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書庫ディスクロージャー

【文字フォントが読みにくいですがご勘弁を】
 
ジュリスト8月号で「金融商品取引法―施行5年の軌跡と展望」を特集することになり、私はいつものようにディスクロージャーについて依頼されました。「5年の軌跡と展望」というと、普通は平成18年金商法の改正内容とそれについての今後の展望について書くことになるのですが、ディスクロージャーはその後も頻繁に改正されています。そこで、平成18年以降の改正を横断的に取り上げることにしたため、内容はディスクロージャーあれこれになってしまいました。
 
ここではそのいくつかを紹介します。
 
まず取り上げたのは、ディスクロージャーの要否を決定する基準はなにかということです。
 
当然、第1は、「投資者がその情報を必要としているかどうか」でしょう。しかし、投資者の必要性だけでディスクロージャーの範囲を決することには、少なくとも2つの点で問題があると考えました。
 
1に、ディスクロージャーは情報を収集・編成して開示する発行者に少なからぬコストをかけ、そのコストは最終的に投資者も負担することになるため、投資者を保護するためのディスクロージャーが投資者に不利益を与えることになりかねません。そこで、発行者に何についてどれだけ詳細な情報の開示を求めるかを決するには、発行者の負担を考慮することも必要になると考えられます。
 
2に、発行者がディスクロージャーの負担を嫌って投資者に有価証券を提供しないようになると、投資者は当該有価証券に対する投資の機会を逸することになります。多様な投資対象を提供して国民の資産形成に資することができなければ、「国民経済の健全な発展」という金融商品取引法の目的を達成することができません。そこで、投資機会の提供や国民の資産形成という観点からも、発行者の開示コストを考慮することが必要になると考えました。
 
この第2の意味での発行者の開示コストの問題を扱ったのが、平成23年改正に係る英文開示と平成20年改正に係るプロ向け市場の開示であり、平成21年改正に係る売出し概念の見直しにおいて複雑な規制が導入されたことも、投資者の投資機会の確保を考慮したものであったと思います。
 
【英文開示の内容については省略】英文開示は平成17年の証券取引法改正で導入されたのですが、その利用は極めてわずかにとどまっており、投資者に外国会社への投資機会を提供できませんでした。その原因としては、外国会社は有価証券の募集・売出しの段階で日本語による有価証券届出書を作成しており、継続開示書類のみについて英文開示を認めても大きなコスト削減にならないことが指摘されていました
 
【平成23年改正の内容も省略】改正のポイントは、発行開示書類および臨時報告書についても外国会社等に英文開示を認めることにしたことですが、なお、証券情報については日本語・日本基準によって記載しなければなりません。外国会社等の情報が外国の市場において英語により開示されており、外国の投資者の十分な評価の対象となっていることが、発行開示において英文開示を認める根拠ですから、外国の市場で十分な開示が行われていない証券情報について英文開示を認めないことは筋が通っています。しかし、この結果、外国会社届出書には英文と日本語、外国基準と日本基準が混在することになり、かえって作成にコストがかかりはしないか、その結果、改正後の英文開示も利用されないのではないかという心配もあります。
 
今後も英文開示が利用されないのであれば他の方策を講じなければならないでしょう。その一つの候補は、投資者層を限定することによって発行者の開示負担を軽減する「プロ向け市場の開示」です。
 
【プロ向け市場の開示の解説をしたあと】プロ向け市場も現在、低調ですが、その理由は、プロ向け市場のディスクロージャーの仕組み以外の部分に存するようです。私は、①特定投資家向けに特化したディスクロージャーの内容、②自主規制による開示を民刑事責任及び課徴金でバックアップする仕組みは、他分野でも応用可能なものと評価しています。ここで①と②は必然的に結びつくものでないと思っています。たとえば、①の例として、外国基準・外国語による開示が考えられるわけですがが、これらを伝統的な法定開示と位置づけ、特定投資家向け法定開示とすることも可能でしょう。②については、タイムリー・ディスクロージャーのような自主規制に民刑事の責任・課徴金制度を適用するという方向性も、伝統的に法定開示の対象とされてきた開示内容を自主規制に移行し、これに民刑事の責任・課徴金制度を適用するという方向性も考えられるところです。
 
【売出し概念の見直しの説明をしたあと】既発行証券の勧誘である「売出し」を新規発行証券の勧誘である「募集」と整合的な定義にするだけならば、このような規制の柔軟化は要らないはずですし、規制の柔軟化が望ましいのであれば募集についても柔軟化をすべきであるといえます。なぜ、売出しに係るディスクロージャーにのみ、柔軟化とそれに必然的に伴う複雑な規制が必要だったのでしょうか。
 
その答えは、新規発行証券と既発行証券の性質が2点において相違することに求められると考えました。第1に、新規発行証券の取引は募集に該当するか否かの別しかありませんが、既発行証券の取引は売出しと私売出しのほかに個別の売買取引があり、ディスクロージャーの必要な売出しとそうでない個別の売買取引とを区別する必要があるのです。第2に、新規発行証券では募集により利益を得る発行者が発行開示を行う関係にありますが、既発行証券では売出しや個別の売買取引を行う者は、発行者の協力を得られなければ取引をすることができないという違いがあります。そして、1の性質から、売出しについては詳細な適用除外取引が必要となり、第2の性質から、金融商品取引業者等による情報提供の制度が必要になりました。そうしないと、外国で発行された有価証券の国内における売買取引が著しく制約され、投資者の投資機会が奪われることになるからです。
 
このように、売出しの定義は、発行開示を行わない発行者の有価証券に対する投資者の投資機会の確保という難しい問題を含んでいることが分かります。
くろぬま
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