
どこに触れてもすべすべと柔らかく、誰しもをあたたかく包み込む。
その「いなつスマイル」で。
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