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書庫その他

研究報告の方法(1)

新しい法律(条文)について研究者が報告する場合、やり方はいろいろあると思うが、制度の趣旨や条文の解釈論を明らかにするのが研究会の目的である場合のやり方について、自分の考えるところを述べてみたい。

まず、自分が調べたことを並べるだけでは「研究報告」にはならない。

次に、審議会の報告書や立案担当者の解説から入るか、条文から入るかだが、報告書や解説を読むことは当然として、報告では、改正の経緯は簡単に触れたうえで、条文から入るのが、自分の勉強にもなるし、研究会としても有意義だと思う。

たとえば、四半期報告書を任意に提出した会社は、継続して四半期報告書を提出しなければならないと考えられると立案担当者の解説に書いてある。法律家ならここでえって思わなければならない。任意に提出すると義務になるってどういうこと? 1回目を任意に提出し2回目を提出しないと不提出で罰せられるのか?と。こういう疑問が生じれば、「任意提出の規定が置かれているのは何故か」を考えるに至るけれど、そもそも疑問が浮かばないときもあろう。条文から入るならば、「有価証券報告書を提出しなければならない会社であって、上場会社等以外の会社は、四半期報告書を任意に提出することができる」と書いてあるから、まず、任意提出を認める意味がどこにあるかを考えなければならないと思うはずである(思わないならば、研究を報告する意味がない)。

たとえば、英文開示はセカンダリーには認めるがプライマリーには認めないべきであると報告書に書いてある。しかし、それを説明しただけでは条文の説明にはならない。報告書どおりに立法されているとは限らないからだ。そこで、24条8項を見ると、「外国において開示が行われている有価証券報告書等に類する書類であって英語で記載されたもの」を外国会社報告書と言っている。「有価証券報告書等に類する書類であって英語で記載されたもの」であっても「外国において開示が行われてい」なければ外国報告書にはならないのだ。ここにセカンダリーに限るとの趣旨が表現されている。そのことを示して初めて、条文を理解したことになるし、自分の研究が進んだことにもなるのだろう。

それでは、たとえば、フランスで開示が行われている会社の書類をフランス語から英語に訳して外国会社報告書にすることができるだろうか。この問いに答えるためにまず見るべきものは、審議会の報告書や立案担当者の解説ではなく、条文だ。上に書いたように、「外国において開示が行われている有価証券報告書等に類する書類であって英語で記載されたもの」が外国会社報告書であるから、法文は、外国において英語で開示が行われていることを求めているように読める。もっとも、そうでない文理解釈もありそうである。果たして、どちらの解釈が良いかは、立法資料などに照らして報告者が自ら考えるべきことだ。

いずれにせよ、審議会の報告書や立案担当者の解説だけからは、上記(フランスで・・)の問いは出てこない。条文をじっくり眺めることによって出てくるのである。司法試験受験生に事例から論点を拾う訓練が求められているように、研究者には条文から論点を拾う訓練が求められている。

  • 顔アイコン

    前回のコメントよりご無沙汰しております。
    曲がりなりにも研究者を志すものとして心しておかなければならない点であり耳が痛くもあります。
    以前、ある先生に、修士の学生に求められているのはある研究テーマについての手前勝手な論などでは毛頭無く、良く調べ上げたね、というその研究した中身である、と言われたことがあります。
    その先生のご意見も研究の場におけるある種の「常識」なのだろうとも思います。そこでこれまでは、あまり法的論争に深入りすることなく、法制度や政策上の背景の紹介に力を注いできました。
    しかしながら、博士号の取得を目指そうという段になれば、それだけではだめで、より具体的な論点の提示と結論に至る過程の明示が求められるのであろう、と考えております。
    一方、社会人研究者に求められているのは、実務と理論研究の橋渡しなのかとも思います。いまさら学者先生と同じグラウンドを走ることなど誰も期待していないであろう、とも思うのです。
    そんなこんなで方向性に悩む時もあります(まあ、悩んだらとりあえず何か書いてみることにしていますが。)。

    [ ok3403 ]

    2009/4/19(日) 午後 10:30

  • 上の記事は、方法論にかこつけて、ある研究会における報告に注文を付けたものでした。
    それはさておき、博士論文においては、自分の結論を論理と実証によって根拠づける作業が必要になりますが、それができれば、元来、外国法を調べることは必須ではありません。しかし、外国法との比較から何かを引き出す作業は、依然として、アメリカ以外の世界各国の博士論文で行われていると思います。比較法をする場合には、調べたことを自分の主張にいかに結びつけるかという構成力が問われます。構成力をつける近道はありません。まずは(社会人には時間がないでしょうが)、他人の博士論文や助手論文を数多く読むことではないかと、個人的には思っています。

    [ くろぬま ]

    2009/4/19(日) 午後 11:35

  • 顔アイコン

    この場でご指導いただき深謝致します。
    こんな時間に家に帰るような生活で、確かになかなか時間は取れないのですが、自分のことでもあるので、やれることをやっていこうと思っています。

    [ ok3403 ]

    2009/4/22(水) 午前 0:12

くろぬま
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