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最近、課徴金の事例が増えているような感じを受けます。 平成20年事務年度の課徴金の適用事例は次のようになっています(金融庁等のHPによる)。 課徴金にかかる2008年改正金融商品取引法の施行は、平成20年12月12日からでした。したがって、下記はすべて改正前の事例です。 勧告 決定 違反者 違反行為 金額 備考 6/19 7/9 A社 継続開示違反・発行開示違反1,594,579,999 7/24 8/22 B社役員 インサイダー取引 12,460,000 9/12 10/1 C社 継続開示違反 12,660,000 上場廃止(虚偽記載) 10/10審判開始決定11/7 D社 継続開示違反(臨時報告書) 1,500,000 民事再生手続へ移行 10/17 11/7 E社役員 インサイダー取引 340,000
50,000
10/24 11/18 F社社員 インサイダー取引 1,180,000 11/4 11/18 G社社員 インサイダー取引 20,790,000 10/30 11/21 H社 継続開示違反 3,000,000 上場維持 10/24審判開始決定11/28D社 継続開示違反(有価証券報告書) 10,810,000 民事再生手続へ移行 11/11 12/3 I社 継続開示違反 7,500,000 上場維持 11/21 12/19 J社 継続開示違反 224,240,000 処分未定 証券取引等監視委員会が課徴金納付命令の勧告を行った事例について、重ねて刑事告発を行った例はないようです。また、2007年事務年度において、刑事告発を行った例は、開示書類の虚偽記載が2件、風説の流布・偽計取引が2件、相場操縦・安定操作が4件、インサイダー取引が2件となっています。 以上から、法執行の面から見た課徴金の特徴について、次のことがいえるでしょう。 第1に、継続開示書類の虚偽記載について、多くの課徴金納付事例が生じています。その多くは、決算内容が良好であると見せかける粉飾決算です。課徴金制度が導入されるまでは、粉飾決算が刑事訴追される例はほとんどなく、しかも、刑事訴追されるのは、発行者が倒産した後でした。これは、発行者が倒産していないのに粉飾決算を理由として刑事訴追を行うと、発行者を上場廃止に追い込むこととなり、かえって株主に不利益を及ぼすことが懸念されたためでしょう。これに対して、刑事訴追をせず課徴金納付命令で済ませることができるようになった結果、上場廃止となることを気にせずに、比較的軽微な会計不正事件についても、証券取引等監視委員会が課徴金納付命令の勧告をすることができるようになったといえます。 第2に、監視委員会による勧告があってから課徴金納付命令の決定までの期間が20日前後と、きわめて短いのです。これは、多くの事例において、審判手続開始決定の後、直ちに違反者が違反行為の事実を認めるために、実際には、審判が開かれないからです。 第3に、証券取引等監視委員会において、比較的軽微な違反については課徴金納付命令を勧告し、重大な違反行為は刑事告発を行うという事件の振り分けが行われているようであり、課徴金と罰金との併科が、実際上、問題となった例はありません。したがって、2重処罰の禁止に違反するかどうかを争う事例も生じていません。 第4として、風説の流布・偽計取引、相場操縦についての課徴金事例が、依然として存在しません。これらの違反行為の悪性が強いときは、刑事訴追をすべきであるし、それは現に行われています。それに対して、たとえば、インターネットの掲示板に発行者に関する不確かな噂を書き込む行為は、風説の流布に該当するわけですが、罰則をもって取り締まるほど悪性の強い行為とも思われないません。そうした比較的軽微な不公正取引に対しては、課徴金によって違反を抑止すべきだと思われ、実際に適用事例が出てきていないことは、問題に感じています。
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