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書庫その他

仲介業者・取引業者の行為規制、取引所集中義務を課すか、海外排出枠・クレジットの国内取引の規制、海外における国内排出枠の取引の規制、現在すでに存在する排出枠・クレジット関連商品の規制上の取扱いについては、省略し、不公正取引の規制のうちインサイダー取引規制に入ります。
 
報告書はまず、現状分析として、①商品先物取引にはインサイダー取引規制がないこと、②その理由は、価格形成に影響を与える情報の確定が困難だからであると説明されていること、③金商法のインサイダー取引規制は、株券の現物の一部及びデリバティブ取引の一部に限定されていること、④政府の経済政策・産業政策に関する情報、有価証券の需給に関する情報(公開買付け・株式買集めに関するものを除く)は規制の対象外とされていることを指摘しています。
 
また、英国の規制の紹介として、英国ではEUの市場濫用指令に基づき金融サービス市場法が規制を行っているが、①排出枠の現物取引は金融サービス市場法の規制対象でないため、インサイダー取引規制の対象でないこと、②排出枠のデリバティブ取引は商品デリバティブとして規制の対象となるが、ある内部情報が、商品デリバティブに係る内部情報の要件である「当該デリバティブが取引されている市場で承認された市場慣行に照らして、当該市場の参加者が当該情報を受領することを期待するものであろうもの」に該当しない可能性が高いので、インサイダー取引規制が排出枠のデリバティブ取引に適用される場面は想定されないと分析しています(報告書60頁)。
 
これらの点を少し検討してみましょう。商品取引になぜインサイダー取引がないかは、よく分からないところです。商品先物取引には、発行者のように取引の価値の判断に重要な情報を集中的に保有している者がいないので、インサイダー取引を想定しにくいのは確かです。しかし、需給に関する情報は商品先物取引にとっても重要であり、証券のインサイダー取引について需給情報がインサイダー取引規制の対象になるべきものであれば、商品先物取引についても同様に考えるべきでしょう。この点は、EUや米国では証券取引の需給に関する情報も広くインサイダー取引規制の対象とされており、日本法の適用範囲が狭すぎると批判されているところなので、不備のある日本法を議論の出発点にする必要はないと私は考えています。
 
英国金融サービス市場法における商品デリバティブ取引の内部情報の定義は、当該情報が市場慣行に照らして一般投資家に公表されるものであればインサイダー取引の規制対象とすることを意味しています。かつて、日本ではインサイダー取引規制とディスクロージャーの範囲が合致していて、「ディスクロージャーなくしてインサイダーなし」といえる状況にあったのですが、取扱い有価証券(グリーンシート銘柄)がインサイダー取引の対象とされたときに、この原則は破られました(グリーンシート銘柄には法定のディスクロージャーは適用されないがインサイダー取引規制の対象となる)。ですから、今日、ディスクロージャーの対象でなければインサイダー取引規制はかけられないと考える必要はないでしょう。英国法の定義も、法定のディスクロージャーに限らず、市場慣行によって公表を期待できる情報であればインサイダー取引の対象とするようです。英国法の定義規定についてきちんと勉強していないのですが、これは、法律上のディスクロージャーが及ばない情報であると、永久に公表されない場合があり、そのときには情報を知った者が永久に取引できないのは不合理なので、公表を予定している情報に対象を限定したのではないでしょうか。そうだとすると、これは情報の内容・性質によってケースバイケースで判断することになるとはいえ、インサイダー取引規制が排出枠のデリバティブ取引に適用される場面は想定されないとするのは言い過ぎだったかなと思っています。
くろぬま
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