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判決の紹介をしてから、だいぶ時間が経ってしまいました。今年出すべき原稿は出したので、もう一度、Halliburton判決を振り返ってみたいと思います。
証券経済研究所の研究会で、この判決を採り上げました。その際、HalliburtonⅠ、Amgenを知らないと、HalliburtonⅡを正しく理解できないことが分かりました。すこし遠回りですが、これらを振り返ってみます。
Erica P. John Fund, Inc. v. Halliburton Co., 131 S. Ct. 2179 (2011).
解説として、藤林大地「市場における詐欺理論の適用と損害因果関係の立証の要否」商事1979号(2012)53頁
【事実】
EPJ Fundが、Halliburton社が、(1)アスベスト訴訟の潜在的な責任の範囲、(2)ある建設契約から生じる予想収益、および(3)他の会社との合併の便益について、故意に、さまざまな虚偽の開示を行ったと主張して、1999年6月3日から2001年12月7日までにH社の株式を購入した者を代表してクラス・アクションを提起した。
却下の申立て(motion to dismiss)を退けたのち、地方裁判所は、EPJ Fundは、請求に係る損害因果関係を証明しておらず、連邦民事規則23条(b)項(3)号の要件を充たさないとして、クラスの認可を拒絶した。第5巡回区の先例は、クラス認可を得るために原告に損害因果関係の立証を求めていた。
クラス認可のために損害因果関係の立証が必要かどうか、巡回区の不一致を解消するために、最高裁は裁量上訴を認めた。
【判旨】 破棄差戻し
本件下級審は、クラス認可における共通性の要件を充たすために、信頼の立証が必要であり、信頼の証明のためには損害因果関係の証明が必要と考えた。
しかし、控訴裁判所の要件は、Basic判決の論理からは正当化されない。損害因果関係は、投資家が不実表示を信頼したか否かとは関係のない事柄に関するものである。後の損失が不実表示の発覚以外の要因によって生じたという事実は、投資家が最初の段階で不実表示を信頼したかどうか(それが直接であれ、推定される場合であれ)とは関係がない。
Halliburtonは、本件下級審が損害因果関係の名の下で実際に問うたのは、主張された不実表示が最初の段階で市場価格に影響を与えたか、すなわち価格影響性(price impact)の有無であったと主張する。しかし、控訴裁判所が言おうとしたことをHalliburtonがどう考えるにせよ、実際に言ったのは損害因果関係である。
【解説】
判決の内容は当然のように思えますが、Amgen判決、HalliburtonⅡ判決への伏線となっており、そう単純な問題ではありません。
Amgen Inc. v. Connecticut Retirement Plans and Trust Funds, 133 S. Ct. 1184 (2013).
解説として、藤林大地「証券集団訴訟の認可と不実表示の重要性の立証の要否」商事2015号(2013)38頁。
【事実】
コネチカット退職年金ファンドが、バイオテック会社Amgenとその役員(併せてAmegenという)に対し、証券クラス・アクションを提起し、信頼の要件については「市場に対する詐欺」推定を援用し、クラス・アクションの認可を求めた。地裁はクラスを認可し、第9巡回区控訴裁判所は、退職ファンドはクラス認可の前に虚偽記載または省略の重要性を証明する必要があるとのAmgenの主張を退け、クラスの認可を維持した。同裁判所は、また、クラス認可の段階でAmgenが提出した、重要性の反証となる証拠を考慮することを地裁が拒絶した点に誤りはなかったと判示した。最高裁は、クラス認可のために重要性を立証する必要があるかどうかについて、巡回区の不一致を解消するために、裁量上訴を認めた。
【判旨】
重要な問題は、クラスに共通する法または事実の問題が、個々のメンバーのみに影響する問題に対して支配的であるといえるためには、重要性の証明が必要かどうかである。その答えは2つの理由により「否」である。
第1に、重要性は客観的な基準に従って判断できるので、クラスに共通の証拠によって証明され得るからである。したがって、重要性は、23条(b)項(3)号にいう「共通の問題」(common question)である。
第2に、原告が略式判決の申立てや本案において、重要性の十分な証拠を提出できなかったときは、個々人の信頼の問題がクラスに共通の問題に優越するという事態を招くことはない。重要性の要件の証明に失敗したときには、すべての者にとって訴訟は終了し、個々人の信頼という争点が支配的になるような請求が残ることはない。
Amgenは、市場に対する詐欺理論の前提条件はクラス認可の前に充たされなければならないから、前提条件の一つである重要性もクラス認可の前に証明されなければならないという。しかし、重要性と異なり、市場の効率性および不実表示が公表されたことは、Rule10b-5の欠くことのできない要素ではない。後2者が証明されなくても、信頼の個別的立証が許されるが、重要性が証明されなければクラスの請求全部が棄却される。市場の効率性や公表の争点と異なり、重要性の争点が証明できなければ、個別問題が共通問題に優越することはないので、重要性は23条(b)項(3)号のクラス認可の前に証明される必要はない。
Amgenは、クラス認可は和解への大きな圧力となるから、認可前に重要性を争えないと、重要性を争う場面がなくなると主張する。しかし、その点は、不実表示や損害因果関係の要件についても同じである。議会は和解の圧力に対して、クラス認可段階で重要性の証明を求めること以外の手段によって対処したのであり、これに加えて裁判所が23条(b)項(3)号の再解釈により調整を行う必要はない。
Amgenは、原告の申立てに対して、重要性の反証を提出できないとした点に地裁判決の誤りがあると主張する。しかし、主張された不実表示が最終的に重要でないとされる可能性があることは、共通問題が支配的であることを妨げるものではない。本件の地方裁判所が、Amgenの反証の考慮を略式判決または事実審(トライアル)にとっておいたのは正しい。
本判決では、Thomas判事が反対意見を記載し、Kennedy判事がこれに同調、Scalia判示もその一部に同調している。
【解説】
不実表示の重要性は、市場に対する詐欺理論による信頼の推定を認める要件の一つなのに、クラス認可の段階で証明を要しないのはなぜか。判決はこの問題に対して、重要性が客観的証拠によって証明できるという点で「共通の問題」であること、仮に本案において重要性が証明されなかった場合には、訴訟は終了するので、改めてクラスの認可を判断する必要がないことを以って答えています。
クラス認可の段階で重要性の証明が不要だとすると、被告は重要性を反証する証拠を提出できないという不利益を受けますが、裁判所はそれもやむを得ないと考えたのです。この点は、HalliburtonⅡ判決で、一部変更されたとみることもできます(後述)。
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