ここから本文です

書庫全体表示

記事検索
検索

ブログ再開のお知らせ

しばらくブログの更新を休んでいましたが、まもなく再開します。

このブログを始めたのは、拙著「証券市場の機能と不公正取引の規制」の宣伝を兼ねて、その内容を紹介するためでした。しかし、拙著の内容の紹介はすぐにネタが尽きてしまい、「金融商品取引法」の体系書の執筆を計画していたことから、その準備として考えたことや書き溜めたことを紹介することに、軸足が移りました。

その後、体系書の執筆が遅れ、本も書かないでブログを更新するのもいかがなものかと思うようになったため、ブログの更新も滞るようになってしまいました。その体系書がこの秋に出版されることになりましたので、晴れて、その内容の一部紹介や、その他もろもろのことを、あまり肩肘張らずに書いていこうと思います。

なお、旧著「証券市場の・・・」は古くなったのと、アマゾンのアカウントがうまく更新できなかったので、アマゾンでの販売を中止しています。研究者・院生・実務家の方で興味のある方には頒布いたしますので、直接、メールで申し込んでください。体系書の方は有斐閣から買ってください

消費者法研究会という研究会に呼ばれて、商品先物取引に関する判例の評釈をしました。
 
その事件(名古屋地高判平成25・3・15判時2189号129)では、ごく小さい論点なのですが、委託者が、商品先物取引業者の取締役の内部統制構築義務違反に基づく会社の不法行為責任(会社法350条)も追及しています。判決は、会社法429条1項に基づく取締役の第三者(委託者)に対する責任を認めつつ、会社法350条に基づく請求については、Yの代表者が不法行為をしたとは認められない(会社法429条1項に基づく責任は法が特に認めた責任であって不法行為責任ではない)から、Xの主張はその前提を欠くものであり、採用できないと退けています。
 
私が思い浮かんだのは、最判平成21・7・9判時2055号147頁です。この事件では、代表取締役に内部統制構築義務違反はないとして会社の350条責任は否定されましたが、内部統制構築義務違反が会社の不法行為を基礎づけることを前提としているように読める点は、会社に対する任務懈怠が直ちに第三者に対する故意・過失に当たるわけではないと批判されているところです。
 
本件判旨は、この学説の上記批判に近いように読めます。しかし、学説は、任務懈怠が直ちに・・当たるわけではないと批判しているのであって、任務懈怠責任を生じさせる行為が不法行為責任を生じさせることはありえないと言っているわけではありません。429条1項責任が法定責任だから、常に不法行為にならないとする判旨は妥当ではありません。
 
そこで最判平成21年のケースで、内部統制構築義務違反が投資家との関係で不法行為を構成するかどうかを考えてみると、東京地判平成20・4・24判時2003号10頁(西武鉄道事件)がいうように、有価証券報告書提出会社の取締役は、有価証券報告書の重要な事項について虚偽の記載がないように配慮すべき注意義務があり、これを怠った場合には、有価証券を取得して損害を受けた者に対して不法行為責任を負うと考えられます。財務報告の信頼性の確保は内部統制の目的の一つですから、内部統制構築義務に違反した取締役は、上記の注意義務に違反したと認められ、投資家に対する取締役の不法行為が成立するのです。したがって最判平成21年の事例でも、内部統制構築義務違反が投資家との関係で不法行為になるといえるのではないでしょうか。
 
この考え方を本件に及ぼすと、商品先物取引の勧誘を業務とする会社の取締役には、従業員が顧客に対し違法な勧誘を行わないよう配慮すべき注意義務があり、これを怠った場合には顧客に対し不法行為責任を負うと考えられます。内部統制は法令遵守を目的の一つとしているので、内部統制構築義務違反という任務懈怠は、顧客に対する取締役の不法行為の根拠となるのではないでしょうか。
 
以上の議論をやや一般化すると、詐欺的な行為により第三者を取引に誘い込む直接損害事例において、違法行為を防止するための内部統制構築義務の違反という取締役の任務懈怠は、一般的に、第三者に対する不法行為の根拠となるといえることになります。このように考えると、第三者に対する詐欺的な行為がなぜ会社に対する任務懈怠になるのかという疑問は解消され、結局、直接損害事例に会社法429条1項を適用して取締役に責任を負わせることは、取締役の第三者に対する不法行為責任を認定するのと同じことになるのではないでしょうか。
 
上記の議論を含む私の評釈は、消費者法25号(2014年12月)に掲載されています。
 
今年の決算おしまい! 本格論文を書いていないなあ。

KAMの記載目的

9月に監査研究学会というところに呼ばれて、報告をしました。テーマは、監査上重要な事項(Key Audit Matters, KAM)を監査報告書に記載するという、新しい国際監査基準を日本で導入すると、監査人はどのような責任を負うかという問題です。KAMとは、監査人が監査において重要と考えた事項であり、監査報告書に当該事項が重要であると考えた理由を記載することが想定されています。
 
監査人の責任には、会社法上の任務懈怠責任と金商法上の虚偽記載責任があるので、それに沿って説明しましたが、門外漢の私にとって今一つ理解できなかったのは、なぜKAMを監査報告書に記載させるのか(KAMの目的)です。
 
国際監査・保証基準審議会の報告は、KAMの記載の目的は、監査の透明性を高めることにより監査報告の価値を高めることであるとしているのですが、それはどういう意味でしょうか。
 
監査報告書にKAMを記載することで、監査意見の信憑性が常に高まるとは思えません。KAMの各事項とKAMに対する対応を見て、投資家は、ある適正意見については、KAMの記載がない場合に比べて、その信憑性を高く評価し、別の適正意見については、KAMの記載に照らして、その信憑性を割り引いて考える。透明性を高めるとは、監査報告書のこのような利用を想定しているのではないかと思います。
 
果たしてそんなことが可能なのか、KAMの適示と対応をどんなに詳しく記載させても、投資家がこれによって監査意見の信憑性を判断できないと考えるのであれば、そもそもKAMを導入する意味がありません。反対に、KAMの導入目的を是認する以上、その目的を達成することが可能になるような事項をKAMとして記載させるべきではないかと考えました。
 
法律家特有の演繹的な思考方法かも知れません。
 
報告を基にした原稿は、現代監査25号(2015年3月)に掲載されます。

段階的な決定と公表

今年の振り返りのようになっていますが、金融法研究(金融法務事情2001号)にエルピーダメモリ株インサイダー取引事件東京地裁判決の評釈を書きました。以下、評釈の際に考えた、人とは少し変わったことを書いてみます(12月15日に高裁判決(控訴棄却)も出ているようです)。
 
この事件では2つの銘柄の取引が訴追の対象となっているのですが、エルピーダ株については、被告人の平成21年5月15日および18日の買付行為について、判決は、同年3月26日に決定された重要事実が、同年6月30日に公表されたと認定して、被告人を有罪としました。被告人は、同年1月末頃に決定された事実が、同年2月6日に公表されたと主張していたのですが、それは認められませんでした。
 
ここで私が疑問に思ったのは、もし、被告人が平成21年1月中旬にエルピーダ株を買い付けていたら、裁判所は、3月26日に決定があったと認定しただろうかということです。私は決定時期が恣意的に判断されたといっているのではありません。会社の事業上の決定が段階的に行われることは良くあることなので、被告人が取引をしたときに知っていた未公表の事実に照らして、その決定時期を決めることは、おかしなことではないのです。
 
決定事実の決定が段階的に行われることがあるように、その公表も段階的に行われることがあります。判決が認定したように6月30日に公表があったことはたしかですが、だからと言って2月6日に公表がなかったと言い切ることはできません。1月末に決定された事実の一部が2月6日に公表され、残りの未公表部分とその後の決定事項の展開で加わった未公表事実の総体が6月30日に公表されたと見ることも可能です。重要なのは、繰り返しになりますが、行為者が取引時に知っていた未公表の事実(知ったのち、取引時までに、何らかの形で公表され、削られた部分を除く残り)が、投資判断にとって、なお重要なものであったかどうかではないでしょうか。
年間の記事数が少ないのも寂しいので、今年書いた雑誌論文から、一部、抜き書きをさせてもらいます。
 
ジュリストの11月号に新規・成長企業へのリスクマネーの供給という題で、クラウドファンディングを中心に今年の金商法改正についての解説を書きました。クラウドファンディングの規制(緩和)は業者規制ですが、クラウドファンディングの投資額の制限をディスクロージャーとの関係で眺めたがどうなるかと思い、あれこれ考えてみたのが、下の部分です。
 
 クラウドファンディングがインターネットを通じた手軽な資金調達手段であることから、投資家保護の観点から、一人当たりの投資額が50万円以下に制限される。JOBS法におけるクラウドファンディングの投資制限に倣ったものである[1]
 投資額の制限をどう位置づけるかは難しい問題である。まず、多数の者から少額の資金を調達するというクラウドファンディングの特徴に即した投資家保護のあり方であると見ることができよう。しかし、伝統的なディスクロージャーの考え方からは、少額の資金といえども多数の者に勧誘する以上、販売圧力が生じており、被勧誘者は情報を必要としているという批判が可能である。また、一人当たりの投資額が大きくなれば、その者は情報を獲得する能力(取引力)を取得するから、むしろディスクロージャーは不要となる。そこで、募集総額を限定した上で投資者保護を図るためには、むしろ一人当たりの投資額の下限を定めるべきだということになる。これは、少人数私募の考え方であり、これによれば1億円以下、50人未満が基準となるので、一人当たりの投資額を200万円以上とすべきことになる。もっとも、この条件で多数の者(50人以上)から資金を調達すると「少額免除」の枠(1億円)を超えてしまうから、多数の者からの少額の資金の調達という特徴を維持するために一人当たりの投資額を制限しているのであろう。
 また、伝統的な金融商品取引法の考え方からは、開示が不要な場合は開示なくして投資者に自己責任を問える場合であり、開示が必要な場合は開示があることが投資者に自己責任を問う根拠となる。いずれにしても投資は自己責任であり、投資額の限定は自己責任の原則に反するという批判が考えられる。これに対しては、クラウドファンディングの規制は、投資者保護というよりは、投資家が大きな被害を受けないように法が後見的な役割を果たす消費者保護の理念に基づいているのだという反論が可能であろう。
 以上のように、投資額の制限に対しては、①ディスクロージャーの理念または自己責任原則に反する、②多数の者からの少額の資金の調達という特徴を維持するための規制である、③消費者保護の理念に基づく規制であるとの3つ見方が考えられよう。


[1] アメリカでは投資総額規制が置かれており、年収10 万ドル未満であれば、2,000ドルまたは年収の5%のいずれか大きい方を限度とする。
 
 言いたいことはあったのですが、それが分かりにくい文章ですね。
くろぬま
くろぬま
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

最新のコメント最新のコメント

すべて表示

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る
本文はここまでですこのページの先頭へ

[PR]お得情報

いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント

その他のキャンペーン

みんなの更新記事