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書庫ディスクロージャー

Due Diligence 義務

有価証券届出書に重要な虚偽記載があるとき、元引受金融商品取引業者等(以下、典型例を考えて元引受証券会社と記載します)は、金商法21条1項4号に基づいて投資者に対する損害賠償責任を負います。この責任は、同条2項3号によると、①財務計算に関する書類に係る部分については、虚偽記載を知らなかったことを証明した場合に、②①以外の部分については、虚偽記載を知らず、かつ、相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかったことを証明した場合にのみ、免れることができます。
 
この条文は、財務諸表に虚偽記載があった場合、元引受証券会社は虚偽記載を知らなければ免責されるように読めます。もしそうだとすると、元引受証券会社としては、財務諸表の虚偽記載を知ってしまうと責任を負わされるので、財務諸表は監査法人に任せて審査しない方が得だということになり兼ねません。そこで学説では、元引受証券会社は、金商法17条により目論見書(株式募集の場合、記載事項の大部分は有価証券届出書と同一)の使用者としての責任を負い、その責任は財務計算に関する書類に係る部分であると否とを問わず、相当な注意を尽くさなければ免れないため、元引受証券会社も相当な注意を尽くして目論見書・届出書を審査する義務を負うと主張されています。
 
私はこの説に若干の違和感があります。この説が、元引受証券会社も目論見書の使用者として責任を負うため、その限りで財務諸表についても審査義務を負うだけならば、その通りです。実務でも、元引受証券会社は責任を負う可能性があることを前提に引受審査を行っています。
 
しかし、法的に見ると、目論見書の使用者としての責任と有価証券届出書の虚偽記載についての元引受証券会社の責任とは相当異なると言わざるを得ません。まず、目論見書の使用者としての責任はその目論見書を使用して有価証券を取得させた相手方に対してのみ生じます。元引受証券会社から取得したのでない投資者が、元引受証券会社の17条責任を追及するのは難しいのではないでしょうか。
 
つぎに、目論見書の使用者が負う注意義務と元引受証券会社が引受審査の際に用いるべき注意義務の水準が同じはずはありません。17条も21条も「相当な注意」という語を用いていますが、アメリカの元の条文では、前者はin the exercise of reasonable care、後者はafter reasonable investigationであり、後者はdue diligenceと呼ばれている義務を意味しています。ですから、元引受証券会社も、目論見書の使用者としての注意義務を負うから良いと言われると、そんなに軽い義務で良いのか?となってしまいます。ちなみにアメリカでは、引受証券会社は専門家の作成した書類(財務諸表はこれに含まれる)について、記載が虚偽であると信じる合理的な理由がなく、かつ、実際に虚偽でないと信じた場合に免責されるのであり、虚偽であると知らなかっただけで免責される訳ではありません。
 
そこで、目論見書の使用者としての義務から元引受証券会社の審査義務を導く上記の解釈を意味のあるものにするには、目論見書の使用者でさえ財務諸表についての注意義務を負うのだから、元引受証券会社はもちろん注意義務を負い、その違反については17条ではなく21条の責任を負うと解する必要があるでしょう(従来の学説がこのような主張をしていたと読むべきかどうかは、学説の表現からは微妙です)。ある種の勿論解釈ですが、元引受証券会社の注意義務の方が目論見書の使用者の注意義務よりも高度であることを導けなければ意味がありません。この解釈は学説としては魅力的ですが、実際に裁判で問題になったときに、21条2項3号の明文に反するという壁をどうやって乗り越えるかが問われるでしょう。
 
上場前から粉飾決算をしていたFOIという会社が上場廃止となり、株主の救済が問題になっています。この会社では上場時に株式の募集と売出しをしているため、今後、投資家が、有価証券届出書に虚偽記載があったとして元引受証券会社の民事責任を追及する可能性があります。そのとき、元引受証券会社は虚偽記載を知らなかったから免責されると主張して、それが通るかどうか。21条の解釈が正面から争われることになるかも知れません。
くろぬま
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