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消費者法研究会という研究会に呼ばれて、商品先物取引に関する判例の評釈をしました。
その事件(名古屋地高判平成25・3・15判時2189号129頁)では、ごく小さい論点なのですが、委託者が、商品先物取引業者の取締役の内部統制構築義務違反に基づく会社の不法行為責任(会社法350条)も追及しています。判決は、会社法429条1項に基づく取締役の第三者(委託者)に対する責任を認めつつ、会社法350条に基づく請求については、Yの代表者が不法行為をしたとは認められない(会社法429条1項に基づく責任は法が特に認めた責任であって不法行為責任ではない)から、Xの主張はその前提を欠くものであり、採用できないと退けています。
私が思い浮かんだのは、最判平成21・7・9判時2055号147頁です。この事件では、代表取締役に内部統制構築義務違反はないとして会社の350条責任は否定されましたが、内部統制構築義務違反が会社の不法行為を基礎づけることを前提としているように読める点は、会社に対する任務懈怠が直ちに第三者に対する故意・過失に当たるわけではないと批判されているところです。
本件判旨は、この学説の上記批判に近いように読めます。しかし、学説は、任務懈怠が直ちに・・当たるわけではないと批判しているのであって、任務懈怠責任を生じさせる行為が不法行為責任を生じさせることはありえないと言っているわけではありません。429条1項責任が法定責任だから、常に不法行為にならないとする判旨は妥当ではありません。
そこで最判平成21年のケースで、内部統制構築義務違反が投資家との関係で不法行為を構成するかどうかを考えてみると、東京地判平成20・4・24判時2003号10頁(西武鉄道事件)がいうように、有価証券報告書提出会社の取締役は、有価証券報告書の重要な事項について虚偽の記載がないように配慮すべき注意義務があり、これを怠った場合には、有価証券を取得して損害を受けた者に対して不法行為責任を負うと考えられます。財務報告の信頼性の確保は内部統制の目的の一つですから、内部統制構築義務に違反した取締役は、上記の注意義務に違反したと認められ、投資家に対する取締役の不法行為が成立するのです。したがって最判平成21年の事例でも、内部統制構築義務違反が投資家との関係で不法行為になるといえるのではないでしょうか。
この考え方を本件に及ぼすと、商品先物取引の勧誘を業務とする会社の取締役には、従業員が顧客に対し違法な勧誘を行わないよう配慮すべき注意義務があり、これを怠った場合には顧客に対し不法行為責任を負うと考えられます。内部統制は法令遵守を目的の一つとしているので、内部統制構築義務違反という任務懈怠は、顧客に対する取締役の不法行為の根拠となるのではないでしょうか。
以上の議論をやや一般化すると、詐欺的な行為により第三者を取引に誘い込む直接損害事例において、違法行為を防止するための内部統制構築義務の違反という取締役の任務懈怠は、一般的に、第三者に対する不法行為の根拠となるといえることになります。このように考えると、第三者に対する詐欺的な行為がなぜ会社に対する任務懈怠になるのかという疑問は解消され、結局、直接損害事例に会社法429条1項を適用して取締役に責任を負わせることは、取締役の第三者に対する不法行為責任を認定するのと同じことになるのではないでしょうか。
上記の議論を含む私の評釈は、消費者法25号(2014年12月)に掲載されています。
今年の決算おしまい! 本格論文を書いていないなあ。
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