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明けましておめでとうございます。 今年も、月4回の更新を目標に、それに追いつかれないように、自分の勉強を進めたいと思います。 【判旨】(つづき)(要約しています。強調筆者) 被告の重過失について。 被告(東証)は、売買システムの運用テストにおいて、取消注文が正しく処理されないという事象を発見し、富士通がこれについての修正を行ったところ、その際、本件不具合が作り込まれた。この修正について回帰テストを行うべきは富士通であるが、被告は回帰テストの確認を怠った。回帰テストの確認を怠ったことだけでは重大な過失があるとまではいえないにせよ、被告は、認知できた不具合件数の推移からの推論によって、その提供判断を行って本件売り注文のような注文に関しては取消注文が奏功しない売買システムを取引参加者に提供した上、被告の従業員としては、その株数の大きさや約定状況を認識し、それらが市場に及ぼす影響の重大さを容易に予見することができたはずであるのに、この点についての実質的かつ具体的な検討を欠き、これを漫然と看過するという著しい注意欠如の状態にあって売買停止措置を取ることを怠ったのであるから、被告には人的な対応面を含めた全体としての市場システムの提供について、注意義務違反があったものであり、このような欠如の状態には、もとより故意があったというものではないが、これにほとんど近いものといわざるを得ないものである。 【解説】 この部分の理解は難しいです。判決によれば、被告には売買システムの検収時に任務懈怠があったが、これは重過失とは言えない。また、前回、紹介したように、約定株式数が発行済み株式数の3倍を超えた時点で、売買停止をしなかったことに任務懈怠があった。判決は、この2つを合わせて、人的な対応面を含めた全体としての市場システムの提供について、重過失による注意義務違反があったと認定しているようなのです。合わせて一本的な認定ですね。私がよく理解できないのは、一つ目の太字部分です。ここは客観的な事実を述べているのか、検出される不具合件数が収束に近づいたとの判断に基づいてシステムを提供したことが重過失を構成する要素であると言っているのかが、良く分からないのです。 それでは富士通の修正ミスはどうなんだと思われるかも知れません。この点について判決は、市場システムを提供する義務との関係では、富士通は、かかるシステム提供の前提行為の一部を請け負ったに過ぎないから被告の履行補助者に当たらないと解されるものであって、重過失を根拠付ける事実となり得るのは、市場システムの提供者としての被告の売買システムの発注者としての役割及び本件売り注文当日の行動であると判示しました。原告の履行補助者論を退け、富士通の過失の有無は問題にならないとしたのです。本件でもし東証に重過失がなく責任が認められなかったとすれば、みずほ証券は富士通の不法行為責任を追及できるということでしょうか。400億円中請求が認められなかった約300億円については、不法行為責任を追及できるのでしょうか。
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金融商品取引所







くろぬま先生
このブログを通じて,勉強させて頂いている者です。
この記事の判旨について質問させて下さい。
ここでは,「被告の従業員としては、その株数の大きさや約定状況を認識し、それらが市場に及ぼす影響の重大さを容易に予見することができたはずであるのに、この点についての実質的かつ具体的な検討を欠き、これを漫然と看過するという著しい注意欠如の状態にあって売買停止措置を取ることを怠ったのであるから、被告には人的な対応面を含めた全体としての市場システムの提供について、注意義務違反があった」とあり,
被告の従業員の過失から,被告の過失を導いています。
現在,民法上,履行補助者の過失の問題について,履行補助者を含めた人的設備を適切に構築する会社固有の自己責任としての義務と,履行補助者という他人の責任ついて代位した義務を債権者との間において責任を負わないといけない場面があると思います。
今回のケースでは,上記判旨部分はどのように分析すればよいのでしょうか?
[ T ]
2010/1/18(月) 午前 9:18
民法の議論を把握していないのですが、履行補助者が債務者とは別の主体である場合の議論ではないでしょうか。本件を無理やり上の議論に当てはめるとすれば、従業員の行為に関する限り、判決は、債務者が履行補助者の責任に代位して責任を負うとは考えていないので、その意味では前者の考えに立っていると思います。もっとも、法人の従業員は、法人の手足となって債務の履行に当たるわけですから、従業員の過失から法人の過失を導いているのは当然のようにも思いますね。
[ くろぬま ]
2010/1/18(月) 午後 11:43
先日質問をさせて頂いた者です。ありがとうございました。
従業員は会社の手足でありますが,会社との間の雇用契約存在するのみで,従業員は,みずほ証券とは契約関係はないという点を出発点にいなければならないと考えていました。
今回の事件では,先生のご指摘の通り,東証自体の固有の物的・人的設備の構築義務違反であるとも考えられますが,この場合の注意義務違反は,会社の代表者の主観を基準にしなければならないのだと考えていました。従業員の主観を問題にするのであれば,従業員に右物的・人的構築の代理権が付与されていなければ,判例のように,従業員の過失から直ちに,法人の過失を結びつけることは不可能ではないかと疑問を持っています。代位責任構成であれば,東証は,みずほ証券との間において,自己の従業員が適切に行動するという結果実現保障をしていると考え,従業員によるシステムの不都合に気がついたにもかかわらず上司に報告するという適切な行動をとらなかったということを捉えて,東証は,みずほ証券に負担した結果実現保証に違反したと構成することもできるのではないかと考えていました。
[ T ]
2010/1/20(水) 午前 9:02
ご指摘のうち最後の点は、そのような理解も可能であると思います。ただし、それを代位責任構成と呼ぶかどうかはよく分かりません。それ以外の点については、たしかに従業員にはみずほ証券との契約関係はありませんが、従業員が(取締役の指揮・監督の下で)会社の業務を執行するためには代理権を必要としませんから、従業員を履行補助者というまでもなく、従業員の過失(注意義務違反のある行為と言い換えた方がよいのかも知れません)を会社の過失と評価できると考えていました。
[ くろぬま ]
2010/1/20(水) 午前 11:11