川島素晴

「演じる音楽」を基本コンセプトに活動する現代音楽の作曲家。

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タモリ倶楽部

2016年9月2日深夜に放送されました、「タモリ倶楽部」で現代音楽の企画が組まれ、解説者として出演致しました。


6月中旬、テレビ朝日の某ディレクターからご紹介があり、出演決定して番組制作会社のディレクターと打ち合わせを始めたのが数日後、収録はその一週間後という慌ただしい状況で、楽譜や作曲家の画像を準備し、ピアノで弾いてみる部分があるので、その数日でピアノをさらわねばなりませんでした。(シュトックハウゼンを人前で弾いたことはありません!)
しかもその準備していた一週間というのが、大学で毎日のようにイベントが重なっていて、これに充当できる時間がほぼ皆無だったので、睡眠時間を削るしか無いという状況。特に収録前日は徹夜で準備したので、収録日はほぼ完徹状態・・・ほんと、過酷な一週間でしたが、収録そのものはとても楽しく、すばらしい出演者の皆様との共演も含めて、夢のような時間でした。

編集されたものは放送で初めて拝見したのですが、ネタとして用意したものは全て入れ込んで頂いていて、相当、編集にはお手を煩わせたことと思います。シュネーベル、ブソッティとそれぞれ親交のある長野麻子さん、杉山洋一さんのご協力も得て、苦労して準備した甲斐がありました。(当初の打ち合わせ段階では、ファーニホウ等を含む、本当に演奏困難な楽譜だけで4ネタ仕込む方向でしたが、さすがにマニアック過ぎるということで方針転換し、図形楽譜を半分入れ込みました。ケージはかつて「タモリ倶楽部」で特集したことがあったので、今回は入れないことに。)

以下、番組内容にそって、補足致します。



<冒頭>
◆川島素晴/視覚リズム法Ia(1994)
一番最初、私がピアノを弾いている部分は、既成の曲ではなく即興演奏です。
箱馬を叩いた曲が上記の曲で、「自己紹介がてら何かやって下さい」と言われたので、これを準備しました。両手両足と口で、異なるパルスを奏で、それを打ったり打たなかったりすることで視覚と聴覚の齟齬を形成する、というアイデアで始まる作品の冒頭部分です。私自身、1994年に自作自演で初演してからの数年間はよく演奏していて、1997年にはダンスとコラボして日本舞踊作家協会の賞を頂いたりもしたのですが、今回はそれ以来、かなり久々に演奏しました。
1996年にはフルーティストの木ノ脇道元さん、2008年には打楽器奏者の安田直己さんが上演と、他の方によっても上演されていますから、譜面もありますし、少なくとも「デタラメ」ではありませんが、そういえばこれを演奏した木ノ脇道元さんも当時、「甥っ子が駄々をこねているようだ」とおっしゃっていたので、木本さんのご感想は的を射ていますね。。。



<紹介作品1>
◆シュトックハウゼン/ピアノ曲X(1954/61)
番組中話題になった《ヘリコプター・カルテット》については、こちらをご覧下さい。(ちょっと大袈裟に「プロペラ音だけ」という話になっていましたが、実際は《LICHT》のフォルメルに基づく精緻な作曲がなされております。)
それにしても、クラスターグリッサンドの実演に対して、菊地さんが「既にタモリさんが弾いているのが目に浮かぶ」とおっしゃる前フリは、見事な予言でしたね。
「弾いてみた」箇所は、4ページ目(上段の最後の部分からページの終わりまで)です。映像で見ていますと、その場で初見で弾いた皆さんと大差ないように見えたと思いますが、これでも必死でさらいまして、「それなりに正確に」弾いているつもりなのですが・・・。(本心としては何テイクかして、良かったのを採用してもらいたかったのですが、番組収録上それは叶いませんので、直前に練習することもできずに一発勝負。それにしては、それなりの結果にはなったかと・・・。)例えば、ポリーニが弾いている動画がありますが、該当箇所はこちらです。「正確さ」だけで言うなら、ポリーニがライブで弾いたのと同程度にはなっていると思うのですが、いかがでしょう。(ただ、私はこのページだけを必死でさらった結果ですので、ピアニストの皆さんは、これを全曲さらうのかと思うと頭が下がります。)
なお、この曲は、楽譜上部の音符で仕切られた範囲を、その音価に比例させて演奏するのですが、その設定の中で「できるだけ速く」弾く、という指示になっています。ですから、演奏が難しければ遅くすればいい、ということでもありますので、理論上は「演奏不可能」ではありません。しかしそれでも、本当に、クラスター部分も含めて一音漏らさず正確に弾くのは、恐らく不可能なのではないかと思います。(もの凄くゆっくり弾けば別ですが・・・。)上部の音価による相対的なリズムを実行するために、今回私は、当該箇所の譜面を自分用に書き直して演奏しています。映像をよくご覧になると、それがわかると思います。



<紹介作品2>
◆クセナキス/エヴリアリ(1973)
それにしても、タモリさんの博識と感性の鋭さには恐れいります。メシアンについては既にご存知だったということですよね。そして、シミュレーション音源を聞いたタモリさんが「これ聞くとさっきの図形がわかりますね」という感想を述べられたのには驚きました。。。
収録では、木本さんの「これを無理やり弾いてみることは・・・」の前フリの後、実際にピアノで弾いたのですが、放送ではカットされて、「この和音をその通り弾くのは?」「無理ですね。」という流れにつながり、音源試聴に進んでいましたね。これは正直なところ、「せっかく弾いたのに残念」というより、ちょっと安心しています。シュトックハウゼン同様、死にものぐるいで数日間さらいましたし、当該箇所のみであれば、ピアニストの皆さんがライブで弾く程度の正確さにはなったのではないかと思いますが、やはり一発勝負のものを放送に乗せるのは勇気が入りますので・・・。
なお、実際の樹形曲線ではないグラフが示されますが、これは私が作成したもので、楽譜に書かれている音をそのまま声部ごとに色分けして点で表示しています。

イメージ 1

余談ですが、この作業をしてみてわかるのは、一箇所、楽譜の誤植と思われる部分があることです。上から3番めの赤いラインを見ると、不自然に点が連続的なつながりからはずれているところがありますが、これは楽譜の通りなのです。
放送ではカットされていましたが、《エヴリアリ》が「メドゥーサ」の意味である、という説明も致しました。そうきくと、このイメージの原点として理解し易いのではないでしょうか。



<紹介作品3>
◆シュネーベル/Visible Music(1960-62)
タモリさんの、「俺それやったことあるよ。」の発言、そして本当に、私と共演して下さったこと。いやぁ、、、この曲を選んで、本当によかった、この録画は、一生の宝です。
「図形楽譜」を紹介するにあたり、前述のように、ケージは同番組で以前取り上げたので見送る方針だったため、それならば、ネットで検索すると普通に出てくる図形楽譜ではなく、本格的な内容にしたいと考えており、シュネーベル専門家の音楽学者・長野麻子さんの協力も得て、短時間で準備が間に合いました。(なお、実際には、演奏法についてのかなり詳細な注釈があり、それを解読するのはとても困難です。そのことに注目するなら、この作品こそ「無理無理楽譜」と言っていいと思います。ただ、シュネーベルの興味深いところは、そのように詳細な注釈を解読した先に、結局、かなりの自由度を許容しているところです。そういった意味で、この、タモリさんとの共演内容は、この作品の断片的な上演としては充分成立していると思います。ちなみに、放送ではカットされてしまいましたが、木本さんと菊地さんのコンビネーションでの演奏も行われました。かなり面白い内容だったのですが・・・。)
なお、この作品の初演は、この後に紹介する作曲家ブソッティと、作曲家でピアニストのジェフスキーが行いました。(・・・という説明もしましたが、放送ではカットされました。)
この作品が初演された頃、タモリさんはまだ10代で芸能活動を始める前ですので、一世を風靡したタモリさんの芸よりも先に、ドイツでこのようなパフォーマンスがなされていたということですね。
シュネーベルについては、私は、日本での紹介をかなり積極的に行っておる者の一人だと思います。1991年にこの作品を東京芸術大学でピアニストの平野弦さんと初めて上演、以来、1994年1995年にも足立智美さんと上演。
シュネーベルには、声や身体を用いたパフォーマンス作品の系譜の他に、過去の作曲家の音楽への注釈のような作品の系譜があります。1995年には、ドイツ文化会館の演奏会で《ベートーヴェン・シンフォニー》を日本初演し、以来、
等の公演の全てで、私が企画選曲に関係しております。
これらの中でも、ハイドン、マーラー、シューベルト、といった作曲家を下敷きにした作品が上演されてきましたが、2017年2月11日のいずみシンフォニエッタ大阪定期演奏会でも《ベートーヴェン・シンフォニー》を上演しますので、是非ご来場下さい。



<紹介作品4>
◆ブソッティ/AUTOTONO(1977)
この題名、慣例に従って《自動トーノ》としましたが、これは造語で、サインのことをautographという等、auto という接頭語に加え、ブソッティの叔父さんにあたる画家、トーノ・ザンカナーロの名前をかけたものですので、《AUTOTONO》という原題の方が複合的な意味が伝わります。
放送で流れた音源は、日本でブソッティご本人を迎えて行われた作品展のライブ音源で、CDとして販売されているものです。ご本人と直接親交のある作曲家・指揮者の杉山洋一さんが、ミラノの「mdiアンサンブル」とともに桐朋学園大学の演奏、作曲学生を交えて上演したもので、ピアノはあの新垣隆さんが弾いております。
今回は、菊地成孔(ピアノ)、木本武宏(声)、近田春夫(扇子)、タモリ(箱馬)、川島素晴(指揮)、という編成で上演しましたが、放送では一瞬しか流れませんでしたね。一応、あのページを左から順に全部通して演奏したのですが、皆さん、なかなか達者な演奏を披露していて、とくに木本さんのヴォイスパフォーマンスはツボを心得た内容でした。(楽譜に、声のパートは比較的しっかりと記譜されていて、テキストもありますので、放送で発していた木本さんの声は、一応、楽譜を読んだ上でのものです。)もう少し長く放送されると、より、この作品の面白さが伝わったかもしれません・・・。

それにしても、シュトックハウゼンやクセナキスという有名巨匠はともかく、シュネーベルやブソッティといった、恐らく日本ではあまり知られていない作曲家を、地上波で放送、それも断片的にせよ、ライヴで演奏できたということは、感慨深いものがあります。
もう二度とこんな機会はないかもしれません・・・とは言わず、テレビ業界の皆様、これを機に、是非、これからもこのような企画をお願いします!





以上、補足説明でした。

テレビ朝日の放送エリアではない地域の皆様におかれましては、各地の放送予定をまとめましたので、次の投稿をご覧下さい。

放送を見逃した方、ネットされていない地域にお住まいの方、海外在住の方等にお知らせしますが、某動画投稿サイトで「タモリ倶楽部」で検索すると。。。

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