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(つづき)
それではどう考えたらよいでしょうか。買付者Aが、上場会社Bの株式を40%保有する資産管理会社Cの持分を全部Dから譲り受けるとします。Aの行為が金商法27条の2第1項2号に該当するとすると、取得は公開買付けの方法によらなければならないため、①AはCの持分の譲受を一切、禁じられるのでしょうか、それとも②B株に対する公開買付けとCの持分に対する公開買付けとを同時に行うことも許されるのでしょうか。
まず②を考えてみると、そもそも開示会社でないCの持分について公開買付けの手続をとることができるかどうかが問題ですが、仮にできるとして、B株に対する公開買付けとC持分に対する公開買付けは同一の手続でする必要があります。同一の手続でなくて良いとすると、B株公開買付けに上限を設定して、実質的にB株を買わなくて良い扱いが認められてしまうからです。ところが同一の手続ですると同一の価格をつけなければならず、資産管理会社の持分とはいえ対象会社と会社の内容が異なるのに、どうやって実質的に同一の価格を設定するのかという問題が生じます。これをクリアしたとしても、全体の公開買付けについて上限を設定した場合に、B株とC持分とでどのように按分比例を行って買い付けるかという問題が残ります。現行の按分比例方式では提供株式数に応じた按分をすることを強制していますが、B株1株とC持分1つとを同じに扱うのはナンセンスでしょう。そして、このような場合に対処する規定を現行の金商法は用意していません。結局、②は理論的には考えられるが、実際に行うことは不可能だといえるでしょう。
そこでAの行為が金商法違反だとすると①がその帰結になり、DはC持分を売ることができず、できるのはCが公開買付けに応じてB株を提供することだけになります。そもそも、3分の1ルールは、支配株主から株式を取得しても良いが同時に按分的に一般株主からも買いなさいというルールであり、支配株主からの株式取得自体を禁じるものではありません。ところが、ここではDによる持分の譲渡が禁じられるという強い効果が生じてしまうのです。Aの行為が金商法違反と断ずる以上、このような強い効果が生じるのは、現行金商法の解釈上、やむをえないものと思います。そうだとすると、譲渡禁止という強い効果が生じるための要件は、厳密に(制限的に)考えなければならないのではないか、というのが私の意見です。法律構成としては、Aによる取得が3分の1ルールの脱法と評価できる場合にはAはDからの取得を禁じられることになりますが、そのための要件はQ&Aで示されたものよりも相当狭いものであり、かつQ&Aのように明確に定式化できるものではないと思います。
Q&Aは、上の場合にB株に対する上限のない公開買付けとC持分の取得とを同時にすることができると考えているようです。これは、実質的に、3分の1ルールを適用するとともに買付者に全部買付義務を課すのと同じです。ですからEUでは、こういう帰結になるでしょう。しかし、日本では公開買付けが強制される場合でも株券等所有割合が3分の2以上とならない場合には全部買付義務が課せられないのであって、そのような立法政策と整合的な解釈論が求められます。強制公開買付けについて全部買付義務を課さないのは、応募株式の全部を買えるだけの資金がなくても支配株式を譲り受けることができるようにし、支配株式の移転を促進するという立法政策上の理由があるので、それを無視するわけにはいきません。なお、Q&Aは、公開買付けを実施すれば支配株主からの譲り受けも禁止されないという解釈を採用していると反論されるかも知れませんが、それは違います。公開買付けを実施すればそれだけ余計に費用がかかり、買付者は経済的に譲受けを断念することになるでしょうから、譲渡禁止という強い効果が生じるのと変わりがありません。
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2010年04月10日
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金融庁は、パブリックコメントに付していた公開買付けに関するQ&Aを、3月31日に確定させました。今回は、このうち問15とその答えについて考えてみます。
問15は、開示会社の株式の3分の1超を保有する資産管理会社の株式を取得するには、金商法27条の2第1項2号(3分の1ルール)により公開買付けの方法によらなければならないかというものです。答えは、①資産管理会社の株式の取得が、実質的には対象者の「株券等の買付け等」の一形態に過ぎないと認められる場合には、公開買付規制に抵触する。②資産管理会社の株式の取得とともに買付者又は資産管理会社により対象者に対する公開買付け(買付予定数の上限を定めていない)が行われ、公開買付届出書等において取引の全容が開示されるとともに、資産管理会社の株式の取得における価格に相当性があると認められる場合など、取引の実態に照らし、実質的に投資者を害するおそれが少ないと認められる場合には、公開買付けを行わなくて良い(要約)、というものです。
Q&Aは3分の1ルールに関する金融庁の解釈を示すもので、裁判所を拘束するものではありません。実際上は、課徴金の運用にとって重要な意味を持つことになるでしょう。私は解釈論として①も②も相当に無理があり、脱法として3分の1ルールを適用すべき場合を上のように定式化するのは無理だろうと考えています。定式化が無理なのは、「全部買付義務を伴わない公開買付けの強制」という立法の態度に自ずと限界があるからではないかと考えています。
まず法律論としたみた場合の金融庁の解釈は、①については、実質的には対象者の「株券等の買付け等」の一形態に過ぎないと認められる場合とはどのような場合なのか、具体的に示されていない点が問題です。これでは解釈を示したことにはならないのではないでしょうか。この部分は、支配権の間接取得に公開買付けを強制する根拠が「株券等の買付け等」の解釈にあることを示したいのかも知れません。しかし、「株券等」も「買付け等」も法に定義が置かれており、定義を無視して支配権の間接取得が「株券等の買付け等」に当たると解することは、許されないのではないでしょうか。形式論はさておき、その実質的理由は何かを示した部分では、対象者の株主に株式売却の機会が与えられないので公開買付規制の趣旨に反するとのみ述べられています。しかし、これも結論(強制公開買付けの対象にすれば売却機会が与えられる)をもって理由に代えているだけであり、理由付けとしては弱いと言わざるを得ません。
②については、なぜ対象者の株式について買付予定数の上限を定めない公開買付けをする場合に限って、資産管理会社の株式を取得できるのか、その理由が示されていません。およそ理由の示されていない解釈論に説得力はありません。いや、株主に株式売却の機会が与えられるから公開買付規制の趣旨に反しなくなるといのがその理由だと反論されるかも知れません。しかし、最初から対象会社の株式を対象に公開買付けをかけるときには買付予定数の上限を設定できるのに、資産管理会社の株式を取得するときには、なぜ上限設定のない(=全部買付義務が課せられる)公開買付けをしなければならないのかという点の説明がないのです(つづく)。
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