ここから本文です

書庫公開買付け

(前回のつづき)
2段階公開買付けが強圧性を持ち得るのは、第2段階で安い価格で追い出されると株主が予想するからです。そのような予想が成り立たなければ、強圧性を生じません。

この点で気になるのは、まず会社法上の株式買取請求権でしょう。第2段階の組織再編行為に反対する株主には株式を公正な価格で買い取ってもらう権利があります。最近の裁判所は、公開買付けの強圧性をよく理解していて(しかも、かなり広く捉えている)、公開買付けが強圧性を持ちえないように公正な価格を決定しているようです。前回の例でいうと、第2段階は60円で追い出すと公言していても、公正な価格は100円以上とされる可能性が高いでしょう。そうだとすると、買取請求を判断する裁判所がしっかりしていれば、典型的な二段階公開買付けでさえ強圧性を持ちえないことになるわけです。

公正な価格で買い取ってもらえるのはよいとしても、株主の協調行動によって買収を阻止できないのが困るという人がいるかも知れません。この点については、組織再編行為の決議取消訴訟や無効の訴えによって阻止することが可能です。第2段階では60円で現金交付合併が行われるとすると、この合併比率は不公正であり、そのような比率を多数派株主が押し付けたことは議決権の濫用であると解されるところから、合併承認決議には取消しの瑕疵があると考えられます(異論もあるでしょうが)。決議に取消の瑕疵があることは合併の効力発生後は無効原因になると考えられますから、不満のある株主は無効の訴えを提起できることになるでしょう。そして、後に効力が否定されるような合併は、強行すれば手続きのやり直しという回復できない損害が会社に生じることから、合併承認議案の提出という取締役の行為を株主が差し止めることもできるのではないでしょうか。日本の会社法はかなり良く出来ていて、株主が協調行動をとれなくても、不公正な行為を阻止できるのです。そして、このように強圧的な公開買付けを阻止できる手段があるのであれば、強圧性に対して特別の規制を及ぼす必要はないと言えるかも知れません。

上の二つの手段では、第1段階の公開買付けを止めることができません。そこで、第3に、第2段階の対価を低く設定する部分的買付けの提案は、それ自体、不正の手段・計画・技巧として金商法157条違反と解することはできないでしょうか。アメリカでは、虚偽の開示を伴わない不公正取引はrule10b-5違反にならないというのが判例ですが、日本でアメリカと同じに解釈する必要はありません。そして157条違反の行為については、192条の緊急差止命令が使えます。対象会社や対象会社株主に157条違反行為の差止権を与えるには立法が必要でしょう。現状では、告発をして監視委員会を動かすということになるでしょうか。

このように日本法では公開買付けの強圧性を減じる手段がかなり整備されています。このようにいうと、大部分の株主には買取請求権を行使できることを知らないとか、無効の訴えや差止めを求めるインセンティブがないとか、仮に訴訟を提起しても裁判所が誤るリスクがあるから、強圧性は排除されないという反論が聞こえてきそうです。たしかにそうですが、強圧性はその可能性があれば必ず法的手当てをすべきものとは言えず、蓋然性を見極める必要があるというのが、現時点での私の考えです(つづく)。
 
くろぬま
くろぬま
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

最新のコメント最新のコメント

すべて表示

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

本文はここまでですこのページの先頭へ

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト≪さとふる≫
実質2000円で好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!

その他のキャンペーン

みんなの更新記事