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書庫ディスクロージャー

今年の10月と11月に、大阪証券取引所の金融商品取引法研究会で2回にわたってライツ・オファリングについて報告しました。ライツ・オファリングとは、株主に対し新株予約権を無償割当てし、株主や新株予約権の取得者が払い込みを行うことで株式を発行するタイプの資金調達をいい、証券会社等が売れ残りの新株予約権を取得して行使することを約束するコミットメント型と、証券会社等が関与しないノンコミットメント型とが想定されています。
 
ライツ・オファリングに係る金商法の改正について私は開示WGの座長として関与したのですが、そこでは、ライツ・オファリングのコミットメントを行う証券会社を引受証券会社として規制の対象とすることに意を用いました。ライツ・オファリングによる資金調達が健全に発展するには、証券会社に資金調達の是非やその条件を審査してもらい、審査内容に責任を持ってもらうことが必要だと考えたからです。この点は、コミットメント行為を引受けと位置づけることで実現しました。他方、株主全員に対する目論見書の交付を求めていてはライツ・オファリングは実現しないという実務からの要請を受け入れて、ライツ・オファリングについて一定の新聞公告を条件に目論見書の交付義務を免除しました。私個人としては、新株予約権を無償割当てされる株主は投資判断に直面していないので、新株予約権の無償割当段階での目論見書交付は不要である、新株予約権の行使段階の株主、新株予約権を取得しようとしている投資者、取得した新株予約権を行使しようとしている投資者は投資判断に直面しており、目論見書を必要としている、予約権の取得・行使段階での一律の目論見書交付が実務的に無理であれば、請求者に対して目論見書を交付する制度にしたら良いのではないかと考えていましたが(そのニュアンスは、公表されている議事録をご覧いただけると分かります)、①やはり実務的に難しいということ、②流通段階に入った新株予約権の取得者に目論見書を交付することは現行金商法からは求められないこと、③そうすると株主とそれ以外の新株予約権行使者とで扱いが異なって良いのかといった問題もあり、結局、流通・行使段階での目論見交付は見送られました。
 
大証の研究会の報告準備の段階で、元引受証券会社の民事責任(金商法21条1項4号)を検討していると、民事責任を負わせることにより、引受審査の充実を図るという改正法の趣旨(あるいは、少なくとも私が意図していたことがら)は、あまり実現していないのではないかということに気づきました。ここでは、その点を論じてみたいと思います(大証での報告は他の論点にも言及しており、その議事録はいずれ公表されますので、興味のある方はそちらもご覧下さい。なお、今回と次回の記事の内容は論文として発表する可能性があります)。
 
ライツ・オファリングに際してコミットメントを行う証券会社のうち発行者との間でコミットメントをする者は、元引受証券会社として金商法21条1項4号に、①有価証券届出書に重要な虚偽記載があった場合に、②当該有価証券を募集または売出しに応じて取得した者に対して、③虚偽記載により生じた損害を賠償する責任を負います。まず①については、元々、元引受証券会社は、(a)有価証券届出書の虚偽記載のうち財務書類に係るものについては虚偽記載を知らなかったことを証明すれば責任を免れ、(b)財務書類に係るもの以外については、相当な注意を用いたにもかかわらず虚偽記載を知ることが出来なかったことを証明した場合に限って責任を免れることになっています(金商21条2項3号)。学説は、この結論はおかしいと考え、元引受証券会社は金商法17条の目論見書の使用者として「相当の注意」を尽くす必要があるとか、目論見書の使用者に過ぎない一般の証券会社でさえ調査義務を負担するのに、元引受証券会社が注意義務を負わないとする解釈は論理的に不条理であるなどと主張していました。後者の見解が、解釈論として注意義務を負うとするものか否かは明らかでありませんが、もし解釈論としてそのような結論をとるのだとすると、それは「勿論解釈」だと思われます。
 
それでは、ライツ・オファリングにコミットメントを行う証券会社は、財務書類に係る虚偽記載、たとえば有価証券届出書が参照する有価証券報告書中の財務諸表の虚偽記載について、善意であれば免責されるのでしょうか。それとも、相当な注意を尽くしても知りえなかったと証明しないと免責されるないでしょうか。
 
今回の金商法の改正により、ライツ・オファリングでは目論見書は交付も作成もされなくなりました。そうすると、元引受証券会社が目論見書の使用者として相当の注意を尽くす義務があるとは言えなくなりました。また、誰も目論見書を使用しないのに、目論見書の使用者との比較から元引受証券会社の責任を導くことができるのかという疑問が生じてきます。
 
17条と21条の免責要件に齟齬があるという問題は、最終的には立法によって解決されるべきですが、その解決は難しそうであり、当面は解釈論で対応しなければなりません。私は研究会の報告で次のように言いました。コミットメントを与える証券会社に引受証券会社としての義務と責任を与えるのが望ましいという立法態度、および目論見書の使用者の責任は議論されていたが、届出書の虚偽記載に基づく責任への影響は考慮されていなかったという立法経緯に照らすと、目論見書の作成・使用がないという事実は決定的ではなく、仮に目論見書が使用された場合との比較からする勿論解釈により、コミットメントを行う元引受証券会社は財務書類についても「相当の注意」を尽くす義務を負うと解すべきである。
 
この解釈が解釈論として成り立つかどうかは分かりません。何かよいアイディアはないかと今でも考えています。次回は、より重要な、上記②③の問題を扱います。
くろぬま
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