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しょっぱいドライブ

「しょっぱいドライブ」大道珠貴著

2003年芥川賞受賞作。
この話は、何と言っていいかとても難しい。
恋とか友情とか、人間関係にはいろいろあるけれども、
この話は、それでもやっぱり恋なのでしょうか。

もちろん全く非現実的ではなく、
あまりふだん目にしないだけで、ありそうなことではあるとはいえ。
という何とも歯に物が挟まったような感想になってしまう。

それに、主人公の女性はきっと幸せなのだと思う。
一般的には幸せには遠いように見えるかもしれないが、
こんな幸せもあるのだろうと思わせてくれる。

いろんな人のいろんな幸せがあっていいと思う。
誰が決めるわけでもなく、自分がどういう思いでどういう生き方をするか。
それでいいんじゃないだろうか。

短編が3つ収録されているのだが、どれもそんな話。
一見不幸そうで、でもきっと不器用に幸せを求め、
不器用なりに近づこうとしている人たち。

著者はしっかり、そんな人たちを暖かく見つめ、ていねいに描いている。
そんな著者の筆致には感服するものの、
読んでいてちょっぴりつらい。
・・・切ないけど甘くない。

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「いつか記憶からこぼれおちるとしても」 江国香織著

久々の江国香織。
江国香織は私の好きな作家のひとりです。

詩人としての才能を感じさせるような、ことば使いがとてもうまい。
(私は何でも漢字を大切にして使う癖があるので余計にそう思うのですが)
ひらがなと漢字のバランス、体言止めや短い口語調を織り交ぜる緩急。

彼女の初期の作品はほとんど読み漁り、
有名になってしまってエッセイとか多く書くようになって、少し遠ざかっていた。
それでも「冷静と情熱のあいだ」に惹かれて、
(小説ではミラノですがフィレンツェの)ドゥオモに昨年新婚旅行で登りました。

今回は比較的新しい作品だと思うのですが、
最近妻が読み終わって枕元にあったのを、
つい手にとって読み始めてしまいました。

いわゆる恵まれた家庭環境の子が多い、
私立の女子高の同じクラスに在籍する女の子たちの、
「いつか記憶からこぼれおちる」であろう日々を描いている。

この設定がうまい。
しかも前に出てきた友人が、後で「私」として登場するのは、
最近多い気がする短篇連作小説に似ているが、
意外性に富んでいて飽きないのです。

えっ?あのおとなしそうな子がこんなこと考えてたの?
とか、あんなに仲良さそうなのに、何も知らないんだ・・・とか。

それぞれの子から見る学校とそれぞれの家庭。
大人の視点とこどもの感情が振り子のように訪れる。
社会に対する疑問、自分に対する不安。
それが、日常。
毎朝、陽が昇るぐらい当たり前の毎日なのです。

最後に・・・。

普通におじさんとつきあっては別れる子。
お金をもらう子。もらわない子。
一見そんなふうには見えないのに。

愛情や金銭的に満ち足りていればいいというものではないのか。
自分の子育てに対して、ものすごい不安を感じずにはいられない。

読みやすくて、考えさせられる。
ふわりとして、どきっとして。
江国ワールドの術中に相変わらず見事にはまりました。

星々の舟

『星々の舟』村山由佳著

直木賞受賞作が続きました。

彼女の作品は意外と読んでいなかった。
もっとも彼女には、どうしても少女漫画のような、
恋に悩む女性がちょっと一息コーヒーを淹れるように読むイメージがあったので。
・・・装丁とかタイトルとかで勝手なイメージですが。
(誤解を避けるために・・・私は少女漫画を作品として高く評価しています)

そのイメージはこの作品を読んで変わりました。
もちろん近親相姦や不倫、いじめなど、テーマや心情の描き方は想像通りですが、
文章や構成がとても作家っぽい(笑)
状況描写や回顧、連作の手法などが読み応えがあるのです。

最後に戦争をテーマに持ってきていて、
あとがきを読むと最初から戦争をテーマに書きたかったようで、
それまでがそのための伏線かと思うと唸らされました。
全体としては家族がテーマでもあり、その折り重なる主題の、
重ね方がとても上手でした。

青春の頃に読んでもたぶんここまで深く考えさせられなかっただろう
と思うような意外な味わいに満足しました。
私が家族というものを大人になって考え直したのは最近のことですから。

かといって、次々と彼女の作品を読み進めようと思ったわけではありませんが。
他に読みたかったけどまだ読んでいない作品がたくさんあるからです。

でも彼女にはきっと、他にも読み応えのある作品が書けると思いました。

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4TEEN

『4TEEN』 石田衣良著

2003年の直木賞受賞作。
でも私は直木賞はあまり好きではない(笑)

ミステリーとかエンターテインメント性が評価されることが多い気がする。
けれども最近は芥川賞の方がそうだったりして、
逆に直木賞が純文学っぽい作品だったりもする。

この作家は、『池袋ウエストゲートパーク』で有名になったので、
まさに直木賞向きだと思っていたのであまり読む気はしなかったのですが、
この作品はちょっと違いそうだったので読んでみました。

ひとことで言うと重松清に近いけど、彼ほど洗練されていない。
でもそれが等身大というか、変な身近さがあって、
失礼ながら“自分でも書けそうな”話なのです。

月島のありふれた4人の中学二年生の話。
4人は(厳密に言うと“僕”以外の3人は)個性は豊かで、
ちょっと強引な設定もあります。
そこが直木賞っぽい。
でも、ちょっぴりしんみり。

中学生という大人と子供の中間、思春期の男の子というのは、
楽しいものなんでしょうね。
私(の時代)はそれが高校生だったので、
そのズレが距離感を保って共感できないところも多かったですが。

『葬送』の後に読むにはちょうどよく、あっという間に読めました(笑)

葬送

平野啓一郎著「葬送 第一部(上・下)」「葬送 第二部(上・下)」

やっと読み終わった。

かなり難解な革命前後のヨーロッパ時代背景と、
活躍する芸術家たちの緻密な心理描写。

孤独あり、恋愛あり、対立ありの様々な人間模様が、
芸術論や社会論とともに複雑に描かれています。

そもそもこの平野啓一郎という作家は、
若いのに難しい言葉や表現を好み、
最近の人気作家とは確実に一線を画している。

今までも何回か彼の本を手に取り、迷った挙句棚に戻してきた。
が、今回いよいよ私の好きなふたり、
フレデリック・ショパンとウージェーヌ・ドラクロワが主人公とあっては、
読まないわけにはいきません。

文庫で登場したのを機に挫折しないよう4冊まとめて買った。
ショパンを聴きながら、なんて幸せな時間が・・・、
という淡い期待は読み始めてすぐに消え去り、
ちょっと読んではすぐ眠くなって寝てしまう。
1ページがなかなか進まないのです。

タイトルから推察の通り、
サンドとの愛人関係の破局と肺炎に苦しむ晩年のショパンを中心に、
画壇に認められずに大作を描き続けて消耗していく友人ドラクロワ。

ふたりの希代な天才が、奇しくも同時期のパリに居合わせ、時代と人間関係に苦しむ姿。
読んでいて楽しいはずが無い(笑)。
映画「アマデウス」や「真珠の耳飾の少女」にしても、同じ。
結局は生きるために必死だったり苦しんだりして、
きっとそれらの何もかもがあってこそ、
誰が観ても聴いても「美しい」作品が出来上がっているのですね。

普段の素晴らしい作品からだけではとても想像できない背景が、そこには必ず存在する。
だからこそ人は、苦しいのは普通の人だけではないし、
苦しまなければ傑作は生まれないことに共感するのではないでしょうか。

それにしても、著者は本当によく研究しているし、
それを基に豊かな想像力と細かな描写力で、
まるで当時共通の友人が書いた本の
翻訳を読んでいるような気分になります。

もしかしたらもっと軽いタッチやリズムで、
同じようなテーマを書ける人がいるかもしれませんが、
書こうとする人がいないのか。
いや、やっぱり書ける人がいないかもしれませんね。

とにかく今の時代の作家の中では貴重な存在です。
だけどしばらくは他の作家の作品を読むのは間違いないでしょう(笑)

ショパンやドラクロワが心から好きな人、
もしくは時間に余裕があって一気に読める人は、
ぜひご一読ください。

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