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上場会社が自己株式を取得する際には、自己株式の取得決定という事実を知って取締役が会社を代表して買付を行うため、形式的には、インサイダー取引に該当する可能性がありますが、自己株式取得の授権決定が公表されていることを条件として適用除外が設けられています(166条6項4号の2)。これに対し、自己株式の取得決定以外の重要事実があるときは、それを公表するまで会社は自己株式を取得することができません(同号)。これにより、自己株式の取得時期はかなり制約を受けることになります。 そこで、上場会社では、信託銀行に自己株式の取得資金を信託し、あるいは証券会社と投資一任契約を締結し、信託銀行や証券会社が具体的な自己株式の購入を決定・執行する方式を採用することが多いようです。この場合でも、上場会社が自己株式の取得を委託する際に、重要事実を取締役が知っており、当該事実が公表されるよりも前に取引が執行された場合には、インサイダー取引に該当しうると解釈されているようであり、これによって課徴金の納付命令が下された例もあります。取締役としてはその事実は知っていたけれど、重要事実に該当するとは考えていなかった場合、仮に故意が阻却されるとしても、課徴金命令との関係では、故意の有無は問われないので(知っていたことは必要)、会社に課徴金が課されることになります。うっかりインサイダーといわれるゆえんです。また、委託後に重要事実が生じた場合に、委託を取り消したり、売買を中止する指示を出す必要があるのか(出さないとインサイダー取引に該当するのか)については、学説の議論がありました(証券取引法研究会「金庫株と証券取引法改正−インサイダー取引規制」『金庫株解禁に伴う商法・証券取引法』(別冊商事法務251号)71頁以下(2002年);『』内は本来は『・・の改正』とすべきものを当時の研究会の幹事であった私のミスで落としてしまったものでした)。 そこで世界的な金融危機を背景に、解釈上の疑義を払拭するために、昨年11月に金融庁と証券取引等監視委員会は共同で「インサイダー取引に関するQ&A」を公表しました(当初は問1のみ、11月25日に問2を追加)。このQ&Aの検討は、次回にします。
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