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書庫ディスクロージャー

有価証券届出書の虚偽記載に基づく責任については、筑波大学の弥永教授が斬新な論文を公表されています(商事法務1804号)。本格的な反論はいつか論文でするとして、ここでは失礼に当たらない範囲で紹介し、コメントしたいと思います。

弥永教授の論旨は、1.金商法18条1項の責任について、発行者による因果関係の不存在の主張・立証が許されるのではないか、2.18条1項の責任について、過失相殺が認められるのではないか、3.第三者割当増資、とりわけ総額引受けをした者との関係では、18条1項の適用がないと解する余地があるのではないか、ということです。

1については、許される・許されない、いずれの解釈も可能と思います。虚偽記載の基づく責任の局面では、因果関係が2つの分解されることに注意が必要です。一つは、虚偽記載と原告の取引(有価証券の取得)との間の因果関係、もう一つは、原告の取引と原告の損害との間の因果関係です。前者を取引因果関係、後者を損失因果関係と呼ぶことがあります。

さて、因果関係不存在の主張・立証が許されないと解する論拠としては、次の2点を挙げることができるでしょう。第一に、損害因果関係については、すでに19条2項に立証責任を転換する規定が置かれているので、これと異なる解釈をする余地は少ないこと(ただし、立法論としては19条2項はおかしいと私は思っています)。第二に、18条1項但書は、虚偽記載を知っていた投資者は損害賠償を請求できない旨を規定しています。これは、虚偽記載を知って有価証券を取得した者については取引因果関係がないことを理由に請求を認めない趣旨の規定でしょう。そうだとすると法は、悪意者以外の者については取引因果関係の反証を認めないと態度をとっていると言えます。

2についても、両様の解釈が可能であると思います。ただし、虚偽記載は故意でなされているのに、それに気付かなかった投資者の過失を理由に過失相殺を認めることが、公平の観念にそぐうものか、疑問も生じるところです。

3について、弥永教授はまず元引受証券会社を例に挙げ、元引受証券会社が発行者に18条1項の責任を追及できるのはおかしいのではないかとされ、次いで、第三者割当増資についても同じことがいえるとされています。たしかに、元引受証券会社は、投資者に対して金商法21条1項に基づいて虚偽記載の責任を負う立場なので、元引受証券会社が投資家として保護の対象となるか、疑わしいのも確かです。

しかし、元引受証券会社が、一方で、発行者がした虚偽記載について投資家に対して過失責任を負い、他方で、責任を負うことによる損害を、発行者に対する損害賠償請求により回復すると考えれば、元引受証券会社が金商法18条1項の「当該有価証券を当該募集又は売出しに応じて取得した者」に該当すると考えることが、それほど奇妙なこととも思われません。発行者に対する責任追及は功を奏しないことも多いので、元引受証券会社に損害賠償請求権を付与することによって、厳格な引受審査を行うインセンティブを失わせることになるとも思えません。

また、元引受証券会社と第三割当先との異同を考えると、仮に元引受証券会社が18条1項の保護範囲に入らないとしても、転売先の投資家に対して責任を負わない第三者割当先をこれと同列に論じることはできないのではないでしょうか。
くろぬま
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