ここから本文です

書庫その他

ゴールドマン事件の続きを書こうと思ったのですが、資料を研究室に忘れてきてしまったので、別の話を書きます。
 
消費者契約法4条2項は、事業者が、消費者の利益となる旨を告げ、かつ不利益となる事実を故意に告げなかったことにより、消費者が当該事実が存在しないと誤認した場合に、消費者が意思表示を取り消すことができる旨を定めています(不利益事実の不告知)。
 
商品先物取引の勧誘について、不利益事実の不告知を理由とする委託契約の取消しを認めた裁判例(札幌高判平成20・1・25金融商事判例1285号44頁)があり、私は判旨を批判する評釈を書きました(金融商事判例1324号7頁)。その上告審判決が、今年の3月30日に出ていました(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100330150046.pdf 金融商事判例5月15日号にも出ています)。結論は、委託契約の取消しを認めず、事件を原審に差戻しています。
 
高裁判決は次のように言います(これだけでは理解しにくかったら消費者契約法4条に当たってください)。
 
金の相場、すなわち将来における価格の上下は、消費者契約たる本件取引の「目的となるものの質」(消費者契約法4条4項1号)であり、かつ、消費者たる顧客が当該契約を「締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」(同項柱書)であるから、消費者契約法4条2項の重要事項というべきである。したがって、商品先物取引業者の外務員が顧客に対して、現在の価格状況等を根拠に金の相場が上昇するとの自己判断を告げて買注文を勧めることは、消費者契約の締結について勧誘するに際して、「重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨告げ」ることに該当する。そして、その場合、将来の金相場の暴落の可能性を示す事実は、買注文出す顧客にとって売買差損を生じさせるおそれのあることを示す事実であるから、「当該消費者の不利益となる事実」に該当する。そして、金相場上昇に関する外務員の上記告知は、それを告げることによって、顧客が金相場の暴落の可能性を示す事実は存在しないと考えるのが通常であるから、上記不利益事実は、「当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきもの」に該当する。
 
これに対し、私は大要次のように考えました。
 
①断定的判断の提供に基づく意思表示の取消しを認める4条1項2号が投資対象の将来の相場を、「消費者契約の目的となるもの」の「将来における価額」と表現しているところからすれば、将来における価額は「消費者契約の目的となるもの」の「質」や「その他の内容」に当たらないのではないか。
 
②「利益となる旨」とは消費者契約の目的の内容のうち消費者にとって確実に利益となる事項を意味し、将来の相場のように不確実な事項についての断定や予想を含まないのではないか。
 
③現在の価格状況等を根拠に金の相場が上昇するとの自己判断を告げられても、それによって顧客が金相場の暴落の可能性を示す事実は存在しないとは、通常考えないのではないか。
 
つまり、商品相場の将来における価額は消費者契約法4条4項の重要事項に当たらず、相場の上昇は同条2項の「利益となる旨」に当たらないと解される余地があり、仮に両者の該当性を肯定するとしても、相場の暴落の可能性を示す事実は同項の「不利益となる事実」に当たらないと解されるため、消費者契約法4条2項に基づく意思表示の取消しはできない。
 
この後、なぜそう考えるべきかという政策的考慮(実質論)を展開しているのですが、その部分は省略します。
 
最高裁は次のように論じています。
 
消費者契約法4条2項本文にいう「重要事項」とは、同条4項において、当該消費者契約の目的となるものの「質、用途その他の内容」又は「対価その他の取引条件」をいうものと定義されているのであって、同条1項2号では断定的判断の提供の対象となる事項につき「将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項」と明示されているのとは異なり、同条2項、4項では商品先物取引の委託契約に係る当該商品の価格など将来における変動が不確実な事項を含意するような文言は用いられていない。そうすると、本件契約において、将来における金の価格は「重要事項」に当たらないと解するのが相当であって、上告人が、被上告人に対し、将来における金の価格が暴落する可能性を示す前記2(6)のような事実を告げなかったからといって、同条2項本文により本件契約の申込みの意思表示を取り消すことはできないというべきである。
 
つまり、最高裁は①と同じ理屈によって「不利益事実の不告知」条項の適用を否定した訳ですね。まあ、文理解釈ですが、自分と同じ結論が出たことで、ちょっとほっとしました。私はこの訴訟とは関係がありませんし、立場でモノを言う人間ではありませんが、業者の責任を認めた判決を批判する評釈を公表すると「業者よりだ」と批判されるだろうなあと、少々弱気になっていたのでした。
くろぬま
くろぬま
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

最新のコメント最新のコメント

すべて表示

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

本文はここまでですこのページの先頭へ

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト≪さとふる≫
実質2000円で好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!

その他のキャンペーン

みんなの更新記事