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ある原稿を書いていて、次のような問題に当たりました。
金融商品取引法では、2条8項各号の行為を業として行うことを金融商品取引業と定義し、金融商品取引業をするには登録を受けなければならないと定めています。このなかには、有価証券の売買やデリバティブ取引が含まれています。
そこで、個人や会社が投資目的で有価証券の売買やデリバティブ取引を行うには登録を受けなければならないのでしょうか。この点については、自己のポートフォリオを改善するために行う有価証券の売買や、リスク・ヘッジの目的で行うデリバティブ取引は、「対公衆性」に欠けるので金融商品取引業に当たらないという解釈が金融庁のパブコメ回答などで採られています。この「対公衆性」は、法律に書かれていない要件です。
対公衆性とは何でしょうか? 不特定多数を相手方とすることだとすると、市場で有価証券の売買をする場合、相手方は不特定多数のこともあるでしょう。
自己のポートフォリオを改善するための有価証券の売買は金融商品取引業に当たらないとしても、それは投資家の資金を有価証券で運用するのとどこが違うのでしょうか。金融商品取引法では、組合型のファンドが集めた資金を主として有価証券またはデリバティブ取引で運用する場合には、原則として金融商品取引業の登録を受けなければならないとされました。投資家から集めた資金を運用する者に専門性を求めるためです。これを自己運用といいます。ところが、株式会社が資産を株やデリバティブで自己運用する場合には、業者登録は要らないのです。強いて違いを挙げるなら、ファンドの場合は最初から投資で運用する予定で資金を集めているのに対し、株式会社が投資で運用するのは例外的だからでしょうか。最初から投資で運用するといって資金を集めた場合には「対公衆性」があるから、運用面でも投資者保護が必要になるということかも知れません。このときは、ポートフォリオ改善のための有価証券の売買は対公衆性の要件を満たすので、金融商品取引業の登録が必要ということになるのでしょうか。
自己勘定での取引になぜ規制を加える必要があるのか、正直、私はずっと疑問に思っていました。委託売買業務を行う証券会社については、委託売買と自己売買を同時に行うことから生じる弊害を除去するために、自己売買を規制する必要が生じます。しかし、その場合には委託売買だけで登録が必要になりますので、業者の自己売買を規制すれば済み、自己売買をするのに業登録を要求する必要はありません。
業の定義をどうするかとは、どの範囲の投資者を保護するかの問題ですから、保護を必要としている投資者の範囲を確定しなければ、明確な線引きはできません。ファンドの出資者と株式会社の出資者の要保護せいをどう判断するかが、難しいのです。解答の一つはすでに出されていて、株式会社はガバナンスが法で規制されているので株主を投資者として保護する必要性が乏しく、ファンドはガバナンスの規制がゆるいので出資者を投資者として保護する必要があるというものですが、投資者保護をガバナンスの問題に置き換えることができるのでしょうか。
結局良く分からなくなってしまったので、この部分は原稿にしませんでした。時間のあるときに、また考えることにします。
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