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平成2年改正により導入された3分の1ルールの下では、たとえば10名を超えない大株主から市場外で33%の株式を買付け、残りの1%を市場取引で買い付ける行為が禁止されるか否かが明らかでありませんでした。平成18年のオリジン東秀株の買収事例では、D社が公開買付前の市場外取引と公開買付不成立後の市場取引とを合せて約2か月間に対象株式を約46%取得した行為が問題とされました。市場外取引と市場取引とを一連の取引とみることができれば、公開買付け規制を適用できそうにも思われますが、何をもって一連の取引と判断するのかが、問題でした。

そこで平成18年改正法では、3か月以内に10%を超える株券等の取得を株券等の買付等または新規発行取得により行う場合(株券等の買付け等により行う場合は、うち5%が特定売買等(立会外取引)または公開買付け以外の取引所有価証券市場外における株券等の買付等により行う場合に限る)であって、当該買付け等または新規発行取得の後における株券所有割合が3分の1を超える場合の当該株券等の買付け等は、公開買付によらなければならないとしました(27条の2第1項4号、令7条2項〜4項)。とても複雑な規定ですね。

立案担当者が挙げる例では、対象会社の株券等を4月1日に市場外取引により買い付け、所有割合を20%から26%に上昇させた者が、さらに所有割合が3分の1超になるまで買い付けるために、6月1日に公開買付けを実施することはできないといいます。なぜなら、ここでは3か月間の取引を「かたまり」とみると、3か月間に5%超の市場外取引を含む10%を超える買付けが行われていて、買付け後に株券等所有割合が3分の1を超えることとなるため、その3か月に含まれる株券等の買付け等はすべて公開買付けの方法で行わなければならないからです。この例では、買付者としては4月1日に公開買付けを開始するか、公開買付けの開始を7月1日まで待たなければならないことになります。このように改正法の内容は、3分の1を超える取引のみを市場内で行うといった脱法を禁止するというよりは、市場内外の急速な買付けを規制しようとするものであるといえます。

従来の企業買収では、市場外で大株主から個別に株式を買い付けた後に、過半数取得や全株取得を目指す公開買付けを開始する実務が行われていました。売却希望の大株主がどれくらいいるか調査してからでないと、公開買付けが費用倒れに終わる危険性があるからです。しかし、改正法の下では、第1段階と第2段階との間に3か月の期間を置かなくてはならなくなり、企業買収のコストが増加することが懸念されます。

また、私が参加した商事法務の座談会で提供された例ですが、友好的な提携のために市場外で提携先に対象会社の株式を買い付けてもらった後に、敵対的な公開買付けが開始されると、提携先は、急速な買付けの規制が適用されるため、3か月間は買収防衛策としての友好的な公開買付けを開始することができなくなってしまいます。

公開買付規制は原則として市場取引に適用されませんが、急速な買付けの規制は、市場取引を制約する場合もあります。上記ルールの下では、過去3か月以内に市場外で5%超を取得した者は、3か月間に10%を超える買付けをして、買付け後に株券等所有割合が3分の1を超えるような買付けは、たとえそれが市場取引であっても禁じられるのです(形式的には、5%を取得した市場外での買付けが公開買付規制違反となります)。33%を市場の内外で買付け(うち5%超を立会外または市場外で買い付ける場合に限る)、1%を第三者割当増資に応じて発行者から取得するような行為も規制の対象となります(この場合も、形式的には5%超の立会外または市場外の買付けが規制違反となる)。発行者としては、割当先による過去3か月以内の取引に注意しなければ第三者割当て増資が行えないということです。

なお、急速な買付けの規制は3分の1ルールとは別個独立の規制として設けられているため、3分の1ルールの例外規定は、ここには適用されないことに注意が必要です。たとえば、議決権50%超の者が市場外で株券等を買い増す行為にも急速な買付けの規制が適用されます。

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