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公開買付けにおいては、買付け等に条件を付すことは一定の場合を除いて禁止されています。これは、応募株主を不安定な地位に置かないためであると説明されています。買付資金が調達できた場合に限り買付けを行うとか、対象会社取締役の選任議案について買付者に委任状を提出した応募株主のみから買付けを行うといった条件を付すことは認められません。許容される条件とは、第一に、応募株券等の数が公開買付届出書等に記載した数に満たないときに、その全部の買付け等をしないこと(27条の13第4項1号)です。対象会社の株券等の一定割合(3分の1、過半数など)を取得できなければ株券等を買い付けたくないという買付者の意向を尊重するためのものといえます。

許容される条件の第二は、応募株券等の数が買付予定数を超える場合に、超える部分の全部または一部の買付等をしないこと(27条の13第4項2号)です。これは部分的公開買付けを許容する規定ですが、このような部分的公開買付けは、買付け後の公開買付者・特別関係者の株券等所有割合が3分の2を下回る場合に限って認められます(27条の13第4項柱書)。株券等所有割合が3分の2以上となる場合には、応募株券等の全部を買い付けなければなりません(全部買付義務)。

3分の2という割合は、株券等の上場廃止のおそれが生じ残存株主が著しく不安定な地位に置かれること、および残存株主に会社法上の特別決議(会309条2項)を阻止する拒否権がなくなり、少数株主として不利益を受けるおそれがあることから設定されました。もっとも、上場廃止基準は金融商品取引所によって異なるうえ、特定株主が株券等所有割合が3分の2以上となることだけで上場廃止基準に該当することは通常ありません。そもそも上場廃止基準は種類株発行会社では上場株式ごとに定められるので、全体の議決権割合を基準とすることは、上場廃止基準の性格と合致しないともいえます。また、会社法上の特別決議の要件は定款で引き上げることができますが(会309条2項)、要件を引き上げた場合でも全部買付義務の発動要件が引き上げられるわけではありませんので、特別決議の阻止要件との連動も貫徹できるものではありません。このように細部には目的とのずれがあるにせよ、全部買付義務の目的に会社法的な少数株主の保護が含まれていることは疑いがありません。

少数株主の保護という目的からみると、全部買付義務にはいくつかの限界があります。第一に、買付者が市場取引により対象会社株式を買い付けた結果上場廃止となる場合に、全部買付義務は発動されません。第二に、買付者が敵対的な公開買付けを行い、これと対立する経営陣が持株を保持した結果として、買付者と経営陣の株券等所有割合の合計が3分の2以上となる場合や、二以上の者による競合的公開買付けにより株券等所有割合の合計が3分の2以上となる場合にも、全部買付義務は発動されません。第三に、買付者による買付けに反対して株券を提供しなかった者は取り残されることとなります。このような限界を考えると、少数株主の保護は、残存株主に株式買取請求権を与えるなど、会社法によって手当てをすべき問題だと考えられます。

公開買付期間中に対象会社が自社株買いをした結果、買付者の株券等所有割合が買付け後に3分の2以上になることもあります。買付者に予測外の出費を強いることにはなりますが、少数株主保護の観点からは、この場合にも全部買付義務が適用されると解さざるを得ません。

なお、50%超を保有する者が特定買付けの後に株券等所有割合が3分の2以上となるときは、公開買付けが強制されますが(令6条の2第1項4号)、このときにも全部買付義務が適用されます。

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