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野村證券の従業員によるインサイダー取引が話題になっていますが、事実関係が明らかでないのでコメントはやめておきます。

発行者の取引先の者は、166条1項4号により、発行者との契約の締結・締結の交渉・履行に関して当該情報を知ったときにのみ、会社関係者になります。「契約の締結の交渉」の語は、日本織物加工株事件の発生を受けて、平成10年改正で挿入されたものです。同事件では、M&Aについて相手方会社を代理していた弁護士が、M&Aに関する秘密保持契約の履行に関して重要事実を知ったとされました。しかし、重要事実を知ったから、それが秘密保持契約の履行の対象になるのであって、「秘密保持契約の履行に関し重要事実を知る」との構成には違和感があります。このケースでは、M&A契約の交渉に関して重要事実を知ったと構成するのが自然だったのです。ただし、「契約の締結に関し」は「契約の締結の交渉に関し」を含むと解すれば足りたのではないかと思われ、そうであれば平成10年改正は不要だったことになります。

「契約の履行に関し」の教室事例では、タクシーの運転手やレストランのウェイターが客の会話を聞いた場合に、あるいは清掃会社の従業員がビルの清掃中に重要書類をのぞき見た場合に、これに当たるのかという例がよく取り上げられます。たまたま聞いたことは、情報の伝達を受けたことにはならず、情報受領者にはなりませんが、契約の履行に関し知ったのであれば、会社関係者として規制の対象になります。こういう誰でも思いつく例についても、立法担当者や関係の機関(取引所・証券業協会)から公式の見解(インサイダーになるか、ならないか)が出されていないのではないかと思います。

清掃会社の従業員がゴミ箱の中から重要書類を発見した場合には、清掃契約の履行に関し知ったといえそうです。しかし、わざわざ探さなければ分からないようなゴミに重要書類が入っていた場合はどうでしょうか。ゴミとして捨てられたCDロムに重要情報が入っていた場合は? インサイダー取引規制は、有利な地位を利用して情報を得た者を規制するものであり、努力して情報を得た者を規制の対象としていません(もっとも、後者もインサイダー取引規制に含まれうるとの見解もあります)。この見地からは、ゴミ箱をあさる努力をした者はインサイダーではないといえそうです。しかし、その努力をする前に、その者がゴミ箱に接近しやすい地位にいた(有利な地位にあった)ことも事実であり、それを強調するとインサイダーになりそうです。さらに遡ると、その者は、会社の機密情報を盗むために、努力して清掃会社の従業員になったとしたら・・・

タクシーの運転手が客同士の会話を聞いた場合、「運送契約の履行に関し」知ったといえるでしょうか。これも上と同じで、突き詰めるとよく分からないのですが、そのタクシーが会社と契約しているタクシーである場合には、「履行に関し」に該当し、流しのタクシーであれば該当しないと解してはどうかと思っています。これは全く感覚的なもので、社用車や契約タクシーであれば会社役員らが車内で機密情報に触れることもよくあり、これに接する者は、他の者と比べて有利な地位にあると評価できますが、流しのタクシーであれば、会社の機密情報に接近しうる有利な地位にあるとまでは評価できないと感じるからです。

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