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モリテックス事件で私が気になっていることは、役員選任議題の議案は何かということです。 この点について判決は、本件において,原告ら及び被告の双方から、「取締役8名選任の件」及び「監査役3名選任の件」という議題によって各候補者の提案がされたこと,被告の定款上,本件株主総会において選任できる取締役の員数は最大で8名、監査役の員数は最大で3名となることから、本件の株主提案と本件会社提案とはそれぞれ別個の議題を構成するものではなく、「取締役8名選任の件」及び「監査役3名選任の件」というそれぞれ一つの議題について、双方から提案された候補者の数だけ議案が存在すると解するのが相当であるとしています。 この判示は、会社提案と株主提案は別個の議題だとする被告の主張を退けるために示されたものですが、候補者の数だけ議案があるとした点が注目されます。 書面投票における議決権行使書には各議案の賛否の欄を設けなければなりませんが、2以上の役員等の選任に関する議案については、候補者ごとに賛否の欄を設けなければならないとされています(会則66条)。実務では、会社提案についての賛否を一括して聞いた上で、個別に賛否を特記できるようにしているようです。結論は候補者ごとの投票で良いのですが、省令がわざわざ候補者ごとと断っているのは、議案ごとだと候補者ごとにならないことを前提としているようにも読めます。そこで、議案の数は会社提案と株主提案の2つしかないとする見解も、なおあるようです。 これに対し、委任状勧誘規則では、委任状用紙には議案ごとに賛否の欄を記載しなければならないと定めているだけです(府令43条)。そこで、候補者の数だけ議案があるのであれば、候補者ごとに賛否の欄を設けなければならないことになりそうです。ところが、本件では、株主提案について一括して賛否を指示する様式がとられているため、判旨が正しければ委任状勧誘規制違反ではないかと思われるのですが、この点は争点とされていません。 書面投票では候補者ごとに賛否を記載し、委任状では一括して賛否を記載するという扱いは正当化できるでしょうか。書面投票は総会における議決権の行使機会を確保するための手段であるから、候補者の一部に賛成の株主も投票できるように候補者ごとに賛否の欄を設ける必要があるのに対し、委任状は議決権の代理行使のための手段であり、株主に等しく代理行使の機会を与える必要はないから、候補者の一部に不満の株主は代理権を与えなければよいのであって、候補者ごとに賛否の欄を設ける必要はないということができるでしょうか。もしそう言えるのであれば、委任状には賛成の欄しか設けなくとも良いことになりそうですね。 なかなか難しい問題です。
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委任状勧誘



