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継続開示書類の虚偽記載に関する発行者の無過失責任を定める金商法21条の2第1項は、取得時差額の賠償のみを認めたものか、一般不法行為責任を認めたものかという問題が、重要性を増しています。この問題については、きちんと論文を書かなくてはならないと思っているのですが、アーバン事件の①判決と③判決が対照的な判示をしていますので、紹介しておきましょう。
①判決は、概要次のように述べます。
金商法21条の2第1項本文にいう「虚偽記載等により生じた損害」とは、虚偽記載等がなかったと仮定した場合の利益状態と、虚偽記載等があったことによる現実の利益状態との差をいうものと解される。したがって、虚偽記載等がなければ現実の購入価格よりも低い価格(想定価格)で当該有価証券を購入することができたと認められる場合には、当該有価証券を想定価格で購入することができたと仮定した場合の利益状態と、当該有価証券を現実の購入価格で購入したことによる現実の利益状態との差額が、当該虚偽記載等により生じた損害と認められるから、「現実の購入価格−想定価格」により算出される額が、当該虚偽記載等により生じた損害の額と認められる。・・・他方、虚偽記載がなければそもそも当該有価証券を購入しなかったと認められる場合には、当該有価証券を購入しなかったと仮定した場合の利益状態と、当該有価証券を購入したことによる現実の利益状態との差が、当該虚偽記載等により生じた損害と認められるから、「当該有価証券の購入価格−当該有価証券の売却価格(未売却の場合は当該有価証券の時価)」により算出される額が、当該虚偽記載等により生じた損害と認められる。
この判示は、21条の2第1項の責任は不法行為責任であり、不法行為責任には「差額説」が妥当するというものです。①判決が差額説を虚偽記載による責任に照らして具体化した部分は、きっちり書かれており、個人的には全くその通りだと考えています。この考え方に依れば、発行者の21条の2第1項の責任を追及するときも、原状回復的損害賠償(取得自体損害説ともいう)の主張・立証が許されることになります。
これに対し③判決は、次のように判示しました。
金商法21条の2第1項が定める虚偽記載等により生じた損害とは、虚偽記載等がなかったとした場合にあるべき利益状態と虚偽記載等がされた場合の利益状態との差であり、有価証券の取得価額から虚偽記載等がなかったとした場合に形成されていたであろう有価証券の価額を控除した額であるというべきである。
この判示は21条の2第1項は、取得時差額の賠償しか認めていないとするものです。③判決はその理由を示していませんが、一つ考えられるのは、同条2項の損害額の推定規定が取得時差額説に立脚しているということでしょう。しかし、2項は損害額の推定を利用することを認めるための規定であり、その解釈が1項を縛るとは思えませんから、より実質的な理由が必要でしょう。・・・ここから先は、もう少し勉強してから論文で書くことにします。なお、②判決は、21条の2第1項の性質論に触れていません。
最後に、①判決が原状回復方式(取得自体損害説)をどう扱ったかみておきましょう。
本件投資家は、アーバン株の購入動機等の具体的事実関係を何ら主張立証するものでなく、本件全証拠によっても、本件虚偽記載等がなければ投資家がアーバン株を購入しなかったことを認めるに足りる証拠はない。むしろ、①本件虚偽記載等に係る真実情報は、これが直ちにアーバン株の上場廃止事由等になるものとまではいえないこと、②本件CBの発行決議日のアーバンの株価・出来高を基準とすれば、アーバンはBNPパリバから本件スワップ契約に基づく変動支払金の支払いを受けることによって、合計274億余円の資金調達が可能であったこと、③投資家は、アーバン株の株価が大幅に下落している中でアーバン株を購入していること等の各事情に照らせば、本件虚偽記載等の有無にかかわらず投資家はアーバン株を購入していたものと認めるのが相当である。
①判決は「虚偽記載がなかったら購入していなかったであろう」ことの主張・立証ができていないとしたのですが、そのような評価は、真実情報が開示されても、アーバンはすぐに民事再生手続開始の申立てをせず、株価が急落することもなかったとの、①判決の裁判所の認定を前提にしているように思われます。②判決のように、虚偽記載がなければ資金調達は実現せず、真実情報を開示すればより早期に再生手続に移行していた(再生手続に入ると上場廃止になる)という認定の下に、①判決の裁判所が原状回復方式を検討していたらどんな結論になったのか、興味を惹かれるところです。
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さて、③判決はどう判示したでしょうか。③判決の一般論は②判決に近いですが、微妙な違いもあります。そして③判決の結論は、7割の減額を認めた点で、むしろ①判決に近いのです。判決は要旨、次のように述べます。
本件臨時報告書に真実の情報が記載されていたとすれば、アーバン株式の株価は一層低下して資金調達に困難を来たし、より早期に民事再生手続開始の申立てがされたものと認められ、当該投資家がアーバンの株式を取得した平成20年7月15日ころの時点で、アーバン株式の株価は、実際よりも低くなっていたと推認することができる。そうすると、投資家が受けた損害の全部が、虚偽記載によって生ずべき値下り以外の事情によって生じたとまではいうことができない。
本件臨時報告書の公衆縦覧がされた平成20年6月26日の時点でアーバン株式の株価はおおむね下落し続けていたこと、本件取引(CBとスワップの組合せ)は予定されていた300億円の資金調達をすることができないなど、投資家に損失をもたらすリスクを有するものであり、真実の情報が記載されたとすれば、7月15日の時点で株価は実際よりも低くなっていたと推認されること等を考慮し、金商法21条の2第5項を適用して、7割弱に当たる額を控除した額を損害と認める。
第1段落で③判決は②判決と似たようなことを述べているのですが、本件の資金調達は虚偽記載がなければ成立し得ないものであったとまでは認定していません。この部分は、投資家の受けた損害の全部が「他の事情」によって生じたとはいえないことを認定するために述べられているようです。すると①判決との比較が必要になりますが、①判決が立てた公式は、虚偽記載の公表日以降に生じた損害の全部が「他の事情」によって生じたかどうかを問題としているのに対し、③判決は、取引時点の取得時差額という損害の全部が「他の事情」によって生じたかどうかを問題にしています。これは2つの問題が混在しています。一つは、理論的にいって、取得時差額が損害なのか公表後の下落額が損害なのかという問題。もう一つは、21条の2第5項の文脈(推定損害額の主張があり、5項の減額が論じられる場合)において、法技術的にどう考えるべきかという問題です。どちらの解釈が妥当なのか、検討してみる価値があるように思います。
③判決は、第2段落でも、真実が開示されていたらより早く倒産していたであろうという認定をしながら、②判決よりも①判決に近い7割の減額をしました。③判決の投資家は7月15日にアーバン株式を取得しています。6月26日に真実の情報を開示していたら7月15日までに民事再生手続開始の申立てがされていたかも知れないと裁判所は考えたのかも知れません(それにしては減額の割合が低いですが)。しかし、それは原状回復的な損害賠償の主張を認めることであり、実は③判決の裁判所は、21条の2第1項の定める損害とは取得時差額であると明言しているのです。この点は、もう少し論じる価値がありそうなので、もう一回くらい、この話を続けます。
もう一点気になるのは、③判決が取引時点でアーバン株が下落傾向にあったことを減額の際に考慮していることです。②判決は、公表日以前に下落傾向にあったとしており、その意味が良く分からないと前回の記事に書きましたが、③判決のこの部分も良く分かりません。「取得時に下落傾向にあったのだから買ったお前が悪い」ということでしょうか。それなら過失相殺ですが、21条の2第5項は過失相殺には使えないはずです。
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臨時報告書の虚偽記載の訂正と民事再生手続開始の申立てが同じ日に行われたことについて、②判決は大要、次のように論じています。
平成20年8月14日以降のアーバンの株価の下落は民事再生手続開始申立てによるものであって、本件各記載(虚偽記載)とは無関係であるとの主張について。
アーバンは、①不動産市場の低迷を背景に資金繰りがひっ迫し、平成20年5月ころには、「万が一の時のために」民事再生手続開始申立ての準備について弁護士に相談していたこと、②同年6月から7月を償還期限とする社債の償還の目途が立たず、至急資金調達を行う必要に迫られていたこと、③同年6月19日には、本件CBの発行と本件スワップ契約の組合せにより資金調達を行う見込みとなり、資金繰りの目途が立ったとして民事再生手続開始申立ての準備を中止したこと、④当時のアーバンには、本件CBとスワップの組合せのほかに資金調達の方法の選択肢がなかったことが認められ、これらの事実によれば、本件CBの発行および本件スワップ契約の締結自体が、アーバンの倒産回避を目的とするものであたと認められる。
さらに、本件CBとスワップの仕組み自体は、本件CBの発行を公表し、本件スワップ契約については非開示とすることによる株価の維持ないし回復を前提として初めて機能するものというほかない。本件スワップ契約が当初から開示されていれば、アーバンは、より早期に民事再生手続等の法的整理を余儀なくされ、アーバン株式の市場価格は暴落していたというべきである。したがって、本件各記載と本件民事再生手続開始の申立ては、相互に密接に関連するのであって、全く別個の事情であるとの主張は採用しがたい。
もっとも、アーバン株式の価格は、平成20年8月13日以前において、ほぼ継続的に下落していたと認められ、原告の損害には、本件各記載によって生ずべきアーバン株式の値下り以外の事情によるものも一定程度含まれていることは否定できない。・・・金商法21条の2第5項により、原告の損害のうち2割をアーバンが損害賠償責任を負わない損害と認めるのが相当である。
この判決は、虚偽記載と民事再生手続開始の申立てが密接に関連していることを理由に、2割のみの減額を認めました。「密接に関連している」とは、虚偽記載がなければ本件CBとスワップの組合せによる資金調達は成り立たず、民事再生手続開始は避けられない関係にあるという意味です。このような指摘は①判決にはありませんでした。
上の判旨の第2段落(さらに・・・)の論理は分かりにくいです。おそらく、裁判所は、当初から真実を開示していたら民事再生手続開始の申立ては避けられなかったから、民事再生手続開始の申立ては減額事由として考慮すべきではないと考えたのではないでしょうか。実際には2割の減額をしているわけですから、全く考慮する必要がないのではなく、当初から真実を開示していれば株価は8割下落していたはずであると裁判所は考えたのでしょう。この見解は、21条の2第2項の推定規定を使わずに、想定価格と売買価格との差額を損害と認定する場面には妥当します。なぜなら、当初より真実が開示されていたとしても、そのときは民事再生手続開始の申立てはなされていないわけですから、取引時の取得時差額を計算するには真実情報公表の影響だけを考慮すれば良いからです。もっとも、判決は真実開示をすれば、より早期の倒産は避けられないといっているわけですから、判決が想定する倒産の時期より後に株式を取得した者には判旨の論理は当て嵌まらないと思う人もいるでしょう。この点については、個々の原告が取引をする時点で開示義務違反があれば、もしその時点で真実が開示されていたとしたらと仮定することが許されるから、どの原告にとっても、倒産情報を抜きにした取得時差額を考えることができるでしょう。
より重要な点は、本件では推定規定を使った上で、虚偽記載公表後の株価下落のうち何割が虚偽記載の公表によるものかが争われているということです。仮に、真実情報の公表で8割、民事再生手続開始申立てで10割株価が下落するとすれば、、①判決の裁判所であれば、6割程度の減額をするでしょう。それが、虚偽記載と民事再生手続(倒産)が密接に関連するというだけで、倒産の影響を度外視してよいのかは、(政策的考慮を無視して、純粋に投資者の被った損害の賠償を考えるとしても、なお)難しい問題でしょう。
なお、判決は第3段落で、アーバン株式の株価が継続的に下落していたことを理由に2割の減額をしていますが、継続的下落が、真実情報の漏洩や倒産の可能性の増大を反映したものであれば、当該下落分を減額する理由はありません。また、市場の一般的な傾向(たとえばリーマンショックによる市場下落)に対する反応として株価が継続的に下落していたのであれば、虚偽情報の発覚後の株価下落からそのような下落分を減額することは正当化されますが、本件では倒産により株式が無価値になっているので、そこから市場の一般的傾向に沿って下落した分を減額するのは無意味です。上に記したように、真実情報を開示していた場合の暴落率が8割という意味で減額したのであれば、そのように説明すべきだったと思います。
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①事件の原告(アーバン)は、金商法21条の2第4項による免責を主張し、その根拠として、公表日にアーバンが再生手続開始の申立てをしたことを挙げました。そこで①判決は、まず、次のような一般論を立てています。
株価下落の原因は多種多様なものが考えられる上、複数の原因が同時に作用して一定の株価下落を招来することもあり得るから、ある一定の株価下落により生じた損害の全部が、同条4項にいう「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情」により生じた損害であることの証明があるというためには、①虚偽記載等に係る真実情報の公表がなくても、他の特定の株価下落原因だけで、当該株価下落のすべてが生じたことの証明があることに加えて、②虚偽記載等に係る真実情報の公表だけでは、当該株価下落は一切生じなかったことの証明がなければならないと解するのが相当である。
本件が「複数の原因が作用して」といえる場合に当たるのかについては、後述のように議論の余地はあると思いますが、独立した原因の影響度を図るには判旨のいうようなテストを用いるのが妥当だろうと思います。①だけでは足りないというのが味噌です。判決はこれを事案に当てはめて、次のように言います。
アーバンが再生手続開始の申立てをしたことが原因となって、アーバンの株価が一気に下落し、1株1円に収斂するに至ることは、証拠および経験則に照らして明らかであるから、再生手続の申立てだけで公表日の翌日以降に生じたアーバンの株価下落のすべてが生じたことの証明はある。しかし、本件虚偽記載等に係る真実情報が市場に伝達されれば、アーバンの財務状況の改善可能性がそれだけ低いと市場が判断することは当然であるし、逆に、本件新株予約権付社債の発行の事実のみが市場に伝達されれば、アーバンの財務状況が改善されるとの期待を市場が抱くことになり、その分アーバン株の株価がかさ上げされると見るのが相当である。したがって、本件虚偽記載等に係る真実情報の公表は、それだけでアーバンの株価下落原因になり得るものというべきである。そうすると本件虚偽記載に係る真実情報の公表だけでは本件公表日の翌日以降に生じたアーバンの株価下落は一切生じなかったことの証明があるとは認められない。
つまり、①の証明はあるけれど、②の証明がないので、公表日以降の株価下落の全てが「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情」によって生じたとは認められないとしたのです。
もっとも、これだけでは、株価下落の一部が虚偽記載等以外の事情で生じたことを排斥できないので、判決はそれを認めたうえで、株価下落分のうち虚偽記載等に係る真実情報の公表だけでは生じなかった部分を証明することは、極めて困難といわざるを得ないので、金商法21条の2第5項を類推適用し、公表日の翌日以降に生じた株価下落分の8割に相当する部分をもって、虚偽記載に係る真実情報の公表だけでは生じなかった株価下落分と認めました。つまり、8割の減額をしたわけです。
最後の部分は評価が難しいところです。①判決は、虚偽記載等に係る真実情報と再生手続開始の申立てを別個独立の事実と見ていますから、それを前提として考えてみましょう。仮に、再生手続開始の申立てだけだと株価が10割下落し、虚偽記載等に係る真実情報の公表だけだと株価が4割下落する場合、5項による減額は、6割でしょうか、10/14(7割)でしょうか、あるいはlogとかを使うもっと複雑な計算を要するのでしょうか。・・・ところが、②③判決は①判決とは違った見方をしたのでした。
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体調不良のため、更新が遅れました。
平成20年にアーバンコーポレイションが臨時報告書に虚偽の記載をした事件で、再生債権査定異議事件の判決が3つ出ています。これらは、微妙に異なる判示をしていますので、紹介してみたいと思います。
私が目にした3つの判決とは、
① 東京地判平成22年1月12日判例タイムズ1318号214頁
② 東京地判平成22年3月9日金融法務事情1903号102頁①
③ 東京地判平成22年3月26日金融法務事情1903号102頁② です。
私なりに事実関係をまとめますと(必ずしも判決によって認定された通りではありません)、
アーバンコーポレーションは、平成20年6月に、BNPパリバを割当先として新株予約権付社債(発行総額300億円)を発行し、臨時報告書を提出しましたが、臨時報告書には、新株予約権の発行決議の事実のみを記載し、BNPパリバとの間のスワップ契約締結の事実を記載しませんでした。スワップ契約の内容は、アーバンは調達した資金をいったんBNPパリバに払込み、スワップ契約の条件に従ってBNPパリバがアーバンに支払いをするものでした。アーバンは、同年8月13日に臨時報告書の「新株予約権付社債の手取金の使途」欄を、「短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定です」の前に「割当先との間で締結するスワップ契約に基づく割当先への支払いに一旦充当し」を挿入する形で訂正する訂正報告書を提出するとともに、同日、東京地方裁判所に対し、民事再生法に基づく再生手続開始の申立てをしました。同裁判所は、同月18日、再生手続開始決定をし、アーバン株式は9月14日に上場廃止となりました。この間の株価の推移をみると、平成20年6月26日(臨時報告書の提出日)が一株344円、8月13日の公表直前が一株62円、14日は一株32円(ストップ安)、15日に一株6円(ストップ安)、上場廃止前の最終取引日(9月12日)は一株1円でした。また、金融庁は平成20年10月10日、臨時報告書の虚偽記載について課徴金納付命令にかかる審判手続開始の決定をし、同年11月17日、課徴金150万円の納付を命ずる旨の決定をしました(開示が臨時報告書でなされ、有価証券届出書が提出されていないのは、「海外における募集」という扱いだったからのようです)。
臨時報告書の公衆縦覧後にアーバン株を取得し、虚偽記載の公表後上場廃止前に売却した投資者が、アーバンに対する再生債権(金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求権)を届出、査定を受けたのに対し、不服の当事者(投資家またはアーバン)が異議を申立てたのが、これらの訴訟です。
裁判所は、まず臨時報告書に重要な事項に関する虚偽記載または記載漏れがあったかどうかを判定しなければなりません。、①判決は、次のように判断しています(要約)。
本来であれば「手取金の使途」の欄には、①手取金の全額をBNPパリバとの間のスワップ契約に基づく当初支払金の支払いに使用すること、②BNPパリバから支払いを受けることとなる変動支払金をアーバンの債務の返済に使用する予定であること、③変動支払金の額は、アーバンの株価、出来高、およびBNPパリバが選択するヘッジ比率によって変動するものとされていること、④そのため、アーバン株の株価が下落するなどした場合には、変動支払金の総額が手取金の総額に達しない可能性や、変動支払金が一切支払われない可能性もあることを記載する必要があったにもかかわらず、現実には臨時報告書の欄に上記の記載しかなかった。したがって、臨時報告書の記載は、金融商品取引法21条の2第1項本文にいう「虚偽記載等」に当たる。
スワップ契約の詳しい内容については説明を省略しますが、この判示から大体のところを想像してください。判決のいう「虚偽記載等」とは、「重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている」ことと定義されていますので、重要な記載漏れを含んでいます。
②判決は、上記①から④を推察できる程度に、スワップ契約の概要を記載する必要があったとし、本件各記載が「重要な事項について」の「虚偽の記載」であるかは措くとしても、「記載すべき重要な事項・・・重要な事実の記載が欠けている」ものに当たるとしています。それに対し③判決は、スワップ契約に関する記載(具体的には、上記①②、および受領金の取得の時期とその額は不確定であると判断できる程度の契約内容の記載)がされていなかったことが、重要事項についての虚偽記載等に当たるとしています。
表現や、記載すべき内容の詳しさについてニュアンスの違いはあるものの、重要な記載漏れがあるとした判断は動かないところでしょう。
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