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内部統制報告書(1)

金融商品取引法の内部統制報告書制度は、いろいろな方面で話題を呼んでおり、現に、いろいろな角度からの分析が可能な、複雑な法制度です。ここでは、会社法上の内部統制との異同、および内部統制報告書の虚偽記載とは何かというアプローチから論じてみましょう。

内部統制とは一般に、財務報告の信頼性、業務執行の効率性、および法令順守(コンプライアンス)の確保を目的として、取締役会・経営者・職員によって遂行される一連の手続をいいますが(広義の内部統制)、金融商品取引法が要求する内部統制報告書は、財務報告の信頼性を確保するために必要な体制(狭義の内部統制)について、経営者がその有効性を評価した報告書のことです。

会社法は、同法上の大会社が広義の内部統制の整備について、取締役または取締役会が決定しなければならない旨を定めています(会社法348条4項、362条5項)。これらの規定により、大会社において有効な内部統制を構築しなければならないかについては解釈上の争いがあるようですが、私は、規定の解釈にかかわらず、株式会社の取締役は、その善管注意義務の内容として、広義の内部統制を構築する義務を負っていると考えています(大和銀行株主代表訴訟事件判決参照)。

金融商品取引法上の内部統制報告書は、内部統制の有効性を経営者が評価した結果を表示するものなので、内部統制が有効でないとの評価結果を提示することも可能です。しかし、有効な内部統制を構築しないことが株式会社の取締役の善管注意義務違反となることは、会社法上の内部統制の場合と同じであるといえるのではないでしょうか。このように考えると、会社法上の内部統制と金融商品取引法上の内部統制とでは、目的が異なり、規制の仕方も異なっているが、ともに取締役の善管注意義務に立脚している点で共通した制度であると理解すべきでしょう。この当たりは、証券経済研究所の研究会でも議論されています(ウェブから記録を閲覧できます)。

より重要な問題は、どの程度有効な内部統制を構築すれば取締役は善管注意義務を果たしたといえるかです。問題を財務報告に限ると、内部統制に「重要な欠陥」がある場合に取締役が善管注意義務に違反したといえるかということです。この点については、内部統制の対象内容によっては、費用対効果を踏まえた経営判断の原則が働く領域も存在すると指摘されています(商事法務2008年初の座談会参照)。

たしかに、取締役の善管注意義務は、重要な欠陥のない内部統制を構築することにあるのではなく、虚偽のない適正な財務報告を行うことにあるといえるでしょう。内部統制の構築が企業経営に過度の負担をかけるものであってはなりませんが、適正な財務報告を行う義務は取締役の信任義務の中核をなすものであり、業務執行に適用されるのと同様の意味で経営判断の原則が適用されるとは考えられません。上記座談会で指摘された問題に対する現段階の私の答えは、このようなものです。抽象論ばかりで、分かりにくいかも知れませんね。

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