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書庫ディスクロージャー

臨時報告書の虚偽記載の訂正と民事再生手続開始の申立てが同じ日に行われたことについて、②判決は大要、次のように論じています。
 
平成20年8月14日以降のアーバンの株価の下落は民事再生手続開始申立てによるものであって、本件各記載(虚偽記載)とは無関係であるとの主張について。
 
アーバンは、①不動産市場の低迷を背景に資金繰りがひっ迫し、平成20年5月ころには、「万が一の時のために」民事再生手続開始申立ての準備について弁護士に相談していたこと、②同年6月から7月を償還期限とする社債の償還の目途が立たず、至急資金調達を行う必要に迫られていたこと、③同年6月19日には、本件CBの発行と本件スワップ契約の組合せにより資金調達を行う見込みとなり、資金繰りの目途が立ったとして民事再生手続開始申立ての準備を中止したこと、④当時のアーバンには、本件CBとスワップの組合せのほかに資金調達の方法の選択肢がなかったことが認められ、これらの事実によれば、本件CBの発行および本件スワップ契約の締結自体が、アーバンの倒産回避を目的とするものであたと認められる。
 
さらに、本件CBとスワップの仕組み自体は、本件CBの発行を公表し、本件スワップ契約については非開示とすることによる株価の維持ないし回復を前提として初めて機能するものというほかない。本件スワップ契約が当初から開示されていれば、アーバンは、より早期に民事再生手続等の法的整理を余儀なくされ、アーバン株式の市場価格は暴落していたというべきである。したがって、本件各記載と本件民事再生手続開始の申立ては、相互に密接に関連するのであって、全く別個の事情であるとの主張は採用しがたい。
 
もっとも、アーバン株式の価格は、平成20年8月13日以前において、ほぼ継続的に下落していたと認められ、原告の損害には、本件各記載によって生ずべきアーバン株式の値下り以外の事情によるものも一定程度含まれていることは否定できない。・・・金商法21条の2第5項により、原告の損害のうち2割をアーバンが損害賠償責任を負わない損害と認めるのが相当である。
 
この判決は、虚偽記載と民事再生手続開始の申立てが密接に関連していることを理由に、2割のみの減額を認めました。「密接に関連している」とは、虚偽記載がなければ本件CBとスワップの組合せによる資金調達は成り立たず、民事再生手続開始は避けられない関係にあるという意味です。このような指摘は①判決にはありませんでした。
 
上の判旨の第2段落(さらに・・・)の論理は分かりにくいです。おそらく、裁判所は、当初から真実を開示していたら民事再生手続開始の申立ては避けられなかったから、民事再生手続開始の申立ては減額事由として考慮すべきではないと考えたのではないでしょうか。実際には2割の減額をしているわけですから、全く考慮する必要がないのではなく、当初から真実を開示していれば株価は8割下落していたはずであると裁判所は考えたのでしょう。この見解は、21条の2第2項の推定規定を使わずに、想定価格と売買価格との差額を損害と認定する場面には妥当します。なぜなら、当初より真実が開示されていたとしても、そのときは民事再生手続開始の申立てはなされていないわけですから、取引時の取得時差額を計算するには真実情報公表の影響だけを考慮すれば良いからです。もっとも、判決は真実開示をすれば、より早期の倒産は避けられないといっているわけですから、判決が想定する倒産の時期より後に株式を取得した者には判旨の論理は当て嵌まらないと思う人もいるでしょう。この点については、個々の原告が取引をする時点で開示義務違反があれば、もしその時点で真実が開示されていたとしたらと仮定することが許されるから、どの原告にとっても、倒産情報を抜きにした取得時差額を考えることができるでしょう。
 
より重要な点は、本件では推定規定を使った上で、虚偽記載公表後の株価下落のうち何割が虚偽記載の公表によるものかが争われているということです。仮に、真実情報の公表で8割、民事再生手続開始申立てで10割株価が下落するとすれば、、①判決の裁判所であれば、6割程度の減額をするでしょう。それが、虚偽記載と民事再生手続(倒産)が密接に関連するというだけで、倒産の影響を度外視してよいのかは、(政策的考慮を無視して、純粋に投資者の被った損害の賠償を考えるとしても、なお)難しい問題でしょう。
 
なお、判決は第3段落で、アーバン株式の株価が継続的に下落していたことを理由に2割の減額をしていますが、継続的下落が、真実情報の漏洩や倒産の可能性の増大を反映したものであれば、当該下落分を減額する理由はありません。また、市場の一般的な傾向(たとえばリーマンショックによる市場下落)に対する反応として株価が継続的に下落していたのであれば、虚偽情報の発覚後の株価下落からそのような下落分を減額することは正当化されますが、本件では倒産により株式が無価値になっているので、そこから市場の一般的傾向に沿って下落した分を減額するのは無意味です。上に記したように、真実情報を開示していた場合の暴落率が8割という意味で減額したのであれば、そのように説明すべきだったと思います。
くろぬま
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