|
株券等の買付け等を公開買付けの手続きによらなければならない基本類型は、市場外で多数の者からの取得により5%を超える場合と、著しく少数の者からの取得により3分の1を超える場合です。著しく少数の者とは60日間で10人以下を、「多数の者からの取得」とは「著しく少数の者からの取得以外の取得」を意味しています。 多数の者からの買付けに公開買付けを強制するのは、勧誘対象者を保護するためです。それに対し、著しく少数の者からの買付けに公開買付けを強制するのは、勧誘の対象となっていない者を保護するためです。この話は前にしました。 後者を一般に、強制的公開買付制度とか、公開買付けの強制と呼んでいますが、これが平成2年改正で入った経緯は必ずしも明らかでありません。審議会の最後に突然出てきたと仄聞しています。強制的公開買付けの目的は、私は支配権プレミアムの公平な分配と理解していますが、金融庁は公式にはそう説明したことがなく、支配権が移動する際に一般株主に売却の機会を与えることがその目的だと説明しているそうです。しかし、売却の機会を与えるだけなら買付者に売る必要はないはずで、市場で売れれば十分なのではないでしょうか。支配権の移動の判断基準として3分の1を採用したのは、議決権の3分の1超を保有する株主は株主総会の特別決議の成立を阻止することができ、会社の運営に大きな影響力を行使できるからでしょう。株式所有が分散している会社では、議決権の3分の1を保有すれば、事実上会社を支配できるといわれています。 3分の1は、対象会社の総議決権の数に対する買付者とその特別関係者の有する株券等の議決権の割合により計算します。権利行使期間が未到来の新株予約権証券・新株予約権付社債についても議決権があるものとして3分の1の算定の基礎に含めることになっています。 私はかつて、強制的公開買付け制度の廃止論を唱えたことがあります(商事法務1641号55頁(2002年))。その要点は、市場外の相対取引に公開買付けを強制すると、企業価値を高めるような株式の取引が過度に抑制されるというものです。反対説は、支配株主による少数株主の抑圧を阻止するためにプレミアムの分配が必要だと主張しています。それは会社法の問題でしょというのが私の反論ですが、それでは反論になっていないとの指摘もあります。よく、日本では少数株主に対する支配株主の忠実義務が認められていないから、少数株主の保護が図れないという人がいますが、それなら解釈論として支配株主の忠実義務を唱えればよいのではないでしょうか。会社法でできないことを金商法に押しつけるのは迷惑です。法が二つの目的を持つと、論理一貫しないものになってしまいます。この論争はアメリカの議論の借り物と言ってしまえばそれまでですが、EUとアメリカとで法制が分かれている点でもあり、現在でも政策問題として残っていると考えています。ただ、その後、時代の風はEU型に向かって吹いているようです。
|
公開買付け



