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書庫法執行

ゴールドマン・サックス(GS)は、2009年9月に2回、SECに対して上申書を提出しています。これはSECに提訴しないよう求めるもので、Wells submissionと呼ばれているもののようです(拙著・アメリカ証券取引法〔第2版〕227頁)。この上申書は、ウォール・ストリート・ジャーナルの記者が情報公開法に基づいて公開を獲得したもので、下記で公開されています。http://blogs.wsj.com/deals/2010/04/19/read-goldmans-rebuttal-to-secs-wells-notice/tab/article/ 私は、日経の記者さんから取材の折りにもらいました。以下、上申書の重要部分を抜書きしてみたいと思います。
 
【本件取引の仕組みについて】
ABACUS取引は、CDOの法主体が特定のポートフォリオを参照するノート(債務証書、投資家から見ると債券)を発行する合成CDOである。ノートの売得金は担保証券の購入に当てられ、担保証券はSPV(special purpose vehicle)が保有する。同時に、SPVは、参照証券の評価が下落した場合に「プロテクションの買主」に「保険金」の支払いを約束し、その対価として定期的に保険料の支払いを受けるというCDS取引(クレジット・デフォルト・スワップ取引)を行う。保険料は担保証券の利息とともにノート保有者に対する支払いに用いられる。担保証券自体は、参照ポートフォリオのパフォーマンスに応じて、ノート保有者に対する元本の償還か、CDSに従いプロテクションの買主に対する支払いに用いられる。最初のABACUS取引であるABACUS2004-1は、AAA,AA,A格付けのCDOノート(ハイグレードの資産担保証券のポートフォリオを参照する)への投資を希望するIKBの求めに応じて組成された。
 
ABACUS2007-AC1(以下、2007-AC1)は、2006年及び2007年初に発行された90銘柄のBaa2格のサブプライムRMBS(住宅用抵当担保証券)から成る2億ドルのポートフォリオを参照する合成CDO取引である。ABACUS2007-AC1取引の証券は、規則144Aに従い私募で発行された。
 
【取引の経緯】
2006年暮、Paulsonは、GSに対し、2006年発行のBaa2格のRMBSのポートフォリオに対するプロテクションをPaulsonが購入するCDS取引を持ちかけた(これを、reverse inquiryと呼んでいます。顧客から証券の組成を持ちかけていることから逆照会と呼んでいるものと思われます)。このCDS取引の市場リスクを軽減するためにGSは、2つの取引を構成することにした。
 
第1の取引では、GSが2007-AC1SPVを作り、SPVがノートを発行し、GSとの間でGSがクレジット・プロテクションを購入するCDS取引を行う。参照ポートフォリオを構成する証券が少なくとも悪くならないと考える投資家がSPV発行のノートを購入し、GSはプロテクション買主として証券のパフォーマンスが悪くなると考えている。第2の取引では、GSはPaulsonとCDSを行う。Paulsonが求めたCDSのポートフォリオが2007-AC1の参照ポートフォリオと一致する限りにおいて、GSは効果的に市場リスクを中和することができる。
 
(このあと、ポートフォリオ選定の状況、IKB(投資家)への販売の状況が述べられていますが、省略します)
 
【GSの主張】
1.ABACUSの募集文書には重要な不実記載はなかった。
A.募集文書は参照ポートフォリオに関する重要事実を完全に開示していた。
参照ポートフォリオがどのように選定されたにせよ、募集文書は個々の資産担保証券を詳細に記載していた。選定過程に関する情報は、参照ポートフォリオの本質的価値やリスクに影響を与えるものではない。資産担保証券の詳細な開示を定めるレギュレーションABは、証券の基礎となる資産に関する引受人(またはその顧客)の主観的な見方や、証券選定に関与した(had input into)全ての者のリストを開示するよう要求していない。ポートフォリオの本質的な性質(intrinsic character)に焦点を当てることは、ハード・インフォメーションとソフト・インフォメーションを区別する裁判所の立場と整合的である。投資家に対して開示しなければならないのは、ハード・インフォメーションのみである。募集文書は、RMBSを発行する信託が負担するローンの詳細を含め、レギュレーションABで求められている情報を詳細に開示していた。求められるのはそれだけである。
 
募集文書で開示されていた情報があれば、投資家ーとくにRule144Aの私募の文脈で問題となるような洗練された投資家は、参照証券を理解し評価するのに必要な情報をすべて手に入れることができる。ちょうど、消費者がお店の品揃えを、それがどうやって選択されたかに拘らず、評価することが出来るように。他の店に行けば他のブランドが置いてあることなど分かっているのである。
 
B.2007-AC1の洗練された投資家は、ポートフォリオの情報に基づいて取引の評価をすることができた。
本件取引の投資家は参照ポートフォリオを評価する能力を十分有しており、彼らの分析は証券がどうやって選定されたかに依存しない。ACAは、著名な担保管理者でありCDOの洗練された投資家でもある。IKBは世界でもっとも洗練されたCDO投資家の一人であると自称している。だからこそ、いずれも144Aの適格機関購入者なのである。
 
C.仮に投資家がACAの参加が重要だと考えていたとしても、ACAの役割は正確に記載されている。
SECは、ACAをポートフォリオ選定代理人と記載したことが、Paulsonの役割を記載しなかった点で誤解を生じるものであったと見ているようである。しかし、「ポートフォリオ選定代理人」という記載から、当該代理人が他者からのインプットなしにポートフォリオを選択したと考える投資家はいない。募集回状(Offering Circular)には、ACAがポートフォリオの選定について他の者と相談しないだろうなどとは書いておらず、CDO取引において取引参加者が参照資産の選定過程で意見を述べることは普通に行われている。重要なのは、ACAがその専門的能力及びモデルを用いて参照証券を審査・承認し、それにより高額の報酬を得ていることである。
 
(つづく)
くろぬま
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