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金商法は、インサイダー取引規制の対象となる情報を内部情報と外部情報に分け、内部情報(重要事実)を決定事実(166条2項1号)、発生事実(同2号)、決算変動(同3号)、包括条項(同4号)に分けています。5号〜8号は子会社にかかる決定事実・発生事実・決算変動・包括条項です。
重要事実を4つに分けて、とくに決定事実と発生事実について具体的な事実を列挙し、これらと包括条項を組み合わせた(決算変動も、具体的事実が発生していなくても業績の向上・悪化をもって重要事実とするものなので、一種の包括条項といえます)のは、具体列挙により、何が禁止されるインサイダー取引かを明確にしつつ、包括条項により、柔軟な法の適用を目指したのだと説明することが、一応、可能です。
しかし、なぜこのような規定ぶりにしたのか、本当のところは分かりません。1988年の立法当時、インサイダー取引の未然防止の重要性が強調されていました。立法に関与した人の話を総合すると、インサイダー取引禁止立法は、発行会社や証券会社の関係者にインサイダー取引の未然防止を徹底させるための法律であり、実際に罰則が適用されることは想定していなかったようです。法違反の未然防止を図るためには、何をしてはいけないか、考えられるところをすべて列挙して1号と2号を作ったようなのです。
構成要件の明確化を図るために罪となる行為を具体的に列挙することは不合理ではありませんが、決定事実と発生事実を分けたことで、決定事実の要件から「実現可能性の要件」が抜け落ちてしまった(ように読める)ことは問題でした。発生事実はすでに発生した事実ですから、その事実の実現可能性は問題になりません。ただし、事実(情報)の確実性は問題になります。EUでは実現可能性と確実性をきちんと分けて議論しています。それに対し、決定事実は、形式的には「決定したこと」=重要事実ですが、決定の対象となる事項は、多くの場合、将来に実現される事項です。そこで、決定事実には、必ず実現可能性の有無・程度が付き纏うのです。実現可能性の乏しい決定を行っても、投資者の投資判断に影響を与えるとは考えられないからです。そこで、解釈論としては、「決定した」という要件の中に決定にかかる事項の実現可能性を読み込むことが必要になります。もし当時の立法担当者がこのことに気づいていたら、きっと手当てをしていたでしょう。
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この前はどうもありがとうございました。
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[ みさき ]
2008/5/3(土) 午前 2:13