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インサイダー取引に関する二つ目の最高裁判決は、M&Aに関する決定事実を弁護士が知って買収対象企業の株式を購入した日本織物加工株事件に対するものでした。この判決は、業務執行を決定する機関とは何か、株式の発行を行うことについての「決定」とは何かという、二つの重要な問題を扱っています。 業務執行決定機関の意義について、判決は、「実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関であれば足りる」としました。インサイダー取引規制上の業務執行決定機関は、誰の決定であれば投資者の投資判断にとって重要といえるかという観点から決すべきですから、判旨は妥当です。いわゆるワンマン会社で社長が一人で決めているのであれば、社長が業務執行決定機関となります。 ある会社ではAが実権を握っていると思われていたが、実際にはAはBの了承がなければ決定を実行に移さなかった場合には、業務執行決定機関はAでしょうか、AとBでしょうか。投資者はAを決定機関と考えるでしょうから、Aの決定があれば投資者の投資判断に重要な影響を与えるでしょう。しかし、事実のレベルでは、Bの了承がなければその決定は実行に移されないのですから、やはりAの決定だけでは決定があったと見るべきではありません。Aの決定を知ったインサイダーの取引は、構成要件に該当しないため処罰の対象にならないと解すべきです。 第二の問題について最高裁は、株式の発行を行うについての決定をしたというためには、会社の業務執行決定機関において株式の発行の実現を意図して行ったことを要するが、当該株式の発行が確実に実行されるとの予測が成り立つことを要しないとしました。この判決に対する評釈で、私は、もし本件判旨が、「決定」に該当するためには実現可能性が極めて低くてもよいとする趣旨であるとすると、インサイダー取引規制を不当に拡大することになるので賛成しがたいと書きました(拙著128頁)。私は最高裁判決が実現可能性は極めて低くてもよいとする趣旨であるとは言っていない(太字部分)ことに注意してください。ところが、村上ファンド事件東京地裁判決は、実現可能性はあれば足り、その高低は問題にならないと述べました。このような最高裁判決の理解には、問題があると思いますし、実現可能性が低い決定は投資者の投資判断に重要な影響を与えないはずですから、実現可能性が低くても決定事実に当たるとする解釈は、実質的にも妥当でないと考えています。 それでは、どの程度の実現可能性があれば決定があったといえるでしょうか。決定が投資判断に与える影響(重要性)は、理論的には、決定に係る事項が実現した場合の規模と実現可能性を掛け合わせたものになるはずなので、事項の規模が大きければ実現可能性は低くても決定は投資判断に影響を与え、事項の規模が小さければ実現可能性が高くなって初めて決定は投資判断に影響を与えるということはできるでしょう。また、決定に係る事項が公表されたときに株価に影響を及ぼしたかどうかを事後的に確かめれば、投資判断に影響を与える重要な決定であったかどうかが、ある程度分かるはずです。
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インサイダー取引




文章を書くのがお得意のようですね。
また、お伺いし勉強させていただきます。
[ PC大好き ]
2008/5/17(土) 午前 2:41
OLやってます。毎日刺激なく平々凡々と暮らしておりましたが、
素敵なブログに出会えて、楽しみ(刺激)が
一つ増えそうです。
応援しています。これから毎日読ましてもらいますね。
[ ひかる ]
2008/5/30(金) 午後 6:13