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フジテレビがライブドアに有価証券届出書の虚偽記載に基づく損害賠償を求めていた事件が和解で終了しました。裁判所の示した和解案が請求額の9割を認めるものであったことから、フジ側の実質的勝訴といえると思います。 この事件は、証券取引法(現金融商品取引法)18条・19条に基づく請求がなされたものであり、裁判例の全くない同条の解釈を裁判所が示す機会が失われたことは、研究者としては残念です。和解で終了した事件なので、コメントは避け、以下では本件の請求の基礎となった18条・19条について考えてみましょう。 金融商品取引法18条は、有価証券届出書に重要な虚偽記載等があったときは、届出者(発行者)は募集・売出しに応じて有価証券を取得した者(悪意の者を除く)に対して損害賠償責任を負うとします。主観的要件が定められていないので、この責任は無過失責任です。そして19条1項は、18条による損害賠償額を、取得価格と、損害賠償請求時の市場価格(現在保有している場合)または処分価格(請求前に処分した場合)との差額と定めています。これは損害額を推定する規定ではなく、法定するものです。したがって、18条の請求をする以上、法定額を超える損害の賠償を求めることはできません(不法行為に基づく請求のときは、できるでしょう)。ただし、19条2項は、損害の一部が虚偽記載等により生ずべき有価証券の値下がり以外の事情によって証明した場合には、賠償額が減額される旨を定めています。 19条1項の損害賠償額の算定方法を見ると、この条文が有価証券を発行市場で取得した投資者を発行前の地位に戻すことを意図していることが分かるでしょう。つまり19条の損害賠償責任は、契約を取り消して当事者を契約前の地位に戻すのと同じ効果が得られるような損害賠償を与えることを目的としていると考えられます。そのような原状回復的な損害賠償が認められる理由は、有価証券の発行過程では、有価証券届出書の記載が投資判断にとって極めて重要であり、投資者は有価証券届出書の記載が真実であると信頼して発行者と取引関係に入る点に求めることができます。つまり、虚偽記載によって投資者が取引に誘い込まれたと定型的に認められるのです(だまされて買ったというわけです)。また、有価証券の発行過程では、発行者と投資者とは直接の取引関係に立つので、取引を巻き戻しても発行者に酷にならないという理由を付け加えることもできるでしょう。つまり、発行者はだまし取った物を返すだけなので、無理を強いることにはならないということです。 このように考えると、19条2項が減額の抗弁を認めているのは、おかしいことになります。虚偽記載以外の原因による損害を賠償の範囲から除外することを認めてしまうと、損害賠償を与えても投資者を虚偽記載前の状態に戻すことができないからです。ですから、私自身は、立法論として、19条2項は削除すべきだと考えています。しかし、19条2項があるから19条1項は原状回復的な損害賠償を定めたものでないということもできません。私は、19条2項を削除しなくても、19条2項を1項の趣旨と整合的に解釈し妥当な結論を導くことができると考えていますが、その解釈はここでは明かせません(いつかどこかに書きます)。
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ディスクロージャー



