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(書く方がかなり飽きてきたので、読む方はもっとでしょう。今回で金融ADRを終わらせます。コピペゆえ、文字の大きさが揃いません。)
4 紛争解決手続の概要
金融関連業務に係る紛争の当事者が、紛争解決機関に対し紛争解決手続の申立てをすると、紛争解決機関は紛争解決委員を選任します(金商156条の50第1項2項)。紛争解決委員は、一定の要件を満たす弁護士、当該金融業務従事者、消費者相談員、認定司法書士等でなければならず、1名は弁護士、認定司法書士、消費生活相談員等でなければなりません(同条3項)。申立てに係る当事者と利害関係を有するものは除外されます(同条項)。そこにいう利害関係は内閣府令において定められ、当事者から役務の提供により収入を得ている者又は得ないこととなった日から3年を経過しない者は利害関係があるとされています((指定紛争解決機関に関する内閣府令11条1項)。この内閣府令については、①法律の委任を受けていないのではないか、②過去3年間に当事者から個別の事件を受任した弁護士が除かれることになり、専門性のある弁護士を確保できないとの批判があるところです。
紛争解決委員は、(a)顧客が紛争を適切に解決するに足りる能力を有する者であると認めるときや、(b)当事者が不当な目的でみだりに申立てをしたと認めるときは、紛争解決手続きを実施しないことができます(金商156条の50第4項但書)。(a)は、大企業や金融機関が取引先となっている場合など、金融機関との間で大きな情報格差等が存在していない場合には紛争解決手続を行うことが適当でないからであると説明されています(池田ほか・前掲書65頁)。一般に、ADRの利用から大企業や金融機関が排除されるべきだとは言えないでしょうが、金融ADRは金融機関側に手続応諾義務、調査協力義務、結果尊重義務等を課している点、および紛争解決手続の過程で得た知見を業務に生かせるという利益を考慮してADR運営費用の一部を加入金融機関(手続実施基本契約を締結した者)に負担させている点(金商156条の44第1項4号参照)を考慮に入れる必要があると思います。これらのうち手続応諾義務及び調査協力義務は、金融機関と顧客との間で情報格差・交渉力格差が大きいことを理由に課されていると考えられるので、大きな格差が存在していないことは紛争解決手続きを実施しない理由になるでしょう。また、大企業や金融機関との間の取引(いわゆるホールセール取引)は一般に個別性が高いと考えられますが、紛争の個別性が高いと紛争解決手続の知見を業務に生かす余地は少なく、従って紛争当事者以外の金融機関に費用の一部を負担させることとなる紛争解決手続きを利用させる理由は乏しいと、一応言えるのではないでしょうか。もっとも、たとえば地方公共団体が相手方の場合はどうかなど、具体的にどのような者が相手方であれば紛争解決手続きを実施しなくて良いかとなると、難問ですね。なお、(b)は制度の濫用を防止するための当然の規定です。
紛争解決委員は、当事者や参考人から意見を聴取し、報告書・帳簿書類・物件の提出を求め、和解案を作成して、その受託を勧告します(金商156条の50第6項)。ここにいう和解案とは、当事者双方が必ず譲歩した内容でなければならないものではありません。また、和解が成立する見込みがない場合において、紛争解決委員は当事者に特別調停案を提示することができ(金商156条の44第2項5号)、前述のように、これを顧客が受諾した場合には、金融機関は、1か月以内に訴訟を提起する等一定の場合を除いて、これを受諾しなければなりません(同条6項)。同様の仕組みは、すでに日本証券業協会の自主規制規則で採用されていました。
5.自主規制機関、認定投資者保護団体との関係
伝統的に証券の分野では、自主規制により取引ルールの策定や紛争の解決が図られてきました。投資者からの苦情の解決や投資者・協会員間の紛争解決のあっせんについても、金商法に基づく証券業協会の権限および証券業協会の規則により、ADRの仕組みが整えられてきたところです。
平成18年改正金融商品取引法は認定投資者保護団体の制度を創設しました。認定投資者保護団体は、いわゆる投資商品、すなわち有価証券、デリバティブ取引、投資性の高い預金・保険・信託等を取り扱う業者を対象として、対象業者と顧客との紛争の解決に従事する法人または団体を内閣総理大臣が認定する制度であり、認定を受けると、対象事業者に調査協力義務等が課されます(金商79条の13)。認定投資者保護団体は、民間団体による業界横断的な紛争解決の取組みを促進するために導入されたものですが、消費者保護団体は申請をせず、生命保険協会、損害保険協会、全国銀行協会、信託協会が認定を受けていることから明らかなように、業態ごとの(業界分断的な)取組みしか行われていません。
改正法は、認定金融商品取引業協会の紛争解決業務に関する規制および認定投資者保護団体の制度を存置しました。この結果、認可金融商品取引業協会が紛争解決機関の指定を受けた場合は、認可協会と指定紛争解決機関の2つの性格を有することになりますが、指定に係る業務の種別に関する苦情処理・紛争解決については、指定紛争解決機関として手続を行う旨の規定が置かれています(金商77条5項、77条の2第9項)。
今年2月、日本証券業協会をはじめとする証券・金融先物関係5団体は、NPO法人「証券・金融商品あっせん相談センター」(FINMAC)に紛争解決のあっせん業務を委託しました。これは、自主規制機関のあっせん業務を金商法73条の3および78条の8に基づいて同センターに委託するとともに、第2種金融商品取引業者で同センターに利用登録している業者の業務については、同センターが認定投資者保護団体の業務として紛争解決のあっせんを行うものです。同センターは、第1種業についてのみ紛争解決機関の指定を申請する予定であるといいます。
改正法の立案担当者は、認定投資者保護団体の制度は、金融機関の加入が任意の柔軟な利用者保護の枠組みであることから、存続させることとし、特に、指定紛争解決機関が設立・指定される前段階における業界団体等の苦情処理・紛争解決の枠組みとして利用されることを想定しているとしています(池田ほか・前掲書69頁)。
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初めまして。毎日ブログを読ませていただいてます。
現在投資顧問会社で働いております。
金融ADRの制度の施行に向けて社内の準備をしておりますが、紛争解決については投資顧問業協会でなく弁護士会と協定書を結ぶことにしました。
ですが、苦情処理の方法をどの程度までHP等で公開すればよいのか悩んでます。
方針・苦情の定義等・対応方法・対応の終了基準・解決しなかった場合の対処法等について記載すればよいのでしょうか?
黒沼先生のご意見いただければと思います。
よろしくお願いします。
[ you*e*t74 ]
2010/8/19(木) 午後 0:46
本文では触れませんでしたが、代替措置として外部機関を利用する場合の話ですね。これについては監督指針も出ているところなので(監督指針でも細かい点まで規定しているのではないのですが)、金融庁にお尋ねくださいというしかないですね。監督指針の解説は、たとえば金融法務事情の1903号に出ています。
[ くろぬま ]
2010/8/19(木) 午後 1:19
やはりまずは体制を作って、少しずつ整備していくしかないようですね。
ありがとうございます。
頑張ります。
[ you*e*t74 ]
2010/8/20(金) 午前 9:43