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7月の中旬の雨上がりの日、ライオンズヴィラ山中湖の駐車場に21:00に集合して、一台のワゴンに乗り込み富士急の別荘地の中に行った。そこはオペラ合唱団を始めた頃に合宿や、練習後の飲み会に訪れた別荘、合唱団のソプラノの駒ちゃん(桑山重美)の別荘の近くだった。彼女とは星薬科大学の混声合唱団を指導していた40年前からの付き合いで、一番古い合唱団仲間の一人だった。お酒が好きで、飲むと陽気になり、ほんのりとした色気を漂わせ、けらけらと笑う、合唱団のムードメーカーだった。5年ほど前にご主人を胃がんでなくし、其の時はさすがに、2〜3年合唱団を休団され、僕を始め多くのメンバーが、何時戻ってくるのと心待ちに、彼女の薬局を訪ねた物である。その後オペラ合唱団に戻られて、ヴェルディ作曲の<シモンボッカネグラ>に出演され、其の二年後、楽しみにしておられた星薬科大学混声合唱団の私の前の常任指揮者でもあった菊池彦典氏が指揮した<マクベス>、其の指揮者練習が始まる前の2月の終わりに残念ながら肺癌でなくなった。二月、三月は僕の大切な人、柴田先生、ミラノのコルッタおばさん、母親、が亡くなって行っている。
前置きが長くなったが、其の頃、以来もう10年以上、来ていない。しかしジャンプ台と呼んでいた急坂や、特徴のある垣根等を見て、心はすぐに駒ちゃんと一緒になった。別荘の一角に車が止まり、数人のグループは案内の男性に導かれて、静かに林の中へ歩んだ。真っ暗闇の中、谷の上の方から一筋の光の列がこちらに向かってきていた。立っている茂みの中に<姫蛍>のメスが居てこの時期の雨上がりの夜更けに谷を下り、ランデブーにくるとの事で、僕は、心の中で駒ちゃんと久しぶりのランデブーを楽しんだ。暗闇の中、黄緑色に光る小さな冷たい光は、幽玄の世界に僕を導いた。 |
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