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特定投資家に対して適用が除外される諸規定(つづき) 適合性の原則(40条1号)を適用除外とすべきか否かについては、金融審議会で議論が分かれていましたが、結局、特定投資家に対する関係で適用されないものとされました。適合性の原則のような一般原則の適用に差を設けると、誠実義務(36条)が特定投資家にも適用されることと整合的でなくなることが気になります。また、仮に適合性の原則を特定投資家に適用しても、ある商品を特定投資家に勧誘すること自体が適合性の原則に反する場合はほとんどないと予想されるから、実際上の不都合は生じないと思われます。 特定投資家に対する勧誘行為に適合性の原則が適用されない結果、適合性の原則に反すると認められる勧誘が行われていても、内閣総理大臣は業者に対して業務改善命令等を発することはできません。しかし、民事責任との関係では、適合性の原則に著しく違反する勧誘が不法行為法上違法となるとする最判平成17年に変更はなく、特定投資家に対する勧誘から金融商品取引業者に不法行為責任が生じることもあると解すべきでしょう。たしかに、上で述べたように、特定投資家に適合しない商品はまず考えられませんが(上記最判は、法人顧客はオプションの売り取引に適合性を有すると判断しています)、過当取引は誰にとっても適合しない取引態様といえるでしょうから、(何をもって過当取引と認定するかは難しい問題ですが)過当取引は特定投資家にとっても不法行為に当たり得るといえるでしょう。 平成18年改正法に基づく政令制定の過程では、特定投資家は、金融商品取引法の説明義務が除外される「特定顧客」に該当しないとする方針が採られていました。その理由としては、民事上のルールである説明義務の適用範囲については、画一的であることが望ましいからと説明されていました。しかし、最終的には、特定投資家は特定顧客に当たり説明義務の対象から除外されました(金販法3条7項、金販令10条)。 これは、契約締結前書面の交付の際に金融商品取引業者が適合性の原則に沿った説明をする義務を課せられたこと(金商業府令117条)により、金融商品販売法上の説明義務と同等の説明義務が金融商品取引法上も課せられたことを考慮すると、妥当な判断だろうと思います。特定投資家に対しては契約締結前書面が交付されず、交付に伴う説明もなされないのに、これと実質的に同内容の金融商品販売法上の説明義務が残るとすると、特定投資家相手の取引のコストを削減できないからです。 また、狭義の適合性原則を定める金商法40条1号を特定投資家に適用せずに、広義の適合性原則を定める金販法3条2項を適用することは、矛盾するとはいえないが、前に述べたように両者に重なる部分がある以上、やはり不都合が生じます。これを解消するためには、金販法3条を特定投資家に適用しないようにする必要があるといえるでしょう。 金販法上の説明義務が特定投資家に適用されない結果、その義務違反に基づく業者の無過失損害賠償責任規定(5条)及び損害額の推定規定(6条)も特定投資家には適用されません。ただし、私法上の説明義務違反による損害賠償責任が生じうることは、否定できません。
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2008年12月23日
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