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書庫法執行

【GSの主張】
Ⅰ.ABACUSの募集文書には重要な不実記載はなかった。(つづき)
D.Paulsonの経済的利害は投資者にとって重要でない。
SECスタッフの理論は、Paulsonの役割がACAにとっても投資者にとっても重要だったはずだというものである。しかし、第1に、Paulsonは2007年4月の時点では著名でなかった。ACAがPaulsonを知らなかったという事実は、Paulsonの関与が重要でないことを示す。IKBがPaulsonを知っていたとか、その関与を知っていたら投資決定を変更していたであろうことを示す証拠はない。
 
第2に、2007-AC1のような合成CDOのストラクチャーを前提とすると、参照資産に対して誰かが必然的に反対のポジションを取るであろうことを、投資家は理解している。募集文書は、GSがプロテクションの買主であり、プロテクションの買主は参照資産についてロングのポジションもショートのポジションも取ることができると記載している。GS・Paulson間のCDSは、業界において一般的なリスク軽減措置であり、開示が必要なものではなかった。
 
同様に、ACAがPaulsonがエクイティ投資をしていたと思っていたかも知れないことも、重要でない。まず、エクイティ保有者の利害がACAやノート保有者の利害と一致するとは限らない。エクイティ保有者は、エクイティ・エクスポージャーを相殺し、あるいはそれを超えるロングまたはショートのポジションを取る事もできるからである。もし、Paulsonの利害が重要であるというのなら、ACAはそのことをPaulsonに尋ねることができた。ACAは、123の証券からなるPaulsonのリストを点検し、半分以上を却下し、自ら31銘柄を加えて、90銘柄を選定したのである。
 
E.投資家の損失は市場全体の崩壊のせいであって、主張されているようなGSの不実表示のせいではない。
投資家の損失はサブプライム市場の崩壊によるものであり、本件取引やその開示に独特のものではない。GSが市場全体の下落による損失の責めを負ういわれはない。2006・2007年度のBaa2格のサブプライムRMBSはほとんど全て大規模な損失を受けているのであり、ACAがPaulsonの関与なく提案した最初のポートフォリオも同様に下落した。ACAとIKBが損失を被ったのは、ポートフォリオの選択にPaulsonが関与したからではない。
 
Ⅱ.GSに過失があったという証拠はなく、ましてやrule10b-5の要件である欺もうの意図(scienter)はなかった。
A.GSはポートフォリオ選定過程へのPaulsonの関与に関しACAに誤解を与えたことはなかった。
 
B.GSが投資家を欺くために、ACAを雇い又はACAをポートフォリオ選定代理人と性格づけたという推論を支える証拠はない。
 
Ⅲ.GSはPaulsonの役割を開示しないことにより詐欺を行ったというSECスタッフの理論は、ブローカー=ディーラーの機能と義務を誤解するものである。
 
スタッフの主張は2つの前提に基づいている。第1に、2007-AC1の取引時点でPaulsonの関与が投資家にとって重要であったこと。第2に、GSはPaulsonの役割を開示しようと思えばできたこと。(第1の前提の誤り→ⅠD)第2の前提は、ブローカー=ディーラーとしてのGSが顧客の取引及びポジションに関する情報について秘密保持義務を負うことを見過ごしている。募集回状に開示されている通り、GSは2007-AC1取引の最初のプロテクション買主である。GSがPaulsonと行ったCDSは、2007-AC1取引と関連しているものの別個の取引である。ブローカー=ディーラーの基本倫理基準によると、ブローカー=ディーラーは一方当事者のポジションや戦略を他方当事者に開示しなくてよい。本件に対して法執行を行うことは、SECが開示義務を拡大することを意味するが、それは顧客の取引の秘密性を維持するという現在の義務と衝突する。
 
2本目の上申書は短めのもので、1本目を補足するものなので、省略します。
次回に私なりの解説を加えます。

  • 顔アイコン

    黒沼先生の解説前ですが、一点。

    GSの説明が事実とすれば、ごくごく普通の証券会社の役割、リスクを取りたい人とリスクを外したい人を仲介したにすぎないのではないか、という気がしますね。
    ACAはPaulsonのポートフォリオを確認しているわけですし、IKB側に落ち度があるように思われます。
    Paulsonが単に対象としていたRMBSを保有していただけでは、Paulsonのプロテクションの購入は通常のヘッジ行為ですし、ただ、もしそのRMBSの組成にPaulsonがかかわっていたとか、GSが組成したとか、GSかPaulsonがRMBSの資産状況をよく知る立場にいた、とかいう事実がもしあれば、また状況は異なるかもしれませんね。

    GSが気をつけるべきは、仲介とは言っても取引所取引の仲介ではなく、相対取引の仲介には、利害が疑われる要素があるということでしょうか。

    でも、私もちょうどこの事件のようなCDO案件を扱ったことがありますが、普通の投資家であれば、誰がプロテクションを購入するのか、とか事前に相当気にしますけどね。

    [ ok3403 ]

    2010/5/27(木) 午後 8:02

  • 私が認識している範囲で、事実関係の点だけコメントします。

    ACAはPaulsonと交渉しておりPaulsonを知っていますが、IKBがもしPaulsonの役割を知っていたら取引をしなかったであろうとSECが主張しているところからすると、IKBはPaulsonの役割を知らなかったようです。

    Paulsonは対象としていたRMBSを保有していないようです。Paulsonはリスク・ヘッジをしたのではなく、下落することに賭け、IKBは下落しないことに賭けたのです。

    GSはPaulsonとIKBの取引を仲介したのかと言えば、微妙です。SECの主張によれば、GSはPaulsonとの取引のリスクヘッジのためにIKBと取引をし、GSの主張によればIKBとの取引のリスクヘッジのためにPaulsonと取引をしたように読めます。

    [ くろぬま ]

    2010/5/28(金) 午前 0:22

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