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平成20年にアーバンコーポレイションが臨時報告書に虚偽の記載をした事件で、再生債権査定異議事件の判決が3つ出ています。これらは、微妙に異なる判示をしていますので、紹介してみたいと思います。
私が目にした3つの判決とは、
① 東京地判平成22年1月12日判例タイムズ1318号214頁
② 東京地判平成22年3月9日金融法務事情1903号102頁①
③ 東京地判平成22年3月26日金融法務事情1903号102頁② です。
私なりに事実関係をまとめますと(必ずしも判決によって認定された通りではありません)、
アーバンコーポレーションは、平成20年6月に、BNPパリバを割当先として新株予約権付社債(発行総額300億円)を発行し、臨時報告書を提出しましたが、臨時報告書には、新株予約権の発行決議の事実のみを記載し、BNPパリバとの間のスワップ契約締結の事実を記載しませんでした。スワップ契約の内容は、アーバンは調達した資金をいったんBNPパリバに払込み、スワップ契約の条件に従ってBNPパリバがアーバンに支払いをするものでした。アーバンは、同年8月13日に臨時報告書の「新株予約権付社債の手取金の使途」欄を、「短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定です」の前に「割当先との間で締結するスワップ契約に基づく割当先への支払いに一旦充当し」を挿入する形で訂正する訂正報告書を提出するとともに、同日、東京地方裁判所に対し、民事再生法に基づく再生手続開始の申立てをしました。同裁判所は、同月18日、再生手続開始決定をし、アーバン株式は9月14日に上場廃止となりました。この間の株価の推移をみると、平成20年6月26日(臨時報告書の提出日)が一株344円、8月13日の公表直前が一株62円、14日は一株32円(ストップ安)、15日に一株6円(ストップ安)、上場廃止前の最終取引日(9月12日)は一株1円でした。また、金融庁は平成20年10月10日、臨時報告書の虚偽記載について課徴金納付命令にかかる審判手続開始の決定をし、同年11月17日、課徴金150万円の納付を命ずる旨の決定をしました(開示が臨時報告書でなされ、有価証券届出書が提出されていないのは、「海外における募集」という扱いだったからのようです)。
臨時報告書の公衆縦覧後にアーバン株を取得し、虚偽記載の公表後上場廃止前に売却した投資者が、アーバンに対する再生債権(金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求権)を届出、査定を受けたのに対し、不服の当事者(投資家またはアーバン)が異議を申立てたのが、これらの訴訟です。
裁判所は、まず臨時報告書に重要な事項に関する虚偽記載または記載漏れがあったかどうかを判定しなければなりません。、①判決は、次のように判断しています(要約)。
本来であれば「手取金の使途」の欄には、①手取金の全額をBNPパリバとの間のスワップ契約に基づく当初支払金の支払いに使用すること、②BNPパリバから支払いを受けることとなる変動支払金をアーバンの債務の返済に使用する予定であること、③変動支払金の額は、アーバンの株価、出来高、およびBNPパリバが選択するヘッジ比率によって変動するものとされていること、④そのため、アーバン株の株価が下落するなどした場合には、変動支払金の総額が手取金の総額に達しない可能性や、変動支払金が一切支払われない可能性もあることを記載する必要があったにもかかわらず、現実には臨時報告書の欄に上記の記載しかなかった。したがって、臨時報告書の記載は、金融商品取引法21条の2第1項本文にいう「虚偽記載等」に当たる。
スワップ契約の詳しい内容については説明を省略しますが、この判示から大体のところを想像してください。判決のいう「虚偽記載等」とは、「重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている」ことと定義されていますので、重要な記載漏れを含んでいます。
②判決は、上記①から④を推察できる程度に、スワップ契約の概要を記載する必要があったとし、本件各記載が「重要な事項について」の「虚偽の記載」であるかは措くとしても、「記載すべき重要な事項・・・重要な事実の記載が欠けている」ものに当たるとしています。それに対し③判決は、スワップ契約に関する記載(具体的には、上記①②、および受領金の取得の時期とその額は不確定であると判断できる程度の契約内容の記載)がされていなかったことが、重要事項についての虚偽記載等に当たるとしています。
表現や、記載すべき内容の詳しさについてニュアンスの違いはあるものの、重要な記載漏れがあるとした判断は動かないところでしょう。
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