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Global Forum 2016 (1)

フランクフルトにあるゲーテ大学に日米独中のロースクールの学生を集めて授業を行うという企画(Global Forum, 名前が大げさですね)があり、5年ぶりに参加してきました。日本からは早稲田、アメリカはペンシルバニア、ドイツはローはないが博士課程の学生を適当に集める、中国は精華大学なのですが、今回は学生のビザが間に合わず不参加(もっとも、真相は不明)でした。(写真上は、ゲーテ大学前景、下は法学部)
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テーマは、Corporate Misconductに基づくResponsibility。学生にはフォルクスワーゲンの事例が与えられ、講義を聴いたうえでグループに分かれて発表します。このテーマから予想されるのは、CSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)とか、コーポレート・ガバナンス・コードです。5年前に金融法をテーマにやはりドイツで開催した時(「その他」カテゴリーのすぐ下に記事があります)には、江頭憲治郎教授と私が参加し、江頭先生が日本の地震保険の話(2011年だった!)を、私が強制的公開買付制度の話をしました。今回、まずこの2人に話が来たので相談したところ、私が金商法の開示義務違反に基づく発行者の責任(この場合はresponsibilityというよりliability)の話をするのは良いとして、日本企業のCSRの話をしても面白くないから、環境法とか労働法の先生の方が良いのではないかということになり、江頭先生の代わりに労働法の石田眞教授に加わっていただくことになりました。石田先生は江頭先生と同年代(今年定年)で、私は名古屋時代にお世話になっており、今回の出張はとても楽しみなものとなりました。

発行者の投資家に対する責任は、会社の対外的責任というカテゴリーからは少し外れますが、私がこのテーマを選んだのは、次のような個人的な経験からでした。

私の最初の論文(助手論文)は、「証券市場における情報開示に基づく民事責任」、英文タイトルは意訳ですが、Corporate Disclosure and Civil Liabilitiesでした。当時(発表は1988−89年)は、証券取引法の規定はあったものの判例がなく、実務からも注目されていませんでした。それから20年が経過し、西武鉄道事件やライブドア事件が起き、2004年には法改正が実現しました。助手論文では、2004年改正にかかる金商法21条の2のような損害額の推定規定を提案していた訳ではありませんが、売主にも原告適格を付与すべきことは提案しており、その改正は2014年に実現しています。

この分野は、アメリカ法が先行していますが、アメリカではクラスアクションと保険のせいで、ほとんどの訴訟は和解で終了してしまい、提起すると判決が出るまで争うことの多い日本の方がこの分野の判例法は発達している(または、発達する可能性もある)といえます。そこで、西武鉄道事件とライブドアについては裁判所ホームページに最高裁判決の英訳(少数意見や反対意見を含めて)が載っていることもあり、日本の判例法と立法の展開を紹介・分析しようと考えたのです。PPT資料の作成はなかなか楽しく、スライドは40枚を超えました。基本的なストーリーは、法学セミナーの「民商法の溝をなんとか」というシリーズに書いたものと同じです。

さて、ハンブルクのマックスプランク研究所に中出教授という保険学の先生が留学しておられ、主催校のWandt教授(保険法)の招きでGlobal ForumでD&O保険の話をされました。中出先生によると、最近は発行者の開示違反に基づく損害賠償責任を付保する保険もD&O保険の付帯条項として売られているとのことです。日本でD&O保険が売れるようになったのは1993年ころからだと思いますが、証券訴訟が増えたため付保範囲が広がったというのです。そうすると、日本でも、近い将来、証券訴訟は和解で終了してしまい、判例法理の発展は望むべくもないという、法学者にとっては悲しい状況に陥るかも知れません。ここ10年の訴訟によって新たな解釈問題がどんどん生じており、学説の議論は続くことを思うと残念です。
くろぬま
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