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9月に監査研究学会というところに呼ばれて、報告をしました。テーマは、監査上重要な事項(Key Audit Matters, KAM)を監査報告書に記載するという、新しい国際監査基準を日本で導入すると、監査人はどのような責任を負うかという問題です。KAMとは、監査人が監査において重要と考えた事項であり、監査報告書に当該事項が重要であると考えた理由を記載することが想定されています。
監査人の責任には、会社法上の任務懈怠責任と金商法上の虚偽記載責任があるので、それに沿って説明しましたが、門外漢の私にとって今一つ理解できなかったのは、なぜKAMを監査報告書に記載させるのか(KAMの目的)です。
国際監査・保証基準審議会の報告は、KAMの記載の目的は、監査の透明性を高めることにより監査報告の価値を高めることであるとしているのですが、それはどういう意味でしょうか。
監査報告書にKAMを記載することで、監査意見の信憑性が常に高まるとは思えません。KAMの各事項とKAMに対する対応を見て、投資家は、ある適正意見については、KAMの記載がない場合に比べて、その信憑性を高く評価し、別の適正意見については、KAMの記載に照らして、その信憑性を割り引いて考える。透明性を高めるとは、監査報告書のこのような利用を想定しているのではないかと思います。
果たしてそんなことが可能なのか、KAMの適示と対応をどんなに詳しく記載させても、投資家がこれによって監査意見の信憑性を判断できないと考えるのであれば、そもそもKAMを導入する意味がありません。反対に、KAMの導入目的を是認する以上、その目的を達成することが可能になるような事項をKAMとして記載させるべきではないかと考えました。
法律家特有の演繹的な思考方法かも知れません。
報告を基にした原稿は、現代監査25号(2015年3月)に掲載されます。
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