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目論見書指令の4条1項には、従業員持株スキームについての適用除外が定められています。
まず、EUの発行者は、従業員に持株スキームを提供する場合、簡易な情報を記載した文書を作成・提供しているときは、目論見書の公表義務が免除されます。第三国の発行者がEU域内の従業員に持株スキームを提供する場合、当該発行者が証券を規制市場または第三国の市場に上場している場合に限り、EU企業と同様の要件で目論見書の公表義務が免除されます(4条(1)(e))。
第三国の発行者の場合、さらに2つの要件を満たす必要があります。①国際金融分野で通常用いられる言語(すなわち英語)による情報が十分に提供されること。②EU委員会が第三国市場に対して同等性の判定(equivalence decision)をしていること。加盟国の所轄当局はEU委員会に同等性の判定を求めることができるので、まず、所轄当局が同等性の判定を行うといえます。同等性は、第三国市場の法的および監督上の枠組みが、EUの市場濫用指令の要件、透明性指令の要件に合致しているか、第三国で実効的な監督と法執行が行われているかという観点から判定されます。
目論見書の公表義務が免除されるということは、EU域内での上場も発行開示も継続開示も行われないことを意味しますが、従業員は第三国の市場で売買できれば良いので、第三国の市場環境が整っている場合には、同等性を認め、規制の適用を除外するわけです。この改正は2010年に行われ、同等性の判定の例はまだないようです。
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日本ではどうなっているかと思い、証券六法をあけてみると、会社やグループ会社の従業員にストックオプションを発行する場合には、金商法4条1項1号、施行令2条の12により、有価証券届出書の提出を免除され、その後の継続開示義務も課されないことになりますが、ストックオプションには外国証券で新株予約権付証券の性質を有するものが含まれ、会社には外国会社が含まれると書いてあります。そうすると、外国親会社が日本子会社の従業員に親会社株のストックオプションを渡すときもディスクロージャーは要らないことになり、この点ではEUと一緒です。違うのは、同等性の判定が日本では要らない点ですね。この制度は、従業員は会社のことを良く知っているからディスクロージャーは要らないという考え方で出来ているのですが、外国株を取得した後のこと(外国市場でしか換金できないこと)を考慮した規制になっていないのではないでしょうか。
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外国基準で作成された目論見書を域内で使用することもできます。目論見書指令の20条は、第三国の法に従って作成された目論見書を、本国(域内のホームカントリー)の所管当局が承認することができるとします。承認のための要件は、①国際的な基準に従って作成された目論見書であること、②開示要件が目論見書指令(および委員会規則)の要件と同等と認められること、です。ここでの同等性は、開示要件(開示内容)の同等性をみています。EU目論見書の場合と同じく、受入国の当局は、目論見書の有効性に口を挟むことは、ほとんどできません。受入国は、自国が当該第三国の発行者の本国(域内のホームカントリー)であったなら、承認しないような目論見書であっても、受け入れなければなりません。
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これに対応するのは、日本では「英文開示」ですね。「英文開示」とは英文かつ外国基準による開示です。日本でこれを認めるには金融庁長官が「同等性の判定」をしますが、こちらの方は、開示内容だけでなく、本国市場の規制の全体を見て判断することになります。このあたりの差が面白いですね。
かなり長くなりましたが、今回でEU目論見書の話を終わります。
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