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インサイダー取引の話は少し休んで、最近の原稿から。

神戸大学の商事法研究会で、最近のアメリカの最高裁判例について報告してきました。
Stoneridge Investment Partners, LLC v. Scientific-Atlanta, Inc. 128 S.Ct. 761 (2008)です。

この事件では、発行者の売上高を水増しするための取引に協力した会社が、発行者の虚偽記載について投資家に対し責任を負うか否かが争われました。(この事件はエンロンに関するものではないのですが)エンロン事件では粉飾のための巧妙な取引が多数行われており、取引相手や投資銀行の責任を問う訴訟がアメリカでは多数提起されています。ライブドアが、自社株の売却益を売上高に振り替えたときにも、関連会社を利用していましたが、そのような関連会社の責任を問う訴訟です。

1994年連邦最高裁のセントラル・バンク判決は、規則10b-5には教唆・幇助者の民事責任を追及する訴訟原因は含まれていないと判示しました。規則10b-5は金商法157条に相当する規定で、アメリカではこれに基づいて損害賠償請求など民事訴訟を提起できるというのが判例ですが、セントラル・バンク判決は教唆者・幇助者の責任は問えないとしたのです。しかし、同判決は、発行者以外の者が第一次違反者(primary violator)として責任を負う可能性を否定しませんでした。第一次違反者としての責任を問うとは、教唆・幇助者に見える者も規則10b-5の要件を自ら満たしている限り、その者の責任を問いうるということです。そこで、発行者以外の者の第一次違反者責任を問う理論の一つとしてスキーム・ライアビリティー(scheme liability)と呼ばれる考え方が登場しました。スキーム・ライアビリティーとは、規則10b-5の(a)項が、「詐欺を行う・・スキーム」(scheme...to defraud)を禁止していることから、事実についての虚偽の外観を作出する行為に従事する者(発行者の取引相手)は、その行為が直接に不実開示に寄与しなくても第一次違反者に当たるとする法理であり、控訴裁判所レベルの判決が出ていました。

最高裁は、結局、スキーム・ライアビリティーを採用することを拒否しました。その理由は、発行者の取引相手は、発行者の開示書類に名前が現れていないので、その行為を投資家が信頼したという「信頼の要件」(reliance)を欠くというものでした。もっとも、relianceの要件はどのようにも解しうるので、この判決の背景にある政策判断の方が重要です。誤解を恐れずに要約して言うと、最高裁は、スキーム・ライアビリティーを課すと、外国企業が責任を恐れてアメリカ企業と取引したがらなくなり、アメリカの競争力が失われると述べています。こうして、スキーム・ライアビリティーは、その短い生涯を終えたわけですが、最高裁が、これほど露骨な政策考慮に基づいて判断を下すことは珍しいのではないでしょうか。

この判例の解説は、商事法務の5月25日号(1833号)に掲載される予定です。

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