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緊急差止命令

最近、証券取引法の制定以来50年以上の歴史のなかで、初めて、金融商品取引法192条の緊急差止命令が申立てられ、発せられました。証券取引等監視委員会が、平成22年11月17日に行ったD社およびD社代表取締役・取締役に対する差止命令の申立てが、同年11月26日に認められたのです。その後も、緊急差止命令の申立て・命令が続いています。裁判所による差止命令は、日本では時間がかかるので使われないのだと思っていましたが、そうでもないようです。
 
監視委員会の発表(たとえば、東証メールマガジンへの監視委員会の投稿No23「金融商品取引法第192条申立てについて」)などを参考にすると、次のような事情が分かります。
 
金融停止命令に違反した者には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらの併科が定められているが、法人に対する両罰規定が定められておらず、実効性を欠く状態になっていた。平成22年金商法改正により、両罰規定(207条1項3号、法人に対し3億円以下の罰金刑)が盛り込まれたので、監視委員会において、短期のうちに執行体制を整え、初適用となった。
 
今回のケースは、いわゆる未公開株の勧誘事例で、金融商品取引業の登録違反です。もちろん刑事訴追もできますが、刑事訴追に用いられる資源が限られているので、監視委員会のイニシアティブで刑事訴追に繋がる申立てが行われました。注目すべきことは、金融商品取引業の登録違反の刑事罰は、3年以下の懲役・300万円以下の罰金で(198条1号)、両罰規定も300万円以下の罰金です(207条1項6号)。それに対して、同じ行為を差し止めて、違反があれば(無登録営業をすれば)、法人を3億円以下の罰金刑に処すことができるようになったのです。これは、未公開株勧誘の利益を根こそぎ奪うような絶大な威力を発揮するでしょう。緊急差止命令が使われるようになったのは、両罰規定が設けられたからというよりも、その両罰規定が極めて重く、違反行為の抑止に効果があるからでしょう。たとえ、首謀者が別会社を設立して無登録勧誘を繰り返しても、首謀者が差止命令の対象となっている限り、当該別法人が両罰規定の対象になると解されます。
 
緊急停止命令は、刑事罰の付されていない法令の違反についても適用されます。そうだとすると、緊急差止命令を得ておけば、刑事罰の付されていない法令の違反を刑事罰で処断することができることになります。このような機能をどこまで発揮させて良いかについては、議論のあるところかも知れません。

  • 無登録営業の罰金は300万円でしたので、訂正しておきました。

    [ くろぬま ]

    2010/12/25(土) 午後 1:51

くろぬま
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