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①事件の原告(アーバン)は、金商法21条の2第4項による免責を主張し、その根拠として、公表日にアーバンが再生手続開始の申立てをしたことを挙げました。そこで①判決は、まず、次のような一般論を立てています。
株価下落の原因は多種多様なものが考えられる上、複数の原因が同時に作用して一定の株価下落を招来することもあり得るから、ある一定の株価下落により生じた損害の全部が、同条4項にいう「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情」により生じた損害であることの証明があるというためには、①虚偽記載等に係る真実情報の公表がなくても、他の特定の株価下落原因だけで、当該株価下落のすべてが生じたことの証明があることに加えて、②虚偽記載等に係る真実情報の公表だけでは、当該株価下落は一切生じなかったことの証明がなければならないと解するのが相当である。
本件が「複数の原因が作用して」といえる場合に当たるのかについては、後述のように議論の余地はあると思いますが、独立した原因の影響度を図るには判旨のいうようなテストを用いるのが妥当だろうと思います。①だけでは足りないというのが味噌です。判決はこれを事案に当てはめて、次のように言います。
アーバンが再生手続開始の申立てをしたことが原因となって、アーバンの株価が一気に下落し、1株1円に収斂するに至ることは、証拠および経験則に照らして明らかであるから、再生手続の申立てだけで公表日の翌日以降に生じたアーバンの株価下落のすべてが生じたことの証明はある。しかし、本件虚偽記載等に係る真実情報が市場に伝達されれば、アーバンの財務状況の改善可能性がそれだけ低いと市場が判断することは当然であるし、逆に、本件新株予約権付社債の発行の事実のみが市場に伝達されれば、アーバンの財務状況が改善されるとの期待を市場が抱くことになり、その分アーバン株の株価がかさ上げされると見るのが相当である。したがって、本件虚偽記載等に係る真実情報の公表は、それだけでアーバンの株価下落原因になり得るものというべきである。そうすると本件虚偽記載に係る真実情報の公表だけでは本件公表日の翌日以降に生じたアーバンの株価下落は一切生じなかったことの証明があるとは認められない。
つまり、①の証明はあるけれど、②の証明がないので、公表日以降の株価下落の全てが「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情」によって生じたとは認められないとしたのです。
もっとも、これだけでは、株価下落の一部が虚偽記載等以外の事情で生じたことを排斥できないので、判決はそれを認めたうえで、株価下落分のうち虚偽記載等に係る真実情報の公表だけでは生じなかった部分を証明することは、極めて困難といわざるを得ないので、金商法21条の2第5項を類推適用し、公表日の翌日以降に生じた株価下落分の8割に相当する部分をもって、虚偽記載に係る真実情報の公表だけでは生じなかった株価下落分と認めました。つまり、8割の減額をしたわけです。
最後の部分は評価が難しいところです。①判決は、虚偽記載等に係る真実情報と再生手続開始の申立てを別個独立の事実と見ていますから、それを前提として考えてみましょう。仮に、再生手続開始の申立てだけだと株価が10割下落し、虚偽記載等に係る真実情報の公表だけだと株価が4割下落する場合、5項による減額は、6割でしょうか、10/14(7割)でしょうか、あるいはlogとかを使うもっと複雑な計算を要するのでしょうか。・・・ところが、②③判決は①判決とは違った見方をしたのでした。
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