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「日本経済新聞」11日付の一面トップに「法人税17年度に20%台 政府税調 減税で国際競争力」と題して報じている。
 
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「政府は企業の利益にかかる法人実効税率を今の32.11%から2017年度に20%台に引き下げる調整に入った」という。政府・与党は、これまで「今後数年で20%台にする」という方針だったが、実現時期をはっきりさせたというわけだ。
 
 
 
 
そして、「日経」3面の「きょうのことば」では、「法人実効税率」について、「日本は32.11%、独英上回る」と題して、次のように解説している。
 
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「企業の所得のうち、どれくらいの割合を税金として納めなければいけないかを示した数値。国税の法人税だけでなく、地方税の法人住民税、法人事業税による税負担も含めて計算する。日本の法人実効税率は現在32.11%。ドイツ(29.66%)、英国(20%)など海外に比べて高い。企業の国際競争力を高めるため、政府は昨年、15年度から数年かけて20%台に下げると決めた。」
「企業や個人の国境を越えた動きが活発化するなか、主要国の間では法人税を下げ、自国に企業を誘致する競争が過熱している。英国は現在20%の法人実効税率を18%に引き下げると表明しており、実施すれば20%の消費税率を下回る。企業や個人の所得にかかる税を重くすると、有能な企業や個人が逃げてしまう。このため所得にかかる税を下げ、薄く広く負担する消費税の税率を引き上げるのが海外の潮流だ」
 
 
これを読むと、「へぇー外国に比べて日本は企業にかかる法人実効税率がえらく高いんだなー」「これじゃあ、グローバル経済なのに日本は国際競争力が弱くなって世界に取り残されちゃうなー」「イギリスとか法人税どんどん下げているというのに、日本も下げなくちゃだめだよなー」「日本から有能な企業や個人が逃げていかないように、法人税下げて、薄く広く負担する消費税を上げればいいんだなー」……と思ってしまう人も、中にはいるのではないだろうか。
 
しかし!これまでも何度も言ってきたが、これはとんでもないことだ。
こんなことを、まことしやかに報道している報道機関にあきれてしまう。しかも、いまだに、黄門様の葵の紋の印籠のように「国際競争力を高める」とさえ言えば、国民が信じてくれるとでも思っているのだろうか。
これでは、政府や財界のスポークスマンである。
 
 
はたして、日本の法人税が本当に高いのか。
 
まず第1に、「高い」「高い」と言っているのは、法人税法に規定されている法律上の数値である「法定税率」である。あるいはもっと正確には「法定正味税率」ともいう。
しかし、これは、ある意味で「表面的」に示された税率であり、実際に個々の企業が支払っている法人税の納税額(税率)は、まったくそれとは違うということである。
 
政府・財界のスポークスマン新聞が好きな、この法定税率で比較すれば、他の国に比べて日本は「法人税が高い」と見える。しかし、個々の企業が現実に稼いだ所得に対して、実際に納税した税金の割合は、極めて低くなっている。そのことは当ブログでも何回も取り上げてきた。
 
 
 
実際に個々の企業が負担している、本当の「実効負担税率」は、あまりにも軽く、驚くべき実態がある。中央大名誉教授の富岡幸雄氏の「『実行税負担率』が低い大企業」のグラフを見ると、三井住友FGが0.001%、ソフトバンクが0.003%、みずほFGが0.097%と続く。
 
 
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記憶にある人もいるかもしれないが、昨年2014年3月期に、世界のトヨタの豊田章男社長が「社長になってから国内で一度も税金を払っていなかった」と、「5年ぶり」に4912億円の法人税を納付したと記者会見で発言して、世間を驚かせた。
トヨタだけではない。メガバンクの三井住友銀行は2012年に「15年ぶり」、りそなは「18年ぶり」に法人税を納税した。
大企業やメガバンクが法人税を1円も納めなくても、お咎めもなく、「世界一」になったことで調子に乗って「法人税を納められて嬉しい」などと言っている、この国の税制はいったいどうなっているのだろうか。
 
トヨタが法人税を払わなかった5年間というのは2009年3月期から2013年3月期であるが、最初の09年3月期は、リーマンショックの影響で2914億円の赤字だったため、法人税が払えなかったということになっている。しかし、その後、10年3月期は2914億円の黒字、以後11年5632億円、12年度4328億円、13年度4036億円と黒字であった。
 
にもかかわらず、なぜ、法人税を1円も納めなかったのか。
 
法人税には、さまざまな「控除」項目や「優遇措置」があるのである。「欠損金の繰越控除制度」(期間7年、大手企業の場合80%)、「海外子会社配当益不算入制度」(10年3月期から導入)、研究開発費(「試験研究費税額控除」)など。
 
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この研究開発費もなかなか大きく、2013年度の法人税の研究開発減税額は6240億円にのぼったが、総額の約2割に及ぶ1201億円の減税を受けたのはトヨタ自動車だった。
 
「租税特別措置」(税制上の特例として租税を減免あるいは増徴する措置)ということばはよく耳にすると思うが、富岡教授によれば、「法律で規定されている88項目ある租税特別措置の適用状況(2012年度)を見ると、適用件数が132万3396件で、それによる減税相当は総額1兆3218億円。しかも、その半分近い47.72%の6308億円は資本金100億円超の巨大企業703社への減税だった。中小企業への恩恵は小さく、まさに巨大企業を優遇する制度です」と述べている。
 
 
ちなみにトヨタが5年ぶりに法人税を納めた13年度には連結決算では、過去最高を更新する2兆3千億円近い営業利益をあげたが、実際に負担した法人税率は22.9%であった。
 
 
 
麻生財務相が、一昨年、2013年の9月13日の閣議後記者会見で、法人税率引き下げの議論について、引き下げても企業が内部留保にまわすことで経済効果がない可能性を懸念して「企業の7割がいわゆる税金を払っていない、法人税を払っていない欠損法人ということになっている。(減税は)効果がきわめて限られている」と発言した。その後、14年125日付「東京新聞」では、優遇措置を活用して、毎年、国内企業の7割前後が法人税を納めていないという記事を書いている。
 
名だたる巨大企業をはじめ、企業の7割が法人税を納めていないということは、「法人税を引き下げる」うんぬんする前に、税制そのものが機能していなくなっているということではないだろう。
そんないいかげなことをやっている国を国際社会が信用するだろうか。
 
 
 
 
 
また、消費税との関わりでも大企業は、優遇されている。
これまでも指摘しているが、輸出大企業には、「輸出戻し税」が還付され、しかも税率があがればあがるほど還付金は大きくなる。
 
税理士で元静岡大学教授の湖東京至さんが、輸出大企業の還付金を試算しいるが、消費税率が5%が8%に増税されたことにより、還付金はどこの企業も大幅に増えている。
 
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トヨタ自動車は、5%時の前年の年間還付金額が1402億円だったのに対し、今年は1192億円増え、2594億円が還付されているという。上位10社を見ると、前年が4428億円だったのに対し、8%になってからは1.8倍の7837億円となる。
消費税は、そもそも事業者が、「年間売上額に8%をかけた金額」から「年間仕入額などに8%をかけた金額」を差し引いた額を納める「仕入税額控除方式」だ。
大企業は、下請け単価をいくらでもたたくが、ともかく事実上、消費税を下請けに払っていなくても、払ったものとして仕入税額控除を受ける。一方、輸出売上には消費税率はかけらけれのでロ税率で、仕入れに含まれているとみなされる消費税分をそっくり還付してもらうというわけだ。
税率が10%になれば、この還付金がさらに大きく増えることになる。
 
政府・財務勝利予算案の説明によれば、平成25年度の還付金は3兆2237億円(税率5%、一部8%)、平成27年度は4兆4736億円(税率8%)に、1兆2499億円も増えている。税率が8%に引きあがることで還付金が大幅に増えることを政府自身が承知していることになる。
消費税収入は年鑑10兆円前後だが、8%にひきあがり18兆円となった。消費税1%で約2兆円の増収となるという。
 
また、消費税は還付金だけの話ではない。知る人ぞ知る、「法人税減税と消費税増税」との関係もしっかり見ておくべきだろう。
 
消費税は1989年にまず3%で導入され、97年に5%、2014年に8%へと引き上げられた。一方で、法人税の方は、1984年に43.3%だったが、消費税導入時の89年に40.0%、90年に37.5%、98年に34.5%、99年には30.0%となり、2012年には25.5%まで引き下げられた。そして、今回の17年までに20%台に下げるという。
 
その結果、法人3税の税収は最高だった1989年の29.8兆円から、現在では17.6兆円まで下がっている。
 
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89年からの法人税を引き下げた減税分の累計は255兆円。
一方でこの間の消費税の税収は合計282兆円だ。
計算上、消費税の税収分がごっそり、法人減税の穴埋めに回っているということになる。

しかも、庶民にとっては何か買う以上は逃げられない消費税と違って、法人税はさまざまな税逃れの手法や先ほどから指摘しているように、「租税特別措置法」などによる巨額の減税の恩恵がある。グローバル展開をしている大企業であればあるほど、税金が安い国やタックスヘイブンの国に本社を移すなどして、日本で法人税を払わないですむ。こうしところにこそ、日本の税制の歪みと欠陥があるといえる。

消費税を上げるくらいならば、まず、法人税を改めるべきではないか。
また、政府が、大企業に、あの手この手で至れり尽くせりで税金を負けてやっていて、さらに法人税も下引き下げるなんて、それこそ「国際競争力」が聞いてあきれる。そうやって甘やかされ、ぬくぬく大きくなった企業など、競争力などあるわけないし、世界で通用しなくなるのではないか。
 
 
 
イメージ 8今の大企業は経団連を中心に、政府に働きかけ、企業の利益を拡大するために、儲けのじゃまになる規制やルールは取っ払い、払う税金を少なくし、一方で儲けを増やす仕掛けをあの手、この手で政策化させてきている。
 
先月、国会で労働者派遣法改正案が成立させた。引き続き、残業代ゼロ法案や解雇自由化法案を通そうとしている。これらはかねてからの財界の強い要求である。
今のマイナンバー法も、IT関連大企業やカードを扱う大手金融会社の儲け口になっている。
 
そして、東京オリンピックやリニア新幹線建設などをテコに「環状メガホリス構想」やら「日本再興戦略」などと銘打って、3環状など巨大道路建設、東京駅前には400メートルの巨大ビル建設など総額1兆円を超える再開発事業がすすめられている。
「武器輸出三原則」が緩和され、今や国策として武器販売が行われようと、「原発輸出」も安倍首相が先頭にセールスに各国を訪問している。
 
TPP(環太平洋連携協定)で問題となっているコメをはじめ農産物の輸入を自由化をすることについても、海外展開する自動車や電機などの関連大企業は積極的に推進してきたし、政府ともに農協の解体をめざしてきた。
 
以上は、ほんの一部であり、いまや財界の総本山である経団連は、「おねだり経団連」とも呼ばれ、政府の諮問機関や税調に民間議員を送り、政府と一体化している。一方政府は、大企業の「免税店」となり、さらにドラえもんの「四次元ポケット」のように、財界に頼まれればなんでもポケットから出してあげるのである。
もちろん「政治献金」という多額の“見返り”もあるわけだが。
 
 
 
大儲けしているこうした大企業がちゃんと応分の税金を払って、社会的責任をきちんと果たすことの方が、まともな企業になるのではないか。自分たちがいくらたんまり儲けても、非正規が増大し、若い人たちも結婚もできず、少子化がすすむ。その結
果、購買力が下がり、企業もいずれ利益があがらなくなる。結局は自分たちの企業利益にもはねかえるはずだ。
 
 
イメージ 2江戸から明治にかけて、日本各地で活躍した近江(現在の滋賀県)に本店を置いた近江商人。
彼らがモットーにしていたのが「買い手よし 売り手よし  世間よし」という「三方よし」の精神だった。
 
近江商人たちは、自らの利益のみ求めることではなく、多くの人に喜ばれる商品を提供し続け、信用を得ていった。さらに利益が貯まると、無償で橋や学校を建てるなど、世間の為にも貢献したという。
 
こうした日本の昔からの経営哲学を、今の日本の大企業はもう一度思い起こしてはどうなのだろうか。そうでなければ、日本の経済も社会も、数十年後に殺伐とした荒野と変わり果てかねない。
 
 
 
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