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アメリカの連邦証券諸法の執行(Enforcement)は証券及び取引所委員会(SEC)によってどのように行われているのでしょうか。今年の1月にSECで聞いてきたことを含めて、備忘録的に書いてみたいと思います。
SECによる法執行は法執行部(Division of Enforcement)が行いますが、手段は民事訴訟と行政手続があります。刑事責任の訴追は司法省が行います。民事訴訟でできることには、違反行為の差止め(Injunction)、民事制裁金(Civil Money Penalty)、上場会社の役職員の解任などがあり、差止めに付随する救済(Ancillary Relief)として利益の吐出し(Disgorgement)を求めることもできます。行政手続きによるものには、排除命令(Cease and Desist Order:差止めに相当)、それに伴う利益の吐出しがあり、ほかに、業者については、業務の停止、登録の取消し、役員の解任のような行政処分、さらに行政制裁金(Administrative Penalty)を課すことができます。
日本では一般に、裁判手続は時間がかかるので避けられがちですが、アメリカでは裁判手続が好まれる傾向があります。その理由の一つは、裁判所の関与する手続によると、資産の凍結(Freezing of Assets)ができることにあります。差止めを行う裁判所の権限は衡平法(Equity)に基づくものであって、何をなしうるか、制定法に定めがありません。アメリカで聞いてきたことから、私は「衡平法裁判所は、自分で決めれば何でもできる」という印象を私は受けました。資産の凍結は裁判手続を経なければできないので(その理由は私権の重大な制約だからでしょう)詐欺で集めた資産が海外に送金されたり、散逸する可能性があるような、緊急を要する場合には、裁判手続を用いるようです。行政手続きによる場合は、相手方が排除命令に違反したときは改めて裁判所に命令を出してもらわなければならない(裁判手続であれば、裁判所侮辱罪が直ちに適用される)という点も、裁判手続を好む理由となります。また、裁判所に差止めを求めてから、行政手続を通じた救済を図るというように、両者を組み合わせて用いることもあるようです。
差止めは、過去に違反行為があっただででは認められず、現在も違反状態が続いていること、または将来被告が法に違反する蓋然性が高いことを示す必要があります。多くの差止めは同意命令(consent order)の形をとるようです。本案審理を経て下された場合、当該被告に対し投資者が提起する民事訴訟において、被告は差止訴訟で認定されたところと異なる主張を妨げられます(collateral estoppel)。これに対し、同意命令によって終結した場合、被告側は判決の争点遮断効(collateral estoppel)がクラス・アクションに及ぶのを避けるインセンティブがあるのです。他方、SECには、費用とスタッフの資源を節約するインセンティブがあると言われています。
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