青の海 月の光

楽しそうな事があったら、とりあえず一人でも出かけちゃう。

Debut

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sequel to Debut.3

マネージャーは、劇場の入口近くに車を置いて待っていてくれた。
わざわざ助手席のドアを開けて、私が車に乗るのをサポートしてくれる。

「多田さん、ごめんなさい。姐さん達と話しちゃって」
「大丈夫大丈夫。今日はどうだった?」
「ようやく、亜仁花姐さんと同じ演出をすることができたの。お客さんの反応が全然違って、楽しかったよ」
「そう、それなら良かった」

マネージャーは「ちょっと溶けちゃったけど」と言って、スタバの紙袋を私に渡した。
飲んでみたいと思っていた、新作のドリンクだ。

「多田さん、私ね」
ドリンクを飲みながら私は言う。
「なに?」
「ストリップ、もっとやってみたいと思って。他の姐さん達がのっているような、ポラ館とかも行ってみたい」
マネージャーは、意外そうな顔をしてこちらを見る。

「だめ?」
「だめじゃないよ。実はすでにオファーも来てたんだけど、公演中は言わない方がいいかと思ってた」
「えー、言って下さいよ。姐さん達にも話できるから」
「分かった。明日、スケジュール調整するよ」
「お願いしまーす」

「・・・でも、初めてだね。轟さんが、自分で仕事をやりたいって言うなんて」
「そうでしたか?」

そう言いながらも、確かにマネージャーに任せきりで、嫌なものだけ断っていたと気づいた。

「やりたい仕事があるのは、いい事だよ。俺も頑張って轟さんをフォローするから」
「・・・ありがとうございます」

なんだか照れくさくなってきた。顔も赤くなっているかもしれない。
それを誤魔化すために、私は再びドリンクに口をつける。

「これ、おいしいですね」
「そう、良かった。女の子は好きだよね。オレは甘すぎてダメだけど」
「うん、姐さん達も好きな人多いですよ」

そうだ。明日、姐さん達にも買っていこう。お客さんからプリペイドカードをプレゼントしてもらっていたんだ。
お客さんも、姐さん達と飲むのに使うのなら、きっと喜んでくれるだろう。

うん、そうしよう―

sequel to Debut.2

「姐さん達もしかして、5頭で、BellWaveやるんですか?」
「うん、新作作ってるよ」
「やっぱり!ふたりが一緒の香盤だったから、チームやるんだろうなと思ったんですよ!」

「4結は、私がQにのるからさ。オフの亜仁花ちゃんを九州まで呼ぶわけにもいかないし。だから、
今のうちに打ち合わせ」
「いいなー、私もチームやってみたいなー」
姐さん達の会話に、思わず聞き耳をたててしまう。
ストリップ独特の用語も今はだいたい分かる。

「じゃあ、私帰ります。頑張ってください」
「あ、私も出る。一緒に帰ろ」
「お疲れさまでしたー」

姐さん達が帰ってゆく。私も帰る支度を済ませていたが、なんとなく帰れずにいた。
マネージャーも、もう近くまで迎えに来てくれているはずだ。
でも、亜仁花姐さんとのえ姐さん、二人のことが気になって動けない。

亜仁花姐さんとのえ姐さんは、雑談をしながらも、チームの事について話をすすめている。
「衣装もらって来たけど、一回合わせようか」
「そうだね、合わせてみよう」
「体型そんな変わらないから、大丈夫だとは思うけど」
そう言ってのえ姐さんは、バッグを開け、衣装を出した。

「わー、ボンドガールだー」
赤い衣装を受け取った亜仁花姐さんは、さっそく着替えはじめた。
そして、のえ姐さんはもうひとつの衣装を出す。

「あっ・・・!」
その衣装を見て、思わず声が出た。口を押さえ、衣装を指さす。
「どうしたの、まあさちゃん?」
亜仁花姐さんが聞く。

「その衣装・・・私・・・」
亜仁花姐さんの赤のドレス。そしてのえ姐さんが着ようとしている黒のスーツにトレンチコート。
「知ってます・・・私、観てました・・・」

思い出した。のえ姐さんは、私が初めてストリップを観た時に出演していた人だ。
ボンドガール。そう、確かにその曲が流れていた。
「そうなんだ、観てくれたんだ」
のえ姐さんは笑う。

そうだった、私はこの人から、目が離せなかった。
「すごい、どきどきして、きれいだと思いました・・・」
「ありがとう。なんだか照れるな」

「私も映像で観たけど、のえ姐さんのボンドガール、本当きれいだったもの。やっぱり、のえ姐さんが
こっち着た方がいいんじゃない?」
ボンドガールの衣装を着た亜仁花姐さんが言う。その姿も、当然ながらとてもきれいだと思う。

「だーめ。今回は私が、こっちのかっこいい衣装着たいんだもん」
「あ、いいこと思いついた!今回はこのままでも、ゆくゆくは交代しない?私、振り付け両方覚えるから」
「それいい!お客さんも喜びそう!」

二人の会話はとても楽しそうだ。まるで一緒に、遊びの計画をたているかのようだ。
だけど、自分たちのことだけでなく、お客さんのことも考えている。

♪〜
携帯が鳴った。マネージャーからだ。私がなかなか出て来ないから、かけてきたのだろう。
二人の話をまだ聞いていたかった。だけど、タイムリミットだ。

「じゃあ、お先に失礼します。チーム楽しみにしてます!」
「ありがとう、お疲れさまー」
「まあさちゃん、また明日ね」

二人のチームショーを観に行こう。そう決めると、なんだかとても楽しくなってきた。

sequel to Debut.1

ストリップデビューして、10日以上が過ぎた。
ケガもなく、大きな失敗もなく、なんとか毎日毎日をこなしている。

今日から、亜仁花姐さんのレーザーライトを使った演出を、私も挑戦しはじめた。
ライトを取り出し、光を放った瞬間に、場内の空気が明らかに変わったのを感じた。
「おぉー」の声や、いつもより大きな拍手、そして手拍子。
そんな中でポーズを切るのは、すごく楽しかったし、気持ち良かった。

―あぁ、亜仁花姐さんもこんな気持ちだったんだな。

その日の公演を終え、楽屋で帰り支度をしていると、ドアがノックされた。
「おはようございまーす、お疲れさまです」
その挨拶のしかた、少し細身の身体、そしてその佇まい。

「のえ姐さん、お疲れさまです」
「あら、のえちゃん。久しぶりー」
楽屋にいた姐さん達が、声をかける。先輩を「姐さん」と呼ぶ、傍からみたらちょっと不思議にうつる光景。
やっぱり踊り子だった。

「のえ姐さん、オフなのにごめんね」
そう声をかけたのは、亜仁花姐さんだ。
「大丈夫、レッスンだったから。あ、そうそう、今日先生に正式にオッケーもらえたよ」
「わぁ、良かった!あの衣装着てみたかったの」

のえ姐さんと呼ばれた姐さんと、亜仁花姐さんは、とても親しげに話をしている。
亜仁花姐さん普段から、誰にでも親しく話してはいるが、特に打ち解けているように感じる。

「あ、紹介しておくね。まあさちゃん」
亜仁花姐さんが声をかける。私は姿勢を正して、お辞儀する。

「はじめまして、今回デビューしました、轟まあさです。よろしくお願いします」
こんな場面は何度かあった。楽屋に差入れに来たり、お勉強しに来る姐さんが、何人もいたのだ。
その度に共演している姐さん達は、私のことを紹介してくれた。
「波木のえです。亜仁花ちゃんとは同期です。よろしく」

―あれ?
正面からのえ姐さんの顔を見て、どこかで見たことがあるような気がした。
もしかしたらどこか撮影で、顔を合わせたことがあるのかもしれない。

Debut.17

初日を迎えた。
劇場の入口には、私の顔がアップになったポスターが飾られた。
そして、色とりどりのスタンド花がいくつも並んだ。
古くさい場所だと感じていたが、こうなると華やかに感じる。

昨日は楽屋に泊まった。姐さん達みんなと一緒だった。
泊まる準備は全くしていなかったが「おさがりで良かったら」と弥生姐さんから楽屋着をもらえたし、
シャンプーやタオルも、他の姐さん達が貸してくれたので、全く問題なく過ごせた。

「今日は姐さん達と楽屋に泊まるから、迎えはいらない」
通し稽古を終えた後、私が電話でそう言うと、マネージャーはかなり驚いていた。
そして、姐さん達と一緒に写真を撮ったこと、それが姐さん達のSNSにアップされることも話した。
怒られるかとも思ったが、返事は意外にもOKで、今回の共演者との写真のアップに関しては、報告だけ
してくれればいいと言われた。
そう話すマネージャーの口調は、どこか嬉しそうでもあった。

そろそろ開演時間になる。Ⅰは全員が出演するので、みんなすでにヘアメイクを済ませ、衣装に着替えている。
「みんなで写真撮ろー!」
本番前のせいか、みんなどことなくテンションが高い。

私はそっと、胸元に入れたペンを握った。
レーザーライト、亜仁花姐さんから譲り受けたものだ。
昨日楽屋で、亜仁花姐さんに、レーザーライトを使った演出が好きだという話をしたら「それなら」と亜仁花姐さんがくれたのだ。

Ⅶのレーザーライトを放つ演出は、亜仁花姐さんが自分で考え、振付の先生と投光さんに相談して
決めたのだそうだ。
「だから私も、最初からレーザーライトは使ってなかったの。何日かして慣れてきて、レーザーライト
使いたいなって思い始めて。まあさちゃんも良かったら、先生や投光さんに相談しながらやってみて」
私に、亜仁花姐さんと同じような演出ができるかは分からない。だけど今は、お守り代わりに持っている。

場内に、開演を知らせるアナウンスが流れる。
「みんな集まろう」
弥生姐さんが言う。みんなが舞台袖に集まる。
「これから20日間、よろしくお願いします。頑張りましょう!」
「おー!」「はーい!」
みんなで思い思いに、ハイタッチしたり、抱き合ったりする。そんな姐さん達は、はじけるように美しい。
その姿を見て、私はなんだかほっとした。

きっと、大丈夫。姐さん達と一緒なら―
私は、自分の位置にスタンバイした。

end…and to be continued

Debut.16

「はい、一回止めましょう。最初の立ち位置にスタンバイして。轟さん、もう少し前に来た方が良さそう」
腕を伸ばすタイミングや、顔の向きなど、いくつかの修正が入る。
「うん、だいたいOKですね。じゃあ最後のところをもう一回やって、次に進めましょう」

群舞パートの最後の方の音が鳴る。
亜仁花姐さんと向き合い、ターンするシーンだ。そして抱きしめられて、倒れる。
曲が変わる。亜仁花姐さんはドレスを脱ぐ。
黒のビスチェに網タイツ姿になり、盆に立つ。そして幕が下りる。

幕が下りきったのを確認してから身体を起こし、一旦舞台袖に移動する。
舞台セットが変わるのだ。そして終盤に再び同じ場所に戻り、亜仁花姐さんと再びステージに出る。
着替える必要はないが、メインで着る衣装を、ステージの後ろにセットしておかないといけない。
衣装は舞台袖のラックにすでに用意している。

「良かった・・・できた・・・」
衣装を準備しながら、思わず声が出る。
亜仁花姐さんに抱きしめられて倒れるシーン、今まで一度もうまくできなかった。
だけど、成功とまではいかないが、なんとかできるようになった。

「良く頑張ったね」
後ろから声をかけられた。Ⅶで群舞を踊る弥生姐さんだ。他の姐さんも衣装を着て、スタンバイしている。
「ありがとう、ございます・・・」
その言葉に、一瞬涙が出そうになる。だが堪えた。

Ⅵのメインパートが終盤に差しかかった。私は再びステージにスタンバイする。
「じゃあ、そのままⅦにすすめましょう」
先生が言う。私は一度顔をあげ「よろしくお願いします」と言った。

Ⅵの終盤、亜仁花姐さんともう一度、一緒になる。
私は目を閉じて、亜仁花姐さんに身体を預けていればいい。

曲が変わる。Ⅶのスタートだ。
左右から4人の群舞の姐さんが出てくる。
ここ数日覚えた振付を、頭の中で何度もシミュレーションする。
「一回音止めて。轟さんが群舞入ることにしたので、一回カウントでやりましょう」先生が言う。

そう、中央で頬杖ついているだけの振付を、やめにしてもらったのだ。
でも、亜仁花姐さんと同じ振付は難しいので、先生が手を加えて、私向けにしてくれた。
今回、初めて姐さん達と動きを合わせる。
だけどなぜか、不思議と緊張はほとんどなかった。群舞のⅠやⅥの方がずっと緊張した。

「1,2,3,4・・・」
少しゆっくりめにカウントをしてくれている。
そして姐さん達も、きっと気を使ってくれているのだろう。踊りやすく感じた。
「はい、大丈夫そうですね」
「ありがとうございます」
私は先生に、そして姐さん達にお礼を言う。

「まあさちゃん、よく覚えたね」
「すごい、踊れるんじゃん」
姐さん達が口々に褒めてくれる。
「そんな、そんな・・・」
褒められるようなことはしていない。ただ、今までがひどすぎただけなのだ。なのに―

亜仁花姐さんの言葉を思い出す。
『ストリップのお客さんはね、ダンスが下手でも、頑張ろうとしている子には、みんな優しいの』

ストリップのお客さんだけじゃない。姐さん達も、みんな、優しい。

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