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今年の振り返りのようになっていますが、金融法研究(金融法務事情2001号)にエルピーダメモリ株インサイダー取引事件東京地裁判決の評釈を書きました。以下、評釈の際に考えた、人とは少し変わったことを書いてみます(12月15日に高裁判決(控訴棄却)も出ているようです)。
この事件では2つの銘柄の取引が訴追の対象となっているのですが、エルピーダ株については、被告人の平成21年5月15日および18日の買付行為について、判決は、同年3月26日に決定された重要事実が、同年6月30日に公表されたと認定して、被告人を有罪としました。被告人は、同年1月末頃に決定された事実が、同年2月6日に公表されたと主張していたのですが、それは認められませんでした。
ここで私が疑問に思ったのは、もし、被告人が平成21年1月中旬にエルピーダ株を買い付けていたら、裁判所は、3月26日に決定があったと認定しただろうかということです。私は決定時期が恣意的に判断されたといっているのではありません。会社の事業上の決定が段階的に行われることは良くあることなので、被告人が取引をしたときに知っていた未公表の事実に照らして、その決定時期を決めることは、おかしなことではないのです。
決定事実の決定が段階的に行われることがあるように、その公表も段階的に行われることがあります。判決が認定したように6月30日に公表があったことはたしかですが、だからと言って2月6日に公表がなかったと言い切ることはできません。1月末に決定された事実の一部が2月6日に公表され、残りの未公表部分とその後の決定事項の展開で加わった未公表事実の総体が6月30日に公表されたと見ることも可能です。重要なのは、繰り返しになりますが、行為者が取引時に知っていた未公表の事実(知ったのち、取引時までに、何らかの形で公表され、削られた部分を除く残り)が、投資判断にとって、なお重要なものであったかどうかではないでしょうか。
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インサイダー取引






