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プロ向け市場に上場された有価証券については、従来の厳格な法定開示は適用されず(24条1項1号)、これに代えて、発行者情報の提供または公表が義務づけられます(27条の23第1項)。これは法定開示でしょうか。 単なる言葉の遊びではなく、発行者情報の開示(および特定証券情報の開示)は、法定開示と自主規制のハイブリットといえるでしょう。私は初め、日本基準・日本語による最低限の法定開示に加えて、外国基準・外国語による自主規制開示が行われるものと勘違いしていました。そうではなく、開示の枠組みを法律で定め、開示の内容・頻度・公表の方法を取引所が定めるのです。 条文を見ると、たとえば27条の32は「内閣府令で定める情報(以下、「発行者情報という。)」とあり、他方で117条の2第2項は、金融商品取引所は、発行者情報の内容を定めなければならないとしています。矛盾しているようですが、内閣府令では、「取引所が定める」と定めるようです。 こういった例は、これまで日本法にはなかったのではないでしょうか。近い例として、取扱有価証券があげられます。取扱有価証券は、「認可協会がその規則において、売買その他の取引の勧誘を行うことを禁じていない株券等」をいい(67条の18第4号)、取扱有価証券の取引には相場操縦の禁止、インサイダー取引の禁止などの一部の規定が適用されます。しかし、法は、かろうじて、取扱有価証券の定義を認可協会に委任しているとは読めないようになっています。何が取扱有価証券に当たるかは、上記条文の解釈によって決まり、協会の規則によって決まるわけではないのです。もし、委任してしまうと、取扱有価証券の相場操縦、インサイダー取引に罰則の制裁がついているため、罪刑法定主義上、問題が生じてしまうからです。 発行者情報の場合はどうでしょうか。発行者情報に重要な虚偽があると罰則が適用されます。法定開示の虚偽記載の場合も同じですが、「重要な記載漏れ」は処罰の対象とされていません(学説上は、重要な記載漏れは重要な虚偽記載に当たるとする有力説があります)。何が虚偽記載に当たるかは、何が発行者情報として開示すべき事項に当たるかとは、一応切り離して判断することができるでしょう。したがって、虚偽記載を処罰する限りにおいては、開示内容を取引所の規則に委ねても罪刑法定主義に反しないといえるでしょう。それに対して、記載漏れがあるかどうかは、何を開示すべきかによって決定されますので、「重要な記載漏れ」を処罰の対象にすると、犯罪の構成要件を取引所の規則が定めていることとなり、罪刑法定主義に反することになると考えられたのでしょうか。立案担当者がそこまで考えたかどうかは、よく分かりません。
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