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書庫ディスクロージャー

もうかなり前になりますが、9月13日に西武鉄道の虚偽記載事件の最高裁判決(2件:機関投資家訴訟と一般投資家訴訟)が出ました。どちらも、東京高裁では、取得自体損害(原状回復的損害賠償)の主張が認められず、虚偽記載の公表後の市場下落分のうち15%程度の損害賠償しか認められていませんでした。私は、東京高裁判決に反対の判例研究を公表していますので、最高裁が、取得自体損害の主張を認めたことには大賛成です。他方で、最高裁の多数意見は、取得時から虚偽記載の公表時までの市場価格の下落のうち虚偽記載と関係のない部分を除外するという立場をとっており、差戻審の認定によっては、市場下落説と大差ない結果が出るかも知れません。
 
遅ればせながら、判決(一般投資家訴訟)を紹介しましょう。事案はすでにこのブログでも紹介していますので、省略します。判決は裁判所ホームページに掲載されています。
 
多数意見
 
Y1株に関しては,昭和32年3月期以降本件虚偽記載が継続され,上場廃止事由として少数特定者持株数基準が定められた昭和57年10月1日以降継続して同基準に該当しており,現に,東京証券取引所は,本件公表後,同基準に係る猶予期間の経過を待つことなく,財務諸表等虚偽記載基準及び公益等保護基準に該当するとして本件公表後1か月余にして上場廃止を決定したというのであるから,仮に,被上告人Y1が上告人らによるY1株の取得より前に継続してきた本件虚偽記載をやめ,あるいは本件虚偽記載を訂正していた場合には,その後速やかにY1株につき上場廃止の措置が執られていた蓋然性が高く,少数特定者持株数基準に該当する事実の解消に向けた行動が取られたとしても,C社等の持株数に照らして上場廃止を回避するまでに至った可能性は極めて乏しかったとみるべきである。そうであれば,一般投資家であり,Y1株を取引所市場で取得した上告人らにおいては,本件虚偽記載がなければ,取引所市場の内外を問わず,Y1株を取得することはできず,あるいはその取得を避けたことは確実であって,これを取得するという結果自体が生じなかったとみることが相当である。
 
有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が,当該虚偽記載がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合,当該虚偽記載により上記投資者に生じた損害の額,すなわち当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額は,上記投資者が,当該虚偽記載の公表後,上記株式を取引所市場において処分したときはその取得価額と処分価額との差額を,また,上記株式を保有し続けているときはその取得価額と事実審の口頭弁論終結時の上記株式の市場価額(上場が廃止された場合にはその非上場株式としての評価額。以下同じ。)との差額をそれぞれ基礎とし,経済情勢,市場動向,当該会社の業績等当該虚偽記載に起因しない市場価額の下落分を上記差額から控除して,これを算定すべきものと解される。
 
一般投資家である上記投資者は,当該虚偽記載がなければ上記株式を取得することはなかったとしても,取得した株式の市場価額が経済情勢,市場動向,当該会社の業績等当該虚偽記載とは無関係な要因に基づき変動することは当然想定した上で,これを投資の対象として取得し,かつ,上記要因に関しては開示された情報に基づきこれを処分するか保有し続けるかを自ら判断することができる状態にあったということができる。このことからすると,上記投資者が自らの判断でその保有を継続していた間に生ずる上記要因に基づく市場価額の変動のリスクは,上記投資者が自ら負うべきであり,上記要因で市場価額が下落したことにより損失を被ったとしても,その損失は投資者の負担に帰せしめるのが相当である。したがって,経済情勢,市場動向,当該会社の業績等当該虚偽記載とは無関係な要因に基づく上記株式の市場価額の下落分は,当該虚偽記載と相当因果関係がないものとして,上記差額から控除されるべきである。
 
 
若干の検討
 
この判決は、まず、本件の事案では、もし虚偽記載がなかったら、投資者が有価証券を取得するという結果自体が存在しなかったと見るのが相当であるとしています。私は、西武鉄道事件は、虚偽記載と取得との因果関係が認められるレアなケースだと思っていたのですが、それを認めたのはごく一部の地裁判決にとどまっていたのに、最高裁がこれを認めたことは画期的であると思います。
 
ついで、多数意見は、虚偽記載がなければ有価証券を取得することはなかったといえる場合には、取得価額と処分価額の差額、もし保有し続けているときは口頭弁論終結時の市場価格(上場が廃止された場合は、非上場株式としての評価額)が基準となるといいます。
 
虚偽記載がなければ有価証券を取得することはなかったといえる場合には、取得後の市場価格の変化は損害の発生と基本的に関係がなく、市場価格の変動は、その取得者を原状に回復するためにいくらの賠償を与えたらよいかにのみ影響を与えるからです。そうであるならば、なぜ、取得後の、虚偽記載とは関係のない市場価格の下落分を控除するのでしょうか。
 
多数意見は、投資者が自らの判断でその保有を継続していた間に生ずる虚偽記載と関係のない市場価額の変動のリスクは投資者が自ら負うべきであるからといいます。これについては寺田裁判官が実質的には反対意見と見うる意見を述べており、田原裁判官が多数意見を補強する補足意見を述べています。この下りは大変に面白いのですが、長くなるので次回で。
 
くろぬま
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