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遅まきながら、今年3月に公表された金融庁の「株券等の公開買付けに関するQ&A」を読む機会がありました。このQ&Aは一種の公定解釈になっているのだろうとは思いますが、思いついた疑問点を書きとめておきたいと思います。
A13はコール・オプションの行使による株券等の買付等は、原則として公開買付の方法による必要があるとします。その理由として、三井ほかの解説(以下、三井解説という)では、新株予約権の行使による買付等と異なり、適用除外として規定されていないこと、および他の株主の売却の機会を確保する必要があることが挙げられています。
私は、「原則として買付け等に当たらない」と解すべきではないかと思います。まず、利害の状況は新株予約権の行使による買付等とほとんど変わりません。適用除外がないという形式的理由は、「株券等の買付け等」に当たらないと解釈すればクリアできます。新株予約権の行使による取得も、理論上当然に、「株券等の買付け等」に当たらないのだが、念のため適用除外規定が設けられたと解すれば足りるのです。
株主の売却機会の確保という実質的な理由の方はどうでしょうか。三井解説は、コール・オプションの取得の際に公開買付けの方法によることが求められるが、取得したコール・オプションの行使を誰に対してするかオプション権者に選択権があるから、それだけでは株式売却機会は確保されないとしています。たしかに、コール・オプションの取得時に求められる公開買付けは、コール・オプションの取得に関するものであって、オプション取得者は株式を取得する必要がないのに対し、コール・オプションの行使時に求められる公開買付けは株式に対するものですから、株式の売却機会を与えるためには後者を公開買付けの方法によらせる必要がありますといえます。
しかし、本当に株式売却の機会が与えられるのでしょうか。典型的なケースで考えてみましょう。株式のコール・オプションの取得とは、通常、当該株式の現在の市場価格よりも高い価格を行使価格とするコール・オプションを対価を払って取得することです。コール・オプションだけで潜在的な議決権が3分の1を超えるような場合には、コール・オプションの売却の機会に一般株主を参加させる意味はあります。それに対して、このオプションが行使されるのは、通常、現在の市場価格が権利行使価格を上回っている場合でしょう(株価1000円のときに、800円で取得する権利を行使する)。そうだとすると、行使の際に公開買付けを要求しても、ディスカウント買付け(一株800円の買付け)が行われるだけであり、他の株主に株式売却の機会が与えられるとは言えないのではないでしょうか。
このように考えると、コール・オプションの行使による株券の買付けは、原則として「株券等の買付け等」に当たらず、公開買付けの方法による必要はないと解すべきです。ただし、通常ならば株式の譲渡によるところ、規制を回避する目的で、コール・オプションの取得と行使が行われる場合は、脱法ですから、例外に該当し禁止されるべきです。その場合は、コール・オプションの取得についての公開買付けに一般株主が応募してくるような状況を避けるでしょうから、脱法かどうかは比較的明確に区別できます。言い換えると、コール・オプションの公開買付けに一般株主が参加する機会が実質的に与えられていれば、脱法と解する理由はないと思えるのです。
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