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「なあに、さむれえとは名ばかりの小普請組で、年がら年じゅうピーピーしてるさ。だがな、息子の麟太郎には、自分が望めば、なんとしても学問をさせてやりてえと思ったのさ。おめえには、いいことを聞いたぜ。いつそういう世の中になるかわかれねえが、そういう風になってもらいてえものだ」 |
小説
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皆は気づかなかったが、これは、目にもとまらぬ早業で、小吉が袴を切ったものだった。ちょっとしたいたずら心が起きたのだ。剣術の腕が違いすぎるのか、まさか、あの白粉の気が触れた女男が、これほどの腕を持っていると誰も思わなかったのか、誰も気を留めるものはいなかった。 |
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留吉が答えるが早いか、思い切り、小吉は蹴とばした。 |
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「ねえちゃん、すまねえな。こいつにカネを預けているんだが、こいつは気がふれててな。それで、あんな買い物をしてしまったんだ。ちょっとでいいから、カネを返してくれねえか」 |
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聞きながら、店の主人は、微笑んでいた。それを見て、小吉は、ふと思った。そして、それを口に出してみた。 |



